61 道徳はさておき、因果だけを見る
マリーは、なぜアスランが突然こんな姿になってしまったのか分からず、彼を地下室に隠すしかなかった。
一人で子どもを抱き、徐々に黒縞妖猫へと変貌していく夫を見守りながら、そしてドアの外で何も知らないふりをしている村民たち――
彼女はもはや誰も信じられなくなっていた。
***
アスランの語りかけは途切れ途切れで、何度も怒りや嗚咽に声を詰まらせながら、ようやくすべてを語り終えた。
最後の言葉を言い終えた時、彼は両手で膝の上の布をぎゅっと握りしめ、指の関節が白くなるほどだった。
物語がここまで進むと、村民たちは皆沈黙した。
誰も口を開かなかった。
村長の家の庭は人で埋め尽くされていたが、あまりの静けさに、誰かの息遣いさえ聞こえてきそうだった。
「アスランに間違ってないし、黒縞妖猫まで守ったのに、なぜ妖獣化してしまったんだ?」
ある村民が思わず尋ねた。
「間違ってないと?」
イザベラが口を開き、アスランを見つめた。
「この世のすべてには因果がある。 あなた自身は、本当に何の間違いもなかったと思っているの?」
この世界では多くの場合、道徳は関係なく、因果だけが重視される。
人間は行いを論じるべき、その心までは問わないことが普通だ。
心まで論じると、この世界にはいい人はいないだろう。
「俺のせいだ……」
アスランの声は後悔に満ちていた。
「俺が彼らに教えたんだ……『三寿湯』のことを。 俺が毎日山へ登り、彼らに俺の後をついて来させた。 俺のせいだ……」
マリーはアスランの背後に立ち、肩に手を置いた。
目元は真っ赤になっていたが、唇を噛みしめて、それ以上泣くことはなかった。
夫が人間に回復できること、それだけで、彼女にとっては最高の結末だった。
これ以上はもう……
「でも、アスランはあの妖獣に餌をやり、守ってまでいたのに……この黒縞妖猫、恨み深すぎる!」
ある村民が不満を漏らした。
「アスランの子どもを殺すなんて酷すぎよ」
「子どもを殺した犯人は黒縞妖猫じゃない!」
アスランは両手を固く握りしめ、歯を食いしばって言った。
「どういうことだ? 他にも妖獣がいるのか?」
ある村民が驚いた。
ヴァルターたちは村民の質問には答えず、そのまま話を続けた。
「それで、アスランが崖から転落した後、何が起きたんだ?」
ヴァルターは村長を見つめた。
「私……私にどうして分かるでしょう。 知りません、何も知りません」
村長は唇を震わせていた。
「知らない?」
イザベラは冷ややかに笑った。
「黒縞妖猫の隠れてる場所を彼らに教えたのはあなたじゃない? それなのに、どうして何も知らないなんて言えるの?」
「捜魂術は妖獣だけでなく、人間にも使えるのよ。 試してみる?」
クラリスは手を上げかけた。
村長はついに我慢できなくなり、ドサリとその場に膝をついた。
左足の靴が脱げ落ちると、その下から、黒縞妖猫の足が露わになった。
村長はパニックに陥り、ヴァルターを見つめた。
「私には関係ない、私はあの妖獣を傷つけてなんかいない……」
「一体何が起きたの? まだ話さないの?」
イザベラは嘲るように言った。
「もう少し遅かったら、あなたも完全に黒縞妖猫になっていたかもしれないわよ」
村長は仕方なく話し始めたが、その目にははっきりと恐怖が浮かんでいた。
「彼らはまず幼獣を殺した。 黒縞妖猫の腹を切り開くと、幼獣は一匹しかいなかった。 だが一匹でも彼らには十分だったから、まず幼獣を食べてから、それから黒縞妖猫を殺して売りさばこうとしたんだ」
「どうやって幼獣を殺したんだ?」
ヴァルターの仙力をまとっている冷たい声が村長の耳に響いた。
一瞬にして村長の記憶は事件当日に引き戻され、起こったすべての出来事がまるで目の前で再現されるかのようだった。
「お腹はそれほど大きく見えなかったが、本当に妊娠していたのか?」
「村長はそう言っていた」
「ああ、幼獣を取り出して自分たちで食べて、黒縞妖猫の方は売りに出そう! デッカイもんなこいつ」
「おっと、お前はなかなか賢いな。 そうしよう!」
彼らの言葉を聞いた黒縞妖猫は、体を丸めてもがき続けた。
妖力を使おうとすると檻の中から稲妻が落ち、その体を打ち据える。
それを避けようとした瞬間、ある村民が腹部の傷口へナイフを突き立てた。
「ニャーウウウウウウ——!!!」
凄まじい黒縞妖猫の鳴き声が、森の中に響き渡った。
「やった! ははは」
黒縞妖猫は最後まで抵抗し続けた。
村民たちは大笑いしながら、力いっぱい刃を振り下ろし、黒縞妖猫は檻の中で血を吐きながらも、なお必死に体を丸めていて、腹を守り続けていた。




