↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/72

55 サボり

その後三日間、五人はそれぞれ別行動をとった。


ヴァルターはイザベラとアルベルトを連れて、村長の案内で村の端へと向かった。


ヴァルターは山と村の位置を確認し、手に獣除けの駆獣符(くじゅうふ)の束を持っていた。


「駆獣符はたくさん貼ったほうがいいよ。 村長さん、疲れていないか? 足を怪我したのか?」

イザベラは、少し足を引きずって歩く村長を一瞥した。数日前まではこんな様子ではなかったのに。


「全然、疲れてないですよ。 たくさん貼ります。たくさん貼ったほうがいいです」

村長はズボンを引っ張りながら言った。

「大丈夫です。 昨晩足を少し捻っただけです」


「見てあげようか?」


「いいえ、いいえ、大したことないです。 足が汚れているし、仙士さまにお世話になるなんて申し訳ないです。 薬油を塗ったから、明日には治りますよ」

村長はイザベラを避けるように、何度も後ずさった。


イザベラも無理強いはしなかった。

「治るならいいけどね。 それじゃあ、これで終わり。 もう帰って大丈夫だよ。 ゆっくり休んでください」


村長が去ると、アルベルトはヴァルターとイザベラを不思議そうに見つめた。

「首席、何もしないって言ってたんじゃなかったの?」


「何もしないのはいいけど、サボりは必要よ」

イザベラが答えた。


「サボり?」


「私たちがやってるこの仕事、役に立ってるの?」


「役に立たないよ。あの駆獣符だって、昨日リヒターと俺が描いたものだし、ほとんど落書きみたいなもんだ」


「……そう。 仕事中に無駄なことをするのが『サボり』よ。 自分も疲れないし、依頼人も満足させられる。 まさにウィンウィンね」


「ウィンウィン? 疲れてないわけじゃないぞ。 最後に描くべき駆獣符が多すぎて面倒くさくなったから、手形をいくつか押したよ」


イザベラ……


「それに、首席が俺をアンナとサイモンの家にも連れて行ったんだ。 すごく忙しかったから、サボったりなんてしてないよ」


地面にしゃがんでいたイザベラは、ヴァルターに頭をポンと叩かれた。


イザベラはヴァルターの仕草を無視して、話を続けた。

「それってすごいね……そういえば、あなたと首席はアンナたちの家に行って何をしたの?」


「へへ、まあ……」

アルベルトがヴァルターを一瞥すると、ヴァルターはうなずいた。


アルベルトはすぐにイザベラにペラペラ事情を説明した。


話を聞き終えたイザベラは、アルベルトに向かって親指を立てた。

「まさか、あなたがこんなに有能だなんて!」


「そりゃあ!」


一方、無駄なことをしていたリヒターとクラリスは、再び最初に出くわした現場へと向かった。


「この家の夫は?」


「少し前に、山で野獣に食われたそうだ」


二人は仕方なさそうに顔を見合わせた。

このお母さんは、夫も息子も失ってしまった。 

本当に……ため息が出る。


室内の血痕などはすでに乾いていたが、クラリスはふと鼻を動かし、一瞬呆気にとられた。

「変な生臭い苦味がしない……?」


一方、リヒターは窓をじっと見つめながらクラリスに尋ねた。

「前回きみたちがここに来た時、この窓にこんな黒緑色の血痕はあったか?」


イザベラたちは再び村で借りている空き家に戻り、リヒターとヴァルターに今日の行程を報告した。

「事件現場に行って、いくつか不審な点を見つけた。 それからサイモンのところにも行ったが、今回は結局家の中には入ることすら断れた」


「事件現場で何か不審な点があったのか?」


「窓と窓枠に別の血痕が見つかった。 しかも、その血痕には毒が含まれている」


ヴァルターはそれを聞くと、眉をひそめてしばらく考え込んだ後、笑った。「ますます面白くなってきたな」


しかし、イザベラはその言葉を聞いて動きを止めた。

「有毒? リヒター、普通の人がその毒に触れたらどうなるの?」


「口に入らなければ、通常は何の問題もないはずだけど? なんで?」


イザベラは真剣な表情で、ここ数日、自分の手が口に触れたことがなかったかを必死に思い出そうとしたが、全く思い出せなかった。


しかし、彼女ははっきりと覚えていた。

以前、現場で彼らが窓枠を掴んで飛び出したことを。


リヒターはイザベラの真剣な表情を見て、もう一度「どうした?」と尋ねた。


すると、イザベラは真剣な表情で自分に二回「浄化術(じょうかじゅつ)」をかけ、自分への術が終わるとすぐにヴァルターとクラリスにも二回ずつかけた。まるで皮膚まで削り取るかのような勢いだった。


「何をする――」

ヴァルターが口を開こうとした瞬間、一粒の丹薬が押し込まれ、クラリスも逃れることはできなかった。


二人が丹薬を飲み込んだ直後、イザベラにそれが何の丹薬なのか尋ねる間もなく、イザベラ自身も一つ飲み込んだのが見えた。


「危なかったわ。 あの日、私たち三人は窓から飛び出したんだけど、もう少しで毒殺されるところだったのよ」


ヴァルターは顔面が暗くなり、クラリスも呆れ返っていた。

イザベラは、今回戻ってきてからというもの、どうも常識がかなり欠けているようだ。


「私たち、中毒になっても気づかないほど無知じゃないわよ?」


イザベラ……彼らはすでにD級以上の仙士であることを忘れていた。中毒になると、仙力の巡りが停滞してしまうのだ。

「……それじゃあ……えっと……ただ、私の解毒丹がどんな効果があるか、急に試してみたくなっただけよ?」

イザベラは気まずそうに口を開いた。


クラリス……それは本当に唐突すぎるわ。


「ふっ、効果?」

ヴァルターは嫌そうな顔でイザベラを見つめた。

「中毒になっていない人に解毒丹を飲ませて、何の効果が知りたいんだ?

副作用でも確認したかったのか?」


……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。