53 アンナの同門
アンナはヴァルターたちを連れて、自分の同門に会うことになった。
部屋の中はひどく肌寒く、ベッドには一人の男がうずくまっていた。
日光は差し込まず、部屋は薄暗く、その中で身を縮めているその男は、なおさら陰鬱で不可解な存在に見えた。
アルベルトは思わず手を上げて鼻の前で扇いだ。
ヴァルターは表情を変えずに、ただ斜め上にある小さな窓を物思いにふけるように一瞥した。
五人は次々と部屋に入り、客というより、まるで自分たちの部屋であるかのように振る舞い……ベッドの前で列をなして、ベッドの上で丸まっている男を見下ろした。
その男は最初寝たふりをしようとしたが、五人の視線の圧力が強すぎた上、彼らは口々に喋り続けていた。
「ベッドの上のあの塊、本当に人間なのか?」
「真っ昼間なのにまだ寝ているのか? 起きて座禅を組んで傷を癒やさないのか? まさか傷が重すぎるのか?」
「仙士、起きていますか? 私たちは星詠仙門の弟子です。 お怪我の具合を見に来ました」
「まさか傷が重すぎて気絶してしまったんじゃないのか? それならリヒター、君が直接やってみては? 私たちが彼を押さえておくから」
「平手打ちでもしてみたら? もしかしたら目が覚めるかも……」
ベッドの上の男が突然ゆっくりと体を向け、目を開けると、そこには期待に満ちた五つの顔が向かい合っていた。
「仙士、目が覚めたのか?」
「もう少し寝ていたほうがいいんじゃないか?」
アルベルトは手をこすり合わせ、その男の首筋へ手を伸ばそうとした。
その男は突然首筋に少し冷たさを感じ、何か言おうとしたその時、ヴァルターが口を開いた。
「まずは症状を聞いてみよう」
リヒターは医術に疎い。
そして彼らの中で治癒の仙力を持ってるのはアルベルトだけなのに、なぜヴァルターが彼に診察をさせたのか分からなかった。とはいえ、診察には「望・聞・問・切」があり、大まかな流れくらいは把握していた。
リヒターが手を伸ばし、脈を取ろうとしたその時。
その男は身を縮めて言った。
「これは、君たちのような普通の仙医では治せない病気だ。 無駄な手間をかける必要はない」
イザベラは眉を上げた。
「妖獣に傷つけられたんじゃないの? それなのに、治せないなんてことがあるの?」
その男が固まった瞬間、アンナが口を開いた。
「実は、グリーンベル村に到着する前にも一度襲撃を受けていて、その時にサイモンが重傷を負ったんです。 ただ、村の用事を遅らせたくないと、サイモンが無理をして進み続けたため、昨日ようやくグリーンベル村に到着したのです。 そして、黒縞妖猫にも……」
「来る前にも襲われていたのに、どうしてグリーンベル村にはこんなに多くの妖獣がいるの?」
クラリスは信じられないというように眉をひそめた。
ヴァルターは目を細めた。
「サイモン仙士は実に義に厚い方だ。それならなおさら、仙士に診てもらうべきだ。リヒター、頼んだ」
リヒターが前に進み出た。
「仙士、手を差し出していただけますか」
サイモンは複雑な表情で、ベッドの周りに整然と並んだ人々を一瞥した。人数が多すぎて、アンナでさえ押し入る隙間がなかった。
リヒターは形だけ脈を診た。
最初は何も感じられないと思っていたが、脈に触れたら意外と何とか分かった。
この人の体内には仙力がない。しかも、確かに毒に侵されていた。
星詠仙門では、どのようなタイプの仙士であっても、基礎となる知識は学ぶ必要がある。
一般人の脈象、仙士の脈象、そして中毒時の脈象などは、すべて必修科目だ。
この男の仙力は仙力を体表に浮かせており、一見すると仙士のように見える。しかし、体内にある仙力はF級にも満たない。彼らの中なら、誰が診てもそれを見抜ける。
しかも、この人は本当に毒に侵されていた。
「毒」
とリヒターは口を開き、仙力のことは触れなかった。
「おそらく、黒縞妖猫が彼らを襲った際、口の中に毒を秘めていたのだろ」
ずっとサイモンをじっと見つめていたイザベラは、サイモンがリヒターの答えを聞いた瞬間、明らかに安堵の息をついたのを感じた。
サイモンの容姿はごく平凡だったが、ただ一対の目が極めて黒く、不気味な陰鬱さを湛えており、見る者に深い不快感を抱かせた。
リヒターはしばらくそのままでいたが、ヴァルターが合図を送るまで手を離さず、口を開いた。
「悪いが、僕には君を治せない……」
サイモンは虚ろな笑みを浮かべ、続いて手を上げて礼をした。
「これが私の運命です。仙士は気にしないでください」
イザベラはサイモンを見つめた。
もう運命を受け入れたのか?
早すぎない?




