49 黒縞妖猫の真実
この黒縞妖猫は出産したばかりで、だからこそ、戦うとき、無意識のうちに腹部を守っていた。
だが、出産で体力が尽き、昏睡状態に陥っている隙に、誰かが幼獣を盗み去ってしまった。
黒縞妖猫は幼獣を探してグリーンベル村を通りかかり、幼獣の匂いを嗅ぎつけたことで、村中をくまなく探し回った。
やがて血の匂いを嗅ぎつけ、その窓の下までやって来て、焦燥に駆られて、その場を何度も行き来したが……
自分の子の痕跡は見つからず、そこには無意味な血と肉のかたまりだけだった。
それは自分の子ではなかった。
しかし、そこにはもう一人、自分の子を失ったお母さんがいた。
黒縞妖猫は、そのお母さんが抱えていた絶望と悲しみを、まるで自分のことのように感じ取った。
黒縞妖猫は立ち止まってなくてそのまま歩き続け、別の場所へ向かって自分の子を探し続けた。
そして、ヴァルターたちによって捕らえられた。
ヴァルターは頷く。
その部屋の中には妖力の残滓がなく、黒縞妖猫が部屋に入っていなかったことは確かだ。
最後に、黒縞妖猫は、自分の子の匂いがまだ村の中にいると語った。
イザベラたちは、殺されて切り刻まれた猫妖獣のことを思い出し、揃って顔を曇らせた。
「君の子は、白ではないはずだよね?」
全身が黒い毛で覆われているのだから、白い子を産むはずがないだろう。
黒縞妖猫は目を伏せ、その獰猛な猫の瞳は今、陰鬱な光を宿していた。
「白だ。 真っ白だ」
イザベラたちの胸が締め付けられた。
一方、ヴァルターは黒縞妖猫を見つめ、親指と中指をこすり合わせた。
「幼獣は何匹いる?」
黒縞妖猫は一瞬、呆気にとられたように目を瞬かせた。
「……七匹」
黒縞妖猫はヴァルターの視線を避け、尻尾の先を不安そうにくるくると巻き、また緩めた。
そしてイザベラたちの方を見る。
イザベラたちの顔色は、一人また一人と悪くなっていった。
黒縞妖猫は焦った様子で黒猫に尋ねた。
「彼ら、何か知っているのか? 私の子を見かけたのか?」
リヒターは急いで近づき、黒縞妖猫の背中を撫でてなだめた。
「僕たちはまだ何も知らないよ。 あいつらの顔色が悪いのは、ただ……お腹が空いているだけだ。 大人しくして、まずは空間袋に入ってくれ。 幼獣を探すのを手伝うから」
黒縞妖猫は少しもがいた後、ヴァルターの方を見た。
ヴァルターは平静な表情で言った。
「手伝うよ、あなたの望みを」 しかし、幼獣を探すとは一言も言わなかった。
黒縞妖猫は、自分の本心が透けて見られているような気がした。頭を垂れ、鼻先を前足の間に埋めて、静かになって思った。
この仙士たちは以前の者たちとは違っているようだ。彼らを信頼する以外に、他に手立てがなかった。自分だけでは幼獣の仇を討つことはできない。
ヴァルターは空間袋を取り出し、黒縞妖猫を中に入れた。黒猫は黒縞妖猫を慰めると言い、自分から空間袋の中へ入っていった。
イザベラは眉を上げた。
黒猫がまさかヴァルターの空間袋に入るなんて? 同じ猫科として、同類がそんな姿を見ているのが辛かったのだろうか?
イザベラはその空間袋を数秒間じっと見つめたが、どこか違和感を覚えた。
ヴァルターはイザベラたちの不自然な表情を気にする様子もなく、椅子に座って右手の人差し指で「トントン」と机を叩いていた。
何かを考え込んでいるようだった。
あの黒縞妖猫が語ったことは、きっとすべてが真実というわけではない。
修仙界では、血脈が強ければ強いほど、子孫を残すことは難しくなる。
この黒縞妖猫の血脈は決して弱くない。それなのに、七匹も子を産んだというのか?
それに、黒い猫が真っ白な幼獣を産むことはあり得るが、七匹すべてが真っ白だというのは? ありえないと思うけどな。
しかし、そんな嘘をつくなら、何の意味がある? 一体何を隠そうとしているのか?
今日の堕魔の兆候は、本当に戦いのせいだったのか?
もしそうではないなら、一体何があいつをそれほど激怒させ、堕魔を抑えられなくさせた?
堕魔、七匹、純白……
ヴァルターが叩いていた指がふと止まった。
そして、黒縞妖猫の腹部に貫通傷があったことを思い出す。誰が、あの傷を負わせた?
村長の言葉で、行方不明になった村民、捕まえるのは簡単な猫妖獣……
まさか――
もし本当に彼が考えている通りなら、あの黒縞妖猫もまた被害者だ。
では、今日あいつが捕まったのは、本当に彼らに敵わなかったからなのか?それとも彼らの庇護を求めていたからなのか?
そして、あの子ども、誰が殺した?
黒縞妖猫は、あの子どもを殺していないと言っていた。ヴァルターはその言葉を信じている。
現場の血肉は飛び散ったような状態で、まるで誰かが意図的に握りつぶしたかのような痕跡だった。
ならば、この仕掛けは何のためだった? ただ子どもの死を黒縞妖猫に押し付けるためだけなのか?
しかし、それにしてはあまりにも粗雑だ。
もしかすると、イザベラが言ったように、やってくるのが数人の若い仙士だと知っていて、彼らを甘く見ていたのだろうか?
それとも、現場をもっと巧妙に仕立てる時間がなかったのだろうか?
「このアンナという仙士について、どう思う?」
ヴァルターが突然口を開いた。
部屋は一瞬静まり返った。
灯心のパチパチという音が響き、揺らめく光と影が、四人の呆然とした顔を照らしている。
どう思う?
どういう意味だ?
アンナに、何か問題でもあるのか?




