48 猫語は話せますか
ヴァルターの笑い声に胸がときめいたイザベラは、思わず答えてしまった。
「私はD級仙士と――」
イザベラが口を開いた途端、ヴァルターの威圧的な視線とぶつかり、本来言おうとしていた後半の言葉を無理やり飲み込んだ。
「……D級仙士とはいえ、『仙力化縄』という術においては、私に敵う者などいない。我ら星詠仙門の剣士七組に虚言者なし」
彼女は胸を張り、顎を少し上げ、堂々とした様子を見せた。
「『仙力化縄』は私の代名詞となる術だ!」
星詠仙門の剣士七組の仙士、アルベルト。
「……?」
星詠仙門の剣士七組の仙士、リヒターは顔をそらし、右手を拳にして唇に当て、軽く咳払いをした。
「……コホン」
一方、星詠仙門の剣士七組の仙士、クラリスは力強く頷いた。
星詠仙門の剣士七組の首席、ヴァルターは満足げに片手を伸ばし、笑みを浮かべて黒縞妖猫の額を撫でた。
よくやった、この子は教え甲斐がある。
アンナは一瞬戸惑い、眉間を微かにしかめながらも、信じるしかなかった。
「それなら、イザベラ仙士も本当にすごいですね。 さすが星詠仙門の弟子です。 ただ、この黒縞妖猫は――」
アンナはヴァルターの方を見た。
しかし、ヴァルターは何も言わず、まるで聞こえていないかのようだった。
イザベラは仕方なく話を続けた。
「この猫はまだ完全に魔の域に堕ちていないのだから、殺す必要はないだろう? どう思うか、アンナ仙士?」
イザベラの口調は極めて穏やかだったが、その眼差しは少し冷たかった。
アンナは胸がドキッとし、無意識に答えた。
「もちろんです」
「アンナ仙士はやはり心優しいね。 それでは、アンナ仙士の意見に従って殺さないことにしましょうか、首席?」
イザベラは誠実な眼差しでアンナを一瞥し、今度はヴァルターの意見を求めた。
ヴァルターは顔色一つ変えずにうなずいた。
イザベラたちが話し合いを終えたのを見て、アルベルトはドンドンと数歩前に進み、黒縞妖猫のそばに立った。
「首席、猫に乗せてくれない? 俺も乗りたいんだ。 黒縞妖猫に乗って、思いっきり叩きのめしてやりたい!」
なんてカッコいいんだ!
落ち着きを取り戻した黒縞妖猫は、その言葉を聞くと、尾を一振りしてアルベルトを叩いた。
アルベルトの口いっぱいに猫の毛を詰め込まれた。
「ペッ、ペッ、ペッ!」
黒縞妖猫はアルベルトを軽蔑したように一瞥すると、のんびりと顔を背けた。
イザベラたちは……
空が暗くなり、グリーンベル村の輪郭が次第に濃い灰色のシルエットへとぼやけていく中、イザベラたちは黒縞妖猫を連れて、村で借りた空き家へと戻った。
帰り道、ヴァルターは目を細めてアンナを見つめた。
「アンナ仙士、もう一度教えてくれ。 君が見たあの巨大な黒い影は一体何だったんだ? この黒縞妖猫のことか?」
アンナは一瞬ためらったが、すぐに確信を持ってうなずいた。
「はい、黒縞妖猫と思います」
イザベラは鼻で笑ったが、何も言わず、ただ手を伸ばして黒縞妖猫の頭を撫でた。
黒縞妖猫の耳が、彼女の掌の下で微かに動いた。
一行が村に着いた頃には、すでに暗くなっていたため、まずは休むことにした。
空き家に到着したとき残ったのは、イザベラたちだけだった。
イザベラ、クラリス、アルベルトの三人は、黒縞妖猫の前でしゃがみ込み、好奇心いっぱいの眼差しでじっと見つめていた。
やがてクラリスが口を開いた。
「猫様、何か一言言ってみよ」
「ニャー――」
黒縞妖猫はまぶたを少し上げ、一声鳴いたが、それはいかにもやる気のない鳴き声だった。
確かに一言発したのだが、それは……
イザベラ、クラリス、アルベルトの三人は顔を見合わせ、皆同じように呆気にとられた表情を浮かべていた。
「誰か外国語に詳しい人はいる? 猫語がわかる人は?」
イザベラはヴァルターとリヒターを見た。
リヒターは首を横に振った。
イザベラは再びヴァルターに視線を移すと、ヴァルターは仕方なさそうに彼女を一瞥した。
「君の黒猫、もう目が覚めただろう? 呼び出して聞いてみてくれ」
「……あ」
イザベラ一瞬呆気にとられたが、すぐに額を叩いた。しまった、黒猫のことをすっかり忘れていた。
黒猫がイザベラの肩に現れ、まず不満げにイザベラを一瞥し、次にヴァルターを睨みつけ、それからようやく黒縞妖猫の方へ視線を向けた。
クラリスは思わず呟いた。
「……なんて横柄な黒猫だ、度胸のある猫さんだね」
高低の異なる「ニャーニャー」という鳴き声がしばらく続いた。
やがて黒猫の通訳を通じて、皆はようやく黒縞妖猫の物語を知ることになった。




