37 クロードは一体何のためにこんなことをしたのか
イザベラたち四人は苦渋の表情を浮かべていたが、逆にヴァルターはすぐにそれを受け入れた。
イザベラはヴァルターの黒い木剣を見て、少し羨ましく思った。彼の本物の剣と大して変わらないんじゃない?
「なんで首席は黒い木剣なのに、私たちの木剣は色とりどりですごくダサいの!」
クラリスは自分の赤い剣を手に、イザベラに小声で囁いた。
「パッ――」
黒い木剣が突然現れ、剣気がクラリスの耳をかすめて、滝のそばの岩に打ち込まれた。
クラリスは目を大きく見開き、ゆっくりと頭を後ろに向けた。
堅固な岩に真っ直ぐな亀裂が入っていた。
彼女は震える声で言った。
「……首席、そこまで荒々しくしなくてもいいでしょ? 本気で殺す気?」
リヒターは眉をひそめ、不満げにヴァルターを見つめた。
一方、クロードはにこにこと笑いながら顎を撫でた。
「訓練中はおしゃべりばかりしないで真剣にやれ」
ヴァルターは端正な顔立ちをしていたが、口調は極めて冷たかった。
「クラリス、君はもうC級の仙士だ。 さっきの攻撃は俺の実力の三分の一も使っていないのに、なんで反応すらできなかった?」
「急すぎるでしょ? いきなりで反応できるわけない…」
クラリスは唇を尖らせ、納得がいかない様子だった。
「敵は挨拶してから君を攻撃するのか?」
クラリスは不満そうに口を閉じ、それ以上口答えはしなかった。
「さあ、本題に入ろう。 君たちは一人ずつヴァルターと対決するんだ」
クロードはこの口論について何も言わず、にこにこと笑いながら、彼らを一人ずつヴァルターと対戦させ始めた。
ヴァルターは黒い木剣を掲げてクラリスの目の前に突き出し、クラリスが前に出ようとした瞬間、黒い木剣は横へずれた。
「まずは心を落ち着かせなさい」
クラリス……黙って後退した。
「リヒター、君が先だ」
ヴァルターは黒い木剣をリヒターに向けながら言った。
リヒターは青い木剣を握りしめて列から抜け出し、二人は皆の前で向かい合った。
イザベラたちは後退し、二人が戦うためのスペースを確保した。
ヴァルターが先に手を出した。
黒い木剣が風を切り裂き、リヒターに向かって振り下ろされ、抗いようのない轟音を立てた。
リヒターはほとんど考える間もなく、正面からそれを受け止めた。青い木剣を突き出し、黒い木剣をかわして、ヴァルターの木剣を握る手に直撃させて木剣を叩き落とそうとした。
しかし、クロードがヴァルターを彼らの指導者に選んだのは、ヴァルターにその実力があったからだ。
彼の黒い木剣がリヒターの剣身に当たった。本来なら、そこから互いに力をぶつけ合うはずだったが、なんとヴァルターの木剣先は彼の手首の動きに合わせて動いていた。
黒い木剣の剣先が青い木剣を押し込み、そのままリヒターの手の甲へ迫った。手の甲に突き刺さろうとしたその瞬間、一閃――
「パッ――」
黒い木剣が手の甲に当たる音と、青い木剣が床に落ちる音が重なった。
リヒターは、一瞬で赤く腫れ上がった自分の手の甲を呆然と見つめ、信じられない思いだった。
嘘だろう? 自分とヴァルターの間にこれほど大きな差があるのか?
呆然とするリヒターを見て、ヴァルターは眉をひそめたが、何も言わずに動きを止めた。
「剣とは、剣士にとって命のようなものだろう?」
クロードは傍らで胡座をかき、片手で顎を支えながら、穏やかにリヒターに言った。
「だとすれば、君は自分の命を捨てたことになるな」
リヒターは歯を食いしばり、身をかがめて自分の剣を拾おうとしたが、クロードにさっと払いのけられた。
「自分の命を取り戻したいなら、ヴァルターの手から奪い取らなければならないぞ」
ヴァルターがクロードを一瞥すると、クロードは続けるよう合図した。
それから、滝のそばでは木剣が体に叩きつけられる音が絶え間なく響き渡った。
「これって、ちょっと酷すぎない?」
クラリスは、ひたすら身をかわし続けるリヒターを見つめながら言った。
「師匠は一体何をしようとしているの? 私たちの仲を裂こうとしているの? 以前の首席も手荒だったけど、せいぜいお尻や太ももみたいな肉付きのいいところを蹴る程度だったわ。 これじゃ血が出る」
イザベラは実のところ、これについて特に問題とは感じていなかった。
訓練なら、厳しいのが当然だ。小手先の訓練なんて面白くないではないか?
イザベラはアルベルトを見やると、彼もまた怒りの表情を浮かべていた。
イザベラは少し疑問に思った。
修仙界はそんなに友好的なものなのだろうか? この程度の訓練で「過酷」と言えるのだろうか?
そしてこのままいくと、首席とクラリスたちとの仲まで悪くなってしまうだろう?
それなのに、なぜクロードはヴァルターをこの訓練に選んだのだろうか? 弟子同士の関係が悪すぎると師匠も困るだろうに。
では、クロードは一体何のためにこんなことをしているのだろうか?




