30 千仙石で私のパフォーマンスを買いたい?
イザベラは眉をひそめ、丹田の仙力を再び抑え込んだ。この場で続けてもう一段階昇級してしまったら、さすがに面倒なことになる。
かろうじて抑え込んだイザベラは、目を開けた。
気づけば、石段の上下には多くの人が集まり、イザベラを取り囲むようにしていた。
イザベラ……
どうやら修仙界であっても、人々は大騒ぎを見るのが好きなようだ。
イザベラは膝をついて立ち上がったが、足はまだ少しふらついていた。
「見ないで」と、彼女は見物人たちに手を振った。
「これ以上見るなら、一人十個の仙石を払ってね」
本来はただの冗談のつもりだった。
「かつての役立たずが、山を登っただけで昇級するなんて。 そんな珍しいものを見せてもらったんだもの、千仙石くらい払ってあげるわ」
群衆の中から、挑発的な少女の声が響いた。
その直後、何かが入った袋が「パッ」とイザベラの足元に投げつけられた。
イザベラが下を見ると、それは収納袋だった。
「仙石は渡したわよ。 もう一回見せてくれない?」
イザベラは、それが先ほどから自分を嘲笑っている少女の声だと気づいた。
イザベラは顔を上げたが、それでも声がどこから来たのかは分からなかった。
周囲の者たちは、そんな金を投げつけられれば、イザベラが怒るか、せめて屈辱を覚えると思っていた。
ところが、イザベラは何事もなかったかのように収納袋を開き、中を一瞥した。
そして、そのまま袖の中へしまい込む。
「ありがとう」
千仙石、まさに、棚からぼた餅だった。
見物人の中には笑う者もいれば、首を振る者もおり、小声で囁く者もいた。
「本当にフェアフィールド家のあの子か? なんだか以前と違う気がするけど……」
「そうだな、セドリック王太子に婚約を破棄されて、ショックで頭でもおかしくなったんじゃないか?」
「声が大きいわよ。 あの子は役立たずでも、おじいさんはS級の仙士なんだから……」
イザベラは聞こえないふりをした。
彼女のそんな全く気にしない態度に、その声の主は腹を立てたようだ。
「役立たずな上に金に目がくらんでいるなんて、セドリック王太子が君と婚約を破棄したのも無理はないわね」
イザベラは虚空を見つめ、肩をすくめた。
「私の方から婚約を破棄したのよ」
その声は途絶えた。
イザベラは、その場に呆然と立ち尽くしているユリアを一瞥し、片手を差し出した。
「お姉さん、行きましょう」
ユリアはようやく我に返り、「ああ」と声を上げ、素直に彼女と手をつないだ。
そして、まだその場に立ち尽くしているシオンを振り返り、一瞬ためらったが、やはり声を掛けた。
「シオン、行こうよ」
シオンはイザベラを一瞥すると、不機嫌そうな顔で後をついてきたが、道中、一言も口を開かなかった。
仙力が安定したため、イザベラは今回、とても速い足取りで、笑顔を絶やさず、階段が高いことなど気にも留めなかった。
覗き鏡の前で、クラリスはイザベラを嘲笑した女の子と睨み合っていた。
「クララ、なぜ伝書符まで使って、わざわざ仲間にイザベラへ金を投げつけさせたんだ? それはあまりにも侮辱的だよ。 どういうつもり?」
「セドリック王太子との婚約が破棄になって、イザベラもとうとう本性を隠さなくなったのよ。 あんなふうに平然と金を受け取るなんて、金に目がない証拠じゃない」
「黙れ! 私たち剣士7組のことに、あなたが口を出すことなんて許さないわ」
クララは腕を組んで、軽く鼻を鳴らした。
「あら、剣士? そういえば、星詠仙門全体で、あなたたち剣士が最も貧乏だってことは誰もが知ってるわ。 そうでなきゃ、なんであんな役立たずを受け入れたの? 彼女が金持ちだからじゃないの?」
「お前――」
「もういいよ、クラリス。口喧嘩をやめなさい」
リヒターが口論を制止した。
「広場へ行って、イザベラを迎えに行こう」
イザベラは今のところ全く気づいていなかったが、雲の上の何人かの「顔見知り」たちは、まだ入門手続きすら済ませていない彼女を巡って、すでに口論を始めていたのだ。
山頂に着き、最後の石段を踏み出すと、周囲の浮雲が自然と散り、陽光が降り注いだ。
巨大な八卦形の広場が眼前に広がり、荘厳で威厳に満ちており、かすかに仙鶴が空を横切っていくのが見えた。
イザベラは目を細めてしばらく眺めていたが、ふと広場の端にあるキラキラと輝く鏡に視線を留めた。
「あれは何?」
「覗き鏡だ。 仙門内を監視できる」と黒猫が言った。
イザベラ……
修仙界の監視カメラか、なるほど。
八卦広場の奥には、「星詠仙門」と書かれた大きな扁額が掲げられていた。
堂々とした広場とは対照的に、その扁額は極めて質素で、将軍の屋敷の看板よりも精巧さに欠けていた。
ただ、不規則な形の木板に墨をたっぷり含んだ筆で「星詠仙門」の文字が書かれているだけであったが、その筆致は龍蛇を駆けるかのようで、木に深く刻み込まれていた。
星詠仙門、修仙界一の仙門であり、これを凌ぐ存在はいない。
この看板は、素朴で飾り気がない。
それなのに、どこか妙な味わいがあった。
イザベラは口元をほころばせて笑った。
天才しか受け入れないというのに、まさか……彼女のような恋愛脳の役立たずまで受け入れてしまうとは。
本当におじいさんのコネだけだったのだろうか?




