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3 30秒の王太子を撃退した悪役令嬢、まさか「まだ働け」と言われた

一方、前を歩くイザベラは、何も聞こえていなかった。

「元の持ち主の仇は討った。さあ、任務を報告しに行こう~」


イザベラの足取りは軽やかで、気分が良すぎて歌を口ずさみそうだった。

前世はどんな日々だったのか?

毎日仕事の終わりなんて見えなかった。

朝から晩まで張り込み、雨の日も猛暑の日も、浮気相手を尾行した。

給料は安く、残業代も出ない。

調査が終われば報告書。報告書を書き終える前に、次の案件が飛んでくる。

三か月追い続け、ようやく決定的な証拠を押さえた帰り道、よく晴れた日の夕暮れだったな。

彼女はそのままぱたりと歩道に倒れ、安らかに目を閉じた。

死因:過労。

死相:口元に笑みを浮かべて――ついに仕事から解放された。


目を覚ますと、そこは修仙界。悪役の令嬢となっていた。

イザベラは手を上げて自分の顔を撫でてみた。殻をむいた卵のように滑らかで柔らかかった。

さらに腕や足をつまんでみると、仙力が巡り、骨格が軽やかだった。

彼女は再び周囲を見回した。

「霧隠秘境」には仙霧が立ち込め、地面の草さえも仙光を放っているよう。踏んでしまえば寿命が縮んでしまいそう……いや、修仙界なら、踏めば寿命が延びるかもしれない!


「黒猫ちゃん、お家に帰ろうね」

イザベラは両腕を広げ、岩の上で丸くなっている黒猫に向かって満面の笑みを浮かべた。

悪役令嬢だ! 

それは何を意味する? 

家には金があり、背後には権力があるということだ。

つまり、人生を思う存分、怠惰に楽しめるということ!

彼女は絵に描いたようなドラ息子……いやいや、ドラ娘として振る舞い、毎日昼までぐっすり眠って~

目を覚ませば、豪勢な仙膳をずらりと並べさせ、塩焼きドラゴン肉、照り焼き鳳凰の翼、朱雀の卵を使った茶碗蒸しを心ゆくまで味わって~

腹が満たされれば縁側でごろりと寝転び、そのまま百八十年くらい平気で日向ぼっこを続けられるんだ!


あああああーーーーーーーー!

幸せすぎる!


これぞ仙人修行!

仙士になったら、たとえばF級仙士でも、寿命は軽く千年以上にもなる。

前世で必死に27年間生き抜いた私が、今世ではのんびりと270年を過ごす。換算すれば、一生分どころか、百人分の人生をまとめて休暇にするようなものだ。

考えるだけで素敵だ、最高~


黒猫の琥珀色の瞳がきらりと光った。

まるで「すでに隠居生活の予定を組んでいる」というイザベラの表情を見て、一瞬沈黙した。

「ご主人様」

やがて、黒猫は穏やかな声で口を開いた。

「まだ任務が終わっていませんよ」


イザベラの笑顔がそのまま凍りついた。

「……え?」


「霧隠秘境の任務は一ヶ月です。結界が閉じるまで、あと十六日あります」

黒猫は石から飛び降り、軽やかにイザベラの足元に降り立った。

「本来ならあなたたちは三人一組でしたが、今はあなた一人だけになりました。あ、そうそう、あなたが採集した仙草はすべてセドリックに預けてありますから……」


イザベラは口を開きかけたが、また閉じた。

瞼はバチバチバチバチ……

彼女はうつむいて足元の草を見つめ、もう仙光が見えない。

それから顔を上げて秘境の奥深くにある真っ黒の密林を眺めた。

仙霧が渦巻き、もはや仙霧が漂っているようには感じられず、ただ「自分の命がもう長くは持たない」という予感だけが募った。

「ここ、危険すぎるんじゃない?」


遠くから、妖獣の低く唸るような咆哮がかすかに聞こえてきた。


「……」

イザベラは十数秒ほど黙り込んだ。

そして彼女は急にしゃがみ込み、黒猫のふっくらとした頬を両手でむにむにと揉みながら、涙目で訴えた。

「修仙するのに、バイトまでしなきゃいけないの?!」

「そんなの、理不尽すぎるわ!」


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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明日も更新予定ですので、また読みに来ていただけると嬉しいです!


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