28 行きたくないなら、行かなければいい
三人が知らなかったのは、山の上で、数組の目が覗き鏡を通してこの光景をじっと見つめていたということだった。
剣士七組、つまりイザベラが所属するクラスは、全部で五人しかいない。首席は一年中姿を見せず、四番目の妹弟子のイザベラはいつもセドリックについて回っているため、剣士七組にはいつも三人しかいない状態だった。
「この小娘がイザベラ・フェアフィールド? うちのあの恋愛脳の妹弟子?」
そう言ったのは二番目の姉弟子クラリスで、彼女は鏡に映るイザベラを指差しながら、信じられないという表情を浮かべていた。
続いて、驚きを帯びた別の声が響いた。
「あいつが恋愛脳なのに、他人に『恋愛脳になるな』なんて教えているのか? 頭がおかしくなったのか?」
そう言ったのは、頭に一対の龍の角を生やした、剣士七組の最年少の弟弟子、小白龍アルベルトだった。
三番目の兄弟子リヒターも思わず顎を掻いた。まったくもって信じがたい話だった。
鏡の中の三人は歩き続けた。
真ん中には「体が弱い」イザベラが挟まれており、その歩みは周囲よりかなり遅かった。
雰囲気がぎこちなくなるのを防ぐため、イザベラが自ら話題を振った。
「申し遅れました。私はイザベラといいます」
ユリアはイザベラの手を握り、優しい眼差しでしっかりと支えた。
「イザベラ、素敵な名前ですね」
「お姉さんは仙医ですよね。 何級ですか?」
「D級の仙医ですよ」
とユリアは静かに言った。
「今回の任務はE級の薬草を三株採取することだったの。 運良く、あまり手強い妖獣には遭遇せず、無事に完了できましたわ」
イザベラの瞳がわずかにきらめき、心の中で感慨にふけった。そして顔を上げて真剣な眼差しで彼女を見つめた。
「仙医って素敵ですね。 世を救い、人を助けるなんて。 お姉さんは志が高く清らかで、きっと素晴らしい仙医になりますわ」
ユリアは微笑んだが、その笑顔には憂いが漂っていた。
「でも、シオン……彼は今回で三度目の任務失敗なのです。 仙門の掟では三回任務に不合格になると除名されます。 彼は私と一緒に去ろうと誘ってくれたけど、私は……」
「ユリアさんは去りたいですか?」
ユリアは一瞬沈黙し、首を横に振った。
「行きたくないです」
「それなら行かないでくださいよ」
イザベラはきっぱりと言った。
反対側にいたシオンは長い間我慢していたが、ついに我慢できずに口を開いた。
「お前はなぜ横から邪魔をしてくるんだ? 僕たちの間の事情を知ってるのか? 何も分かっていないくせに余計な口を出すな!」
イザベラは顔を彼の方に向け、穏やかな口調で言った。
「シオン仙士、あなたが任務を三度失敗したのは運が悪かったのか、実力が足りないのか、それとも努力が足りないのか?」
シオンは言葉を詰まらせた。
「運が悪かった? 三回続けて? そんなことないでしょ。 そして星詠仙門に受け入れられるほどの天賦があるのだから、実力が足りないわけではない。 とすればーー」
イザベラは微笑んだ。
「ただ、努力が足りないだけでしょう。 ユリア姉さんを『小仙門』に連れて行けば、急に頑張れるようになるですか? それとも、彼女に『小仙門』で結局あなたより早く昇進し、あなたより優秀になり続けさせ、また『離れたくない』と言うつもり?」
シオンの顔は青ざめ、真っ白になった。
ユリアの足が止まった。
彼女は婚約者青ざめた顔を見つめ、ふと、どこか見知らぬ人のように感じた。
これまで、彼が自分に甘えるのは、ただ愛しているからだと思っていた。
けれど今、その想いのすべてが本当に「愛」だったのか、ユリアには分からなくなっていた。
「もし私がシオン仙士だったら、きっとお姉さんの夢を叶えて差し上げるでしょう。 愛する人の人生が輝くのは嬉しいことでしょう?」
イザベラは、反論しようとして口ごもるものの、どう反論すればいいのか分からないシオンを一瞥し、口元にはさらに深い笑みを浮かべ、心からの優しさでこう言った。
「星詠仙門の周りには小仙門もあるわよ。 シオン仙士は本当にユリアさんと離れたくないだけなら、星詠仙門の近くにある小仙門を探せばいいじゃないですか? そうすれば、会いたい時に会えますし」
仙門に入るのは学校に通うためであって、刑務所に入るわけじゃない。 どうして会えなくなるというのか? シオンは婚約者がどんどん遠ざかって追いつけなくなるのを恐れているだけだ。 だから彼女を自分のそばに縛り付けようとしているのだ。
シオンの顔色が曇り、イザベラを睨みつけたが、ユリアがいるためこれ以上何も言えず、イザベラが去るのを待つしかなかった。
イザベラの言葉を聞いて、ユリアの目がぱっと輝いた。
先ほどまでの迷いが、少しずつ晴れていくようだった。
「……まずは山へ登りましょう」
ユリアは最後にそう一言だけ言った。声は小さかったが、とても落ち着いていた。
イザベラが彼女の肩に寄りかかると、再び仙力が渦巻き、イザベラは足元をすくわれた。
ユリアは不意を突かれて彼女を支えきれず、イザベラは耐えきれずにまっすぐに膝をついてしまった。
「ご主人様!」
空間の中の黒猫が驚きの声を上げた。




