18 短気な仙医エドガー
イザベラがおじいさんに「命魂」とは何かと尋ねる間もなく、
ドアの外から怒号が響いた。
「フェアフィールド、死にたいのか? 死にたいのなら俺の薬を無駄にするな!」
フェアフィールドはゴロッと布団の中に潜り込み、目を閉じて安らかに眠っているようだった。
仙医エドガーは大きな歩幅で寝室に踏み込み、フェアフィールドの布団を一気に剥ぎ取った。
「寝たふりをするな! S級の仙力で棺に書き込まれた婚約破棄の書状は、すでに王宮に届けられているぞ! お前の仙力制御の素晴らしさでも褒め称えようか?」
もともと布団の上にしゃがんでいた黒猫は、布団が剥ぎ取られる勢いで吹き飛ばされ、イザベラの懐に潜り込み、エドガーに向かって息を吹きかけた。
「また俺に息を吹きかけたら、皮を剥いでやるぞ!」
黒猫は大人しくなり、イザベラも大人しくしていた。
エドガー・グレイ、フェアフィールド家の仙医。その卓越した医術よりも、その短気な性格の方が有名だった。
5分後、おじいさんが叱られてうつむいていると執事のアルフレッドが、いつもの笑顔とフラワーティーを携えてようやく現れた。
助かった!
二人と一匹の猫は思わず安堵のため息をついた。
ようやく皆、落ち着いて腰を下ろし、近況を語り合い始めた。
エドガーは憂いを帯びた表情でアルフレッドに愚痴をこぼした。
「俺が誰のために毎日夜遅くまで古医術を研究しているか分かってるか? あのボロボロに継ぎ接ぎされた体がうっかりバラバラにならないか心配でたまらないんだ。 それなのにあいつはなんと、仙力を使って婚約破棄の書状まで書いてしまったんだぞ!」
「あいつらはわしの孫娘をいじめたんだぞ。 あんな連中を放っておいて、わしの面目が立つか!」
フェアフィールドは納得がいかない様子でぶつぶつと呟いた。
「命か、面目か!」
エドガーは怒りで髪の毛が逆立つほどだった。
フェアフィールド「面目……」
「黙ってくださいよ、おじいさん」
イザベラがすぐに口を挟んだ。
黒猫もフェアフィールドの頭の上に飛び乗り、前足で彼の口を塞いだ。
もうエドガーを刺激するのはやめてくれないか。彼の悪態をこれ以上聞きたくない。
「おじいさんの病気、一体どうなっているんですか?」
「やりすぎだ。 仙医の言うことを聞かないから、死は近いぞ……」
エドガーはそう言いながらフェアフィールドを睨みつけ、それからイザベラを一瞥した。
彼から見れば、イザベラがいなければ、フェアフィールドもここまで病むことはなかったはずだ。
その一瞥でイザベラの異変を見抜いた。
頬が異様に赤く、こめかみに汗の光が浮かんでいる。これは単なる熱ではない。
そこでエドガーは白目をむいて言った。
「お前も大差ない……そんなに多くの丹薬を飲んでいたなんて、薬を食事代わりにしているのか? おじいさんと孫の二人が、私の丹薬を無駄遣いしているじゃないか」
イザベラはまだ何の反応も示していないのに、フェアフィールドの方が先に焦り出した。
「どうしたんだ? 怪我をしたのか? どこか具合が悪いのか?」
そしてエドガーを引っ張った。
「早く彼女を診てやれ!」
エドガーはフェアフィールドの手を振り払い、仙力でイザベラの状態を確かめると、処方箋を書き上げた。
「今のところ何の問題もない。 むしろ元気すぎる。 ただ、滋養が強すぎて、体力が薬効に追いついていない。 あと二日続けば、体が破裂してしまうかもしれないだけ」
イザベラ「……」
数分後、使用人が真っ黒な薬の入った碗をイザベラの目の前に置いた。そこから不気味な匂いが漂っていた。
黒猫はフェアフィールドの髷の陰に隠れ、震えながら毛玉のように丸くなっていた。
イザベラは深く息を吸い込み、鼻をつまんで一気に飲み干した。
顔をくしゃくしゃに歪め、しばらくしてようやく声を取り戻した。
「ゲッ……それじゃあ、今おじいさんはどんな――ゲッ――薬を飲んでますか? ゲッ――治る可能性はあ――ゲッ――りますか?」
エドガー「……」
「『復元丹』を錬成する必要がある。 S級の仙薬だ。 薬材はなかなか手に入らないです」
アルフレッドは茶碗で口元の笑みを隠しながら、そう付け加えた。
イザベラは眉をひそめた。
この世界では、薬材も妖獣も仙士と同じく、F級からS級までランク分けされている。
ランクが上がるほど希少になる。
今回の霧隠秘境の任務を例に挙げよう。十大仙草のうち、六種がF級、三種がE級、一種がD級だった。
これだけでも、仙士にとってはD級の任務だ。
S級の仙薬は、通常なら「巡り合わせ次第」で、確かに手に入れるのは難しい。
考え込むような表情のイザベラを見て、フェルフィールドは彼女の頭をポンと叩いた。
「あいつらの脅しに耳を貸すなよ。 おじいさんが病気になってからもう何年も経つし、探すべき薬材はほぼ集まったんだ。 あと一つだけ足りないだけさ。 簡単に見つかるから、心配するなよ」
「そうだ、心配しなくていい。 あと一つだけだ。 その一つを探すのにまだ六年しか経っていない。 とても見つけやすいよ!」
フェアフィールドに言い返した後、エドガーは頭をかいた。
「……見つからないよ。 こいつは隠れるのが上手すぎるんだ」
「蓮の実はどこにでもあるのに、本体が見つからないんだ。 君たちの課題となっているあの『仙草を探す』なんてくだらない任務に、その蓮の実が入ってるんじゃないの?」
イザベラと黒猫「……?」
イザベラの空間袋の中から、規則正しい呼吸音が聞こえてきた。




