14 ちょっと待って、誰が死んだ?
シルヴィリア王国の王城エルディアに到着したばかりのイザベラは、衝撃的なニュースを耳にした。
フェアフィールド家の令嬢が、亡くなったというのだ。
イザベラ:「……?」
小柄な人影が通りの端から端へと歩き回り、わざわざ聞き回らなくても真相を突き止めていた。
「あぁ、聞いた? フェアフィールド家の令嬢が死んだんだって」
「とっくに知ってるよ。王太子殿下がわざわざフェアフィールド将軍に知らせに行ったんだって。崖から飛び降りたらしい……」
「えっ、なんで崖から飛び降りたの?」
「彼女って低級仙士だったんでしょう? 王太子殿下には到底ふさわしくないもの。きっと恥ずかしくて、生きていられなかったんでしょうね」
「こう言うのはあまり良くないけど、あのお嬢さんは生きていてもフェアフィールド将軍の面目を汚すだけだったわ」
イザベラ:「……!」
愛のために崖から飛び降りた? 誰? 彼女?
イザベラは、事実を歪曲したこの話を聞いて、腹が立って笑ってしまうほどだった。
言うまでもなく、これはセドリックとフィオナの仕業に違いない。
彼らは私が死んだと確信していたのか? 私が生きて戻ってくるのを見たら、彼らの顔色はさぞかし見ものだろう。
それに、誰もがフェアフィールド家の令嬢の名前を口にするたびに首を振るという事実も、イザベラを不快にさせた。この娘は本当に誰からも好かれていないのだな。
イザベラは周囲を見回し、その眼差しはますます冷たく凍りついた。
クソ王子、待ってろ!
フェアフィールド家の邸宅は、王城エルディアの真西に位置していた。
四角い形をしたエルディアでは、「東は富、西は貴族、南は下層、北は貧民」という風習があり、貴族だらけの城西において、フェアフィールド家の邸宅は最も壮麗な邸宅だった。
彼女が到着すると、遠くからでも邸宅の門が大きく開いており、白い服を着た無数の人々が行き交い、使用人たちが供物を担いで邸宅の中へ運んでいるのが見えた。
彼女はさらに進み、邸宅の門の外で立ち止まった。中に入ろうとしたその時、突然、ある声が聞こえてきた。
「どいて、どいて、王太子殿下がお見えになった」
イザベラは素早く影に身を隠した。
そこには、全身白装束を身にまとい、悲しみに満ちた表情のセドリックが立っていた。
「イザベラへの贈り物を中へ運んでくれ」
八人の近衛兵が水晶の棺を運んで入ってきた。
その棺の外側には無数の宝石が散りばめられており、まさに千金の価値があるものだった。
イザベラ:「……」
婚約者が死んだのに棺を届けに来るなんて、なかなかユニークね。イザベラは白目をむいた。
フェアフィールド家の執事アルフレッドが前に進み出て、王太子を見上げた。
「王太子殿下、お嬢様の葬儀の手配は将軍が自ら行いますので、ご心配は要りません」
「イザベラは昔からこのような華やかなものを好んでいました。将軍が用意した木製の棺は質素すぎます。この水晶の棺の方がふさわしいでしょう」
セドリックは深い愛情を込めた表情で言った。
「イザベラはやはり私の婚約者だ。たとえ死んでも、彼女には安らかな眠りの場を与えてあげたい」
セドリックの後ろに控えていたフィオナは感動した様子で言った。「王太子殿下はイザベラに本当に優しくおられますね。イザベラが知ったら、きっと喜ぶでしょう」
暗がりに身を潜めていたイザベラは冷笑した。
もし今日、本当に自分が死んだとしたら、この貴重な水晶の棺がフェアフィールド家から運び出された途端、「フェアフィールド家の令嬢は死んでも贅沢を尽くす」という噂が、シルヴィリア王国中に広まってしまうに違いない。
入り口には見物人がますます増えていた。
アルフレッドは顔を曇らせつつも、どうしようもなく、身をかわして王太子一行を邸宅の中へ通した。
フェアフィールド家は、本当に没落してしまうのだろうか?
イザベラは執事の顔に浮かぶ悲しみを眺め、目をきらりとさせた。
そして、皆が王太子を出迎えている隙に、彼女は数歩で邸内へと滑り込んだ。
一陣の風が吹き抜け、アルフレッドは目を細めた。




