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13 家に帰る! 婚約破棄する! 復讐する!

イザベラが岸に向かって泳ぎ出した。


彼女が動いた途端、ヴァルターははっとした。「止まれ!」


イザベラ……おや、へへへへ。


イザベラが前に出れば、ヴァルターは後ずさりし、彼女がまた前に出れば、ヴァルターはまた後ずさりし、そうして岸辺までたどり着いた。


ヴァルターはこれ以上後退する場所がなくなり、手を伸ばしてイザベラの行く手を阻んだ。

「一体何をするつもりなんだ?」


イザベラは彼に白目をむき、くるりと体を回して岸に上がった。


ヴァルター……


イザベラが上を見上げると、濃い霧が視界を遮っていたが、それでも万丈もの高さの断崖が垂直にそびえ立っているのが見えた。あの高さから転落したのだ。

下は水とはいえ、この転落でかなりの怪我を負ったに違いない。

イザベラは胸元をさすり、視線を外した。

「さっきはごめんなさい、わざとじゃなかったの」

そう言いながら、無意識に下を向いて水の中を覗き込んだ。

「大丈夫ですか?」


ヴァルターは息が乱れているのを感じた。

「……そこばかり見ないでくれ」


イザベラ:「……ああ、ごめんなさい」


「上がらないの?」

イザベラは親しげに手を伸ばし、彼を岸の方へ引き寄せようとした。


「服……着てないんだ」

ヴァルターは歯を食いしばってそう言い放つと、素早く対岸へと泳ぎ出した。


イザベラの手は宙に浮いたまま固まった。

彼女は自分の手を見下ろした。ああ、そうだった。さっき掴んだところ、確かに服を着ていなかった。

……まあいいか。

彼女は対岸に目を向けると、服は案の定、石の上にきちんと畳まれて置かれていた。


二人はようやく身なりを整えた。一人は小さな物乞い、もう一人は黒いローブをまとった男。ようやくまともな姿になった。


イザベラは咳払いをした。

「ねえ、私たちもう……こういう関係になったんだから、あなたの名前を教えてくれない?」


「俺と君にどんな関係があるんだ?!」


「その……」

イザベラの視線は、また無意識にある場所へと向いた。


「……」ヴァルターはさっと背を向けて立ち去ろうとした。


「あぁ、行かないでよ、お兄ちゃん、お兄ちゃん――」


ヴァルターは魔気を抑え込んだばかりで、仙術を使いづらく、すぐにはイザベラを振り切ることができなかった。


一人は仕方なく、もう一人は嬉々として、二人は共に歩みを進めた。


「お兄ちゃん、あなたも仙門の任務で来たんでしょ? 仙草を何株か見つけたんだけど、チームを組まない? 私、もう三株持ってるよ!」


「秘境の結界がもうすぐ閉じるというのに、たったの三株?」


「だって、あなたもいるじゃない?」


「……」


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」


ヴァルターは眉間を揉んだ。

「俺の名前はヴァルターだ。 仙草は九株持っている。 君とチームを組んでもいいが、これからは黙っててくれ」


実はヴァルターはすでに仙草をすべて集めていた。なぜこの小さな物乞いとチームを組むのか、自分でも分からなかった。

ただ、さっき彼女が手を伸ばして彼を引っ張った時、ふと彼女の手を見てしまったのだ。

十本の指の爪のうち、六本が反り返り、縁からは乾いた血がにじみ出ていた。手のひらは切り傷だらけで、池の水に浸かったせいで、傷口の縁が白く浮き上がっていた。

それなのに、彼女は「痛い」の一言も口にしなかった。

全身の力が抜け、仙力さえも少し散りつつあるのに、それでも必死に任務のことを考えている。どうやらこの任務は彼女にとって重要なのだろう。

まあ、チームを組むだけなら、自分にも損はない。それに、このまま放っておけば、こいつはもう結界閉じるまでずっとしゃべるだろ。

黙ってほしい……それだけだ。


その言葉を聞いて、イザベラの目がぱっと輝いた。

「ありがとう、お兄ちゃん。お兄ちゃん、本当に優しいね。この世で一番――」


「黙れ!」


声は途切れた。イザベラは両手で口を押さえ、従うことを示すように目だけを見せた。


ヴァルターは、まるで言葉を語っているかのような彼女の瞳を見つめ、イザベラには見えないところで、口元をほころばせた。


一ヶ月が経ち、霧隠秘境の結界が閉ざされた。


星詠仙門の長老が結界の前に立ち、任務の達成度を記録していた。

イザベラとヴァルターは一組となり、仙草を提出した。

「仙草十株、品質は上等、成績――A」


ようやく終わった。


イザベラは深く息を吐き出し、ヴァルターに何か言おうと振り返ったが、振り返った瞬間、彼はすでに姿を消していた。


イザベラ:「……私って、そんなに恐ろしい存在なの? チームワークが全然ないわね」

誰も答えてくれない。

彼女は腰の乾坤袋をちらりと見た。白玉蓮はまだ中でいびきをかいている。召喚獣の空間も確認してみたが、黒猫はまだ戻ってきていない。

しかし、彼女はあまり心配していなかった。黒猫とは契約を結んでいるのだから、何かあれば自分にも察知できるはずだ。


任務は完了した。

さて、次は――家に帰る! 婚約を破棄する! 復讐するんだ!


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