王子と従者
「一度だけで良いから会ってみなさい。」
「……………………はい。」
「オールシー公爵も言っていただろう?あの子は大丈夫なはずだ。」
「……………………はい。」
「……………王妃もきっといつか良くなる。今月も大陸中から能力の高い医者や魔法使いを呼んだ。」
「……………………はい。」
そんなことあるもんか。攻撃魔法よりも、回復魔法がずっと得意なお父様でも、お母様の病気を治せなかったのに。王家の魔法が通じないのに、そんじょそこらの人間が治せるわけがない。実際、もう何百人も呼んでもダメだった。顔を上げない俺の気持ちをたしなめるように、お父様がため息をついた。
「……………………もう行きなさい。明日だ。明日ニコル達が来る。」
「失礼いたします。」
丁寧に頭を下げる。ゆっくりと閉められた扉の向こうにはケインが待っていた。俺と七つほど離れているこの従者は物腰が柔らかでそれでいて、何を考えているのかさっぱりわからない。あと、子ども扱いしてくるから癪に障る。
「王太子様。」
「何だ?」
「何となく国王陛下と話された内容は分かりますが、どの公爵令嬢なのですか?」
「……………………公爵令嬢と言ったら一人だけだ。」
「何と。忘れてしまったのですか?お二人ですよ。」
「あれは女じゃない。」
「ですが、ニコル公爵が王太子様と国王陛下にあの令嬢を紹介された際、ニコル様が妹のような存在だと感じられると思う、と。」
「いや、あれは男だ。」
「大丈夫です。どんな性的な趣向があろうと私は応援致します(キリッ)」
「勝手に人をそういう嗜好だと解釈するなぁぁぁっ!……………とにかく、そもそも俺はあいつが好かん。お父様が余計な気をまわして、客間で二人だけになったらあいつっ……………くっ。」
「あぁ、そういえば部屋から出てきた時にぐったりした顔してましたね。それから何もしゃべらずに花壇弄ってましたよね。襲われたんですか?」
ふむとすらりとした手を顎に付ける。こんなにもキザなポーズが決まるのはこいつくらいだ。禿げろ。
「違うわぁぁぁっ!5分間くらい俺をジッと見つめて「これがリヴィアおねぇ様の第一婚約候補か、もう僕のお嫁さんでいいじゃん。」とか「こいつ、女装させたら僕よりはかわいくないけどまぁまぁじゃない?」とか考えてんだぞ⁈」
「……………………不思議ですよね。その能力。王家は公爵家の人間の事が分かるって。レオン様って公爵家の直系と血のつながりは無いですよね。」
「俺も詳しくは分からないが呪いみたいなものなのだろうな、分かるといっても条件があるし、お父様、つまり先代に仕える代の公爵家の人間の思考は分からないし、同じ代でもロネ様のように人の気分のようなものが分かる人間は分からない。と言われた。」
「ということは、レオン様は王太子様の将来の右腕ですね。」
「ほんとやだ……………あいつ5分間の思考で俺がショートしてたら、突然凄い勢いで女装について語り始めたんだぞ!チェンジ!」
「それは無理ですよ。代々3つある公爵家特にオールシー公爵家は王家を支えるいわばナイトのようなものです。戦とあらば我一番に戦場に走り数々の武勲を立て、政は現オールシー公爵家当主の様に他国と渡り合い国王陛下を支えているのです。代々その当主が女であろうと男であろうと年端のいかぬ少年少女であろうと。」
「そんなことは分かっているが……………ともかく、そのオールシー公爵家の長女である御令嬢と明日会わなければいけないのだ。令嬢、しかもオールシー……気が滅入る。」




