リヴィアはもう限界です。後編
ほぇ。そういえばこの世界ばりばり魔法とか使うんだったわ。あんまり実感無かった。いいなぁ。これ誰がやったんだろ。やっぱりお父様かな。いやそんなことするかな。うん。多分違うな。
ぽけっと噴水を見つめているといつの間にかレオンちゃんは噴水の近くにいて座っている。
「レオンちゃん、私この辺りを少し周ってきても良い?」
レオンちゃんの顔を覗き込んだ。
「どうしたの?調子悪いの⁉」
レオンちゃんの顔はすっかり青白く、白く小さな手が小刻みに震えていた。ヒューヒューと苦しそうな息が小さな口から漏れた。
何これ。喘息?喘息ってどうやって落ち着かせるんだろう?
何も出来ない無力な自分がこんな時、心底嫌になる。
レオンちゃんの顔はより一層悪くなっていく。
動かなきゃ。とにかく助けを、侍女さん呼ばなきゃ。レイちゃんとか。何処にいる?道が分かんない。何で、こんな時に。私はヒロインなんかじゃない。頼もしくてちゃんと助けてくれる女の子なんかじゃない。どううしたらいいかなんて分からない。
「誰か…………助けて……………」
ふいに視界にひらひらとした物がうつった。魔法水の蝶だ。蝶は半開きになったレオンちゃんの口に飛び込んだ。
「どっ…………おぅえっ?……」
ごくんという音が張り詰めた空気を和らげるように辺りに響く。段々とヒューヒューという音がゆっくりに小さくなっていく。
やっば………魔法すご……
もしあの蝶が助けてくれなきゃ大変な事になってたかもしれない。
そっとレオンちゃんの額の汗をハンカチで拭う。
ホントにごめんね。レオンちゃん。私全く役に立てなかった。
「う…………」
「あ、起きた?あのね、あの蝶さんが助けてくれたの。どうやってやったのかは分かんないけど。あと喘息なん?」
薄く目を開けたまま返事をしない。今の状況を確認する様に枕になった私のドレスを見る。
「ええとごめんね、一気に喋ったら分かんないよね。うん。とにかく気分はどう?」
「…………違うんです………自分が情けないなと思って。よくこういう風にその、喘息を起こして兄さんや会長に迷惑かけちゃうし。」
「情けなくなんてないわ。さっき私だって何にもできなかったもの。レオンちゃんの意志で発作が起きるわけでも無いでしょう?」
「でも………私がこんなに情けなくなければ私の追手で商会があんな手を焼くを必要はないのに…」
「なんでそんなこと言うの?」
そんな自分を責めなくたっていいじゃん。誰が悪いわけでも無いのに。
真っ白な顔をそっと手で包み込む。
「自分を貶めないで。傷つけないで。どうしようもならないからって背負いこまないで。」
お願いだからこれ以上ーーーーーー
「どうしようも無いことだってあるの。悩むななんて私には言えない。人に言われたからって難しいし。けど、自分を責めるのはやめて。誇り高く生きて。少しでも理想の自分になれる様に。」
レオンちゃんの腕が私のお腹に回して顔をうずめた。微かに震えた頭を抱きしめ返す。
あのね、レオンちゃん。今言った言葉は、多分過去の私にも言いたかったことだから。あの時の私は、「上原鈴」は、救えなかった。もう私は私じゃなくなっていた。あぁ、私は出来る事ならあの世界で幸せになりたかったんだ。
でももう遅い。だから私はもう二度と過ちは繰り返さない。レオンちゃんが悩んでいる事は多分聞いた事よりももっと深刻なんだろう。でもさ、レオンちゃんがたとえ攻略対象であろうと何度でも言うよ。




