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とある令嬢達のお茶会にて  作者: 朔晦 月陽


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4.これは祝い事



今日はベルメーレン公爵家のアニスの私室で3人のお茶会は開かれていた。テーブルを彩るのは香りの良い黄金色の紅茶と、様々なフルーツの断面が見えるフルーツサンドだった。


「では、イヴァンナの婚約白紙を祝って乾杯」


「かんぱ〜い」


「ふふ、ありがとう二人とも。お祝いされるとなんだか婚約白紙が悪いものじゃないように感じますわ」


「悪いことじゃないわ。あんな男との婚約は無くなった方がいいのだからお祝い事よ!」


「そうよ〜イヴァンナならすぐに釣り書が山程届くわ」


「婚約白紙ともう一つ報告がありますの。これを期にお父様と相談して、侯爵家の跡継ぎはクリフに変えることにしましたわ」


「あら、それならイヴァンナはお嫁に行くのね〜?」


「一応そのつもりですわ。だから侯爵家の婿に来たい方はいっぱいいらっしゃるでしょうけど、後継者を変えるとお父様が発表したら釣り書の数もぐんと減ると思いますわ」


「そうかしら〜?ジュールス侯爵家と繋がりたい家は多いし、イヴァンナの美貌ですもの、釣り書は減らないと思うわ〜」


「釣り書が来るだけでも有り難いですわ。年頃の嫡男の方は婚約者がいらっしゃるし、どこかの次男三男とご縁があればと思っていますわ。こうして二人とお茶会ができる身分じゃなくなるかもしれないのは寂しいですけれど、クリフは私より頭が良いし要領も良いのです。ジュールス侯爵家はクリフに継いで欲しいという私の我儘ですの」


「ジュールス侯爵様はイヴァンナの婚約のことはどうお考えなの〜?」


「お父様は嫁ぎ先は任せなさいと。私が嫌だと思う所には絶対に嫁がせないし、幸せになれる所にしか嫁に出さないから、安心して今は休みなさいとおっしゃってくれましたわ。」


「そう、それなら大丈夫よ。すぐにいい話が来るわ。気にせず今日はクズなスコーチ様と婚約解消できたことを喜びましょう」


「そうよ〜。そのスコーチ様はマリ様と結婚できるか分からないものね〜。マリ様ともイヴァンナとも結婚できなかったら貴族でいれるかも怪しいわ」


「馬鹿よね。イヴァンナにあんなこと言ったらジュールス侯爵家から婚約解消されるに決まってるのに、どうして自分が選べる立場だと思ってたのかしら?」


「お馬鹿なスコーチ様からはその後何もない〜?大丈夫よね?」


「一度手紙がきましたけど……その、内容が少し怖くて。返事はもちろんしていませんわ」


「聞いてもよろしくて?」


「もちろん。聞いて欲しいというか、もういっそ見て欲しくて持ってきましたわ」


「では先に……………。これはひどいわね。お馬鹿な人だとは思ってましたけど、ここまでとは。はい、フラニータ」


「なになに……………。要約すると、イヴァンナはまだ自分のことが好きだろうから、マリ様と結婚できなかったら迎えに行くと。その時は侯爵様を説得しておいてくれって?何様?」


「思い込みの激しい方とは思っていましたが、私から婚約白紙を申し出ているのにどうしてこう思うのか本当に分からなくて」


「たしかにちょっと怖いわね〜。マリ様と上手くいかなかった時に本当にイヴァンナに執拗く言い寄ってきそうだわ〜」


「大丈夫よ、ベルメーレン公爵家の名においてイヴァンナには決して近寄らせないわ」


「アニス……」


「本当に心配しなくて大丈夫よイヴァンナ。ジュールス侯爵家が守ってくださるでしょうけど、ベルメーレン公爵家が必ずあなたを守ると誓うわ」


「心強いわね〜イヴァンナ。もちろん私も公爵家程の力はないけれどイヴァンナを守るわ」


「本当にありがとう、アニス、フラニータ。少し不安でしたの。マリ様のお家のお噂聞きまして?」


「あぁ、アウトレーヌ男爵家が子爵もしくは伯爵に陞爵になるかもという噂ね?」


「確かにアウトレーヌ男爵家は食品輸入で成功し、今とても裕福で納める税金も高いという話ですわよね〜。でも子爵ならまだしも伯爵にというのはリレスタン様の都合の気しかしないわ〜」


「マリ様を養子にという話しを受ける高位貴族の家がなかったと聞きましたわ。我が家も打診があり、お断りしましたけれど」


「うちにもその話は来たわ。男爵家の娘を公爵家の養子になんてするはずないじゃない。ましてや王家と縁を繋ぎたいわけでもない我が家が受けるはずもないのに、お父様がお断りしたらリレスタン様は大層お怒りだったそうよ」


「アウトレーヌ男爵を伯爵に陞爵させればマリ様は伯爵令嬢。まだギリギリ妃にできるからリレスタン様も必死なのね〜」


「しかもモスウッド伯爵様が先日亡くなりましたでしょう?」


「まだお若いのに、突然のご病気だったそうね〜」


「ひとり娘のフィオナ様はまだ結婚されてませんし、婚約者の方もまだフィオナ様と同じ16歳だから、しばらくモスウッド伯爵領は不安定になるかもしれないと噂がありますでしょう?」


「モスウッド伯爵領は安定した領地経営を今までしておりますし、急に傾くようなことはないでしょうけど、あまりに若い当主となると色々大変でしょうね」


「あぁなるほど、降爵の可能性もあるということね〜」


「ええ、すぐにではないけれど、モスウッド伯爵家が降爵の可能性があるとして、伯爵位をアウトレーヌ男爵に与えようとしているらしいですわ」


「だからってアウトレーヌ男爵を伯爵にというのは無理があるけれど、もしそんなことが叶ったらマリ様とリレスタン様が結ばれて、スコーチ様とマリ様が結ばれる未来はないってことね〜」


「アルカナム公爵が外堀を埋めていってリレスタン様に圧力をかけているようだから、伯爵に陞爵ができなければロザリンド様と結婚することとなって、マリ様と結ばれることはないでしょうね」


「マリ様が伯爵家の養子にすらなれないのもアルカナム公爵家の圧力もあるからですものね〜」


「男爵家の令嬢を王族にしたくないと思うお家も多いしね」


「勝手ですけれどロザリンド様とリレスタン様の婚約が上手くいってほしいですわ。スコーチ様とマリ様が結ばれてくれたら安心ですもの」


「そうよね〜。妹が妃教育を頑張っている姿を見ている身としても、せめてロザリンド様ですわ。礼儀作法すら一から始める男爵令嬢に王太子妃は無理よ〜」


「リレスタン様のお相手がどちらになろうと、私としては第二王子殿下とフラニータの妹のミアーナ様にこの国を託したいわ」


「そうね、今回の騒動でそう思う方は多いですわね。私もそうですけれど」


「ミアーナが王妃になったら嬉しいわね〜、あの子本当に頑張っているもの。あの子の目標はずっとエリザ様なの。将来エリザ様を支えられるようになりたいと言っていたのよ」


「エリザ様もミアーナ様のこととても可愛がっていたわ。私のことも妹のように接してくださったけれど、ミアーナ様のこともそうだったのだと思うわ。それに……この話はミアーナ様には内緒よ?」


「ここでの内緒の話は家族にも言わないわ〜」


「エリザ様が隣国に旅立つ前に二人でお茶会をしたの。その時に、この国がどうなるか分からないけれど、ミアーナ様と王妃同士としての再開を望んでらしたわ」


「あら、あの子が聞いたら喜びそう。ミアーナに内緒にしないといけないのは酷ね」


「立太子の発表があり、然るべき時が来たら伝えてさしあげて」


「ふふ、そうさせてもらうわ〜」


「それにしてもなぜ立太子が未だ決まらないのかしら?」


「ベルメーレン公爵家なら理由も知ってるのではなくて〜?」


「全てではないわ。そうね……陛下はリレスタン様が18になるまでに決めるようよ。己も過ちはいっぱいあったから、そこまでは待ってやりたい、なんて甘いことをおっしゃってるみたい」


「あら、いいの〜?そんな話聞いてしまって」


「きっともうすぐ決まることになりそうだからね」


「そういうことですのね。では少し慌ただしくなりそうですね」


「ええ。色々綺麗になりそうよ」


「さて、それではそろそろこちらに触れてもいいかしら〜?」


「もちろんよ、フラニータ。これがお約束のフルーツサンドよ」


「見た目も可愛らしいのね〜」


「ほんと、フルーツの断面が見えるだけで可愛くなるなんて意外ですわ」


「今日はイチゴのサンドを用意したの。感想を聞かせてくれると嬉しいわ」


「ん、この生クリームあまり甘くないわ。フルーツの甘さが引き立って美味しい〜」


「このパンも柔らかくて口当たりが良いし、これパンの方は少し甘みがあるのかしら?クリームとフルーツと合ってとても美味しいですわ」


「教えてもらったパン屋が大当たりでしたのよ。店主と交渉して、もう少ししたら正式に雇用する予定なの。新しく王都にお店を出して、そこでこのフルーツサンドも出す予定よ」


「まぁ、それなら私達も買えますわね?」


「もちろん。ご贔屓にお願いしますわ」


「これは人気店になりますわね〜。私すっかりフルーツサンドの虜になってしまいましたわぁ」


「気に入ってもらえて良かったわ。もちろんお土産に用意してあるからご家族でも楽しんで」


「母も姉も妹も喜びますわ〜ありがとうアニス」


「実は甘いものが好きなクリフが喜びそうですわ、ありがとうアニス」


「あら、クリフ様甘いものお好きなの〜?この前お会いした時なんだかすっかり大人っぽくなってしまってて少し寂しかったのだけど、可愛らしいとこも残ってますのね〜」


「私もなんだかしっかりしすぎて寂しくなるのだけど、甘いものに輝く目は小さい頃と変わらず可愛いのですよ」


「クリフ様のお眼鏡にも叶うと嬉しいわ。甘いものが好きな男性の意見は貴重なのよ」


「私もクリフもイチゴが大好きですので、きっと気にいると思いますけれど、きちんと感想もお伝えしますね」


「ありがとう。お兄様がまずはイチゴから作って欲しいと、アルカナム公爵領からとびきりのイチゴを仕入れさせて作ったの。美味しいと自信はあるけれど素直な意見が欲しいからよろしくね」


「まぁ、セドリック様もイチゴがお好きなのですね」


「そうね、イチゴは特別ね」


「私は桃が好きだわ〜桃のフルーツサンドも作ってほしいわぁ」


「ふふ、桃も必ず作ってもらうわ。楽しみにしていて」


「ありがとうアニス、楽しみだわ〜」



用意されたフルーツサンドをペロリと3人は平らげ、イヴァンナとフラニータはフルーツサンドがずらりと並んだバスケットを手にこの日はベルメーレン邸を後にしたのだった。




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