第13章 山南敬介と今井恭子
翌朝、わんわんが部屋に戻ると、のりおの姿はなかった。
のりおは坂本の部屋で寝ている。というより潰れて寝ている。
「あいつどこに...」
わんわんは他の部屋を見に行く事にした。
そして襖が壊されてる部屋を見つけ、恐る恐る部屋を覗く。
そこには、坂本、のりお、山南、沖田が寝ていた。
「え?なんで?」
わんわんの発した一言で、山南が目を覚ます。
「おや鈴木君、おはようございます」
「お、おはようございます。どうゆう状況ですかこれ?」
「あーこれですか?まぁ楽しいお酒でしたよ」
状況を見てなんとなく察した。
「なるほど...」
「そんな事より鈴木君達はいつからここの宿に居たんですか?」
「3日前です」
「3日前から何をなさってるんですか」
「それは山南さんを...あっ」
わんわんは思い出したかのように、山南に強く進言する。
「そんな事より山南さん早く逃げてください!」
これには山南は驚いた。
3日前からここの宿に居るという事は、自分が新撰組を抜けるとわかってた事になる。
彼らはそれを知ってて自分を逃す為、ここに居る。
もし自分が江戸まで逃げ切る事を知ってれば、何もこんな事はしない。
となると、自分は捕まって切腹する歴史になる。
その事を知ってる上、歴史を変えようとしてる坂本達に気がついた。
山南はその事が嬉しく笑ってしまった。
「山南さん、笑ってる時じゃないですよ、早く江戸に逃げてください」
山南は笑顔でわんわんに語りかける。
「いけませんねぇ鈴木君、あなたはかなりのキレ者じゃないですか?なぜ私が江戸に行く事を知ってるんですか?」
「そ、それは...」
山南の言う通り、わんわんらしくないミスである。
だがこの切迫した状況で、仕方ないミスでもある。
「ふふっ少し追い詰めましたかね。けど私は決意しましたよ。ここで沖田君に捕まるのは運命だったんでしょう。その運命に逆らうのはやめる事にしました」
「戻ったら切腹なんですよ!!」
「そうですね」
「山南さん!!!!」
珍しくわんわんは声を荒げる。
「山南さん俺らの恩人です!ここで死んでほしくない!」
「鈴木君、個人の感情でいたずらに、歴史を変えるてはなりませんよ」
「わかってますよ!けど俺らはそれでも山南さんを...え?」
わんわんは驚き止まった。
「山南さんなぜそれを...」
「恭子さんにも言いましたが、私は貴方が先の時代から、来た事を知ってましたよ」
「えええええ!!」
「大丈夫ですよ。他言はしてませんから」
「それなら、話は早いです!もう時間がない」
山南は静かに顔を横に振る。
「もう逃げませんよ。貴方達は貴方達のやるべき事をやりなさい」
「でも...」
「運命は自分自身で決めるものです」
わんわんは驚いた。
幼い頃から決断する時に使ってる言葉だからである。
「いいですか鈴木君、師匠として最後の教えです。この先何があっても、歴史を変えてはなりませんよ」
わんわんは涙を流し大きく頷き、これ以上何も言えなかった。
そして坂本も途中から起きていて、2人の話を黙って聞いていた。
その目には薄らと涙が滲んでいた。
だがもう1人この話を聞いていた者がいた。
沖田総司である。
坂本達の秘密は、山南から沖田に妙な形で伝わる事になった。




