第13章 山南敬介と今井恭子
山南は沖田が何を言っても、聞く耳を持たなかった。
坂本にはもちろんわかっていた。
この後山南は屯所に戻って切腹する。
それを阻止する為、初めて自分を曲げて歴史を変えようとしていた。
タイムリープしてから山南は坂本達の力になっていた。
山南にはどんな形でも良いから、生きて欲しいという思いが坂本の考えを変えた。
そのためにわんわんとのりおを先に行かせて、山南を逃す手筈になっていた。
だがわんわん達は、山南に出会う事が出来なかった。
もはや坂本にはどうしようも出来なかった。
3人は京に戻る事になった。
道中の山南は実に陽気だった。
子供の頃の話や千葉道場で、北辰一刀流を学んでた頃の事を懐かしそうに話していた。
沖田は昔話を黙って聞いていた。
そして段々辺りが暗くなりはじめた。
「沖田君?」
「なんですか?」
「わがままを言っていいですか?」
「はい」
「一晩どこかで泊まりませんか?」
「そうですね。暗くなって来ましたしどこかで泊まりましょう」
3人は適当な宿に入った。
山南は2人をお風呂に誘い汗を流した。
お風呂から上がると、部屋で酒を酌み交わした。
沖田は山南と久しぶり酒を酌み交わす。
ここ最近は新撰組のゴタゴタで山南と酒をゆっくり酌み交わしていなかったのだが、これが山南と最後の酒になると、考えると悲痛な気持ちだった。
元々、沖田と山南は試衛館からの付き合いである。
山南は千葉道場で北辰一刀流を学び、近藤の噂を聞き試衛館の門を叩いた。
そこで近藤と手合わせし敗北した。
一説によれば近藤に華を持たせるため、山南がわざと負けたと言われてる。
それから山南は試衛館で食客になった。
山南は沖田の剣術のセンスの良さを、すぐ見抜き、自分の持ってる剣術の技術を教えた。
沖田の剣術は言わば天然理心流と北辰一刀流の合わせ持った二刀流なのだ。
そうゆう関係性から、沖田は山南を兄の様に慕っていた。
2人は試衛館の昔話を懐かしそうに、語り合っていた。
坂本はその話を黙って目を真っ赤にして、聞いていた。
山南敬介と沖田総司の試衛館時代の話なんて、資料に残ってなく、後の世の人間なんて知るよしもない。
実に充実した時間だった。
ところが...
突然部屋の襖が激しく吹っ飛び、誰かが転がり入って来る。
3人は突然の出来事に驚き、すぐ様刀を手に取った。
新撰組総長と1番隊隊長を狙った刺客かと思わせた。
だがよく見るとのりおだった。
「のりお君?」
坂本は唖然とした。
「も、もっさん?」
「お前何してんだよ!!」
「た、たすけてください」
「え?」
遠くからのりおを呼ぶ声が聞こえてくる。
「のりお〜どこいった〜」
坂本はのりおに尋ねた。
「だ、誰?」
「こ、殺される」
「刺客か!!?」
と、そこへ酒器を持った女性が部屋に入って来る。
「のりお〜みぃ〜つけたぁ〜」
りょうだった。
坂本達は偶然わんわん達の泊まってる宿に、泊まっていたのだ。
のりおをよく見たら、顔は真っ赤で酔っ払っていた。
そこにゆいかも乱入して来る。
「アハハハハハハッのりお逃げんなよぉわんわんはどこ行った?なんでわんわんなんだぉぉ!」
坂本はのりおの胸ぐらを掴む。
「おい!誰だあの女達!わんわんはどこ行った!なんでこんなところに居るんだよ!」
坂本は怒り任せに一気に質問した。
沖田は苦笑いをして坂本を宥める。
「坂本君、そんな一気に質問したらわからないよ」
坂本はのりおに激しく詰め寄ったため、息を切らせていた。
「ハァハァハァす、すいません」
のりおは泥酔の為、そのまま眠りについた。
姉妹は坂本達に絡みだす。
「わんわん達のお友達ですかぁ?」
「そ、そうですけど誰ですか?」
「私達は姉妹なんですぅ」
「いや...そうじゃなくて...」
「なんでわんわんなんですかぁ?まぁどうでもいいけどぉとりあえず、あんたらも飲めぇ飲めぇ!」
ゆいかは坂本達にお猪口を持たせて酒を注いだ。
酔っていた為、お猪口から酒溢れる。
「溢れてるじゃねーか!」
「目が半分しか開いてないですからねぇ」
りょうは御託ばかり言う坂本に苛立つ。
「お前さっきからうっせぇんだよ!!良いから飲めよ!!」
坂本は初対面の女に、何故ここまで言われなきゃならないんだと怒りす覚えた。
「口わりーなお前ら」
「顔わりーなお前」
「アハハハハハッ顔わりーってさ、笑えるぅ」
坂本は沖田と山南の顔を見て怒り露わにした。
「なんでしょなんでしょ!腹が立つ!」
「まぁまぁ」
山南と沖田は苦笑いをした。
「それよりわんわんはどこ行ったんだ?」
わんわんと言う名前にすぐ喰いつくゆいか。
「そうわんわん!なんでわんわんなんだよぉ〜」
「いやそうじゃなくて...わんわんはどこに...」
「知らな〜い。なんでわんわんなんだよぉ〜教えてくれよぉ〜」
「お前そのネタ好きだな」
りょうは酒を飲みながら、眠ってるのりおのほっぺたを叩く。
「おい!起きろ!のりお飲むぞぉ!」
「やめろ鬼か、のりお君を殺す気か」
「アハハハッいいぞぉ飲め飲めぇ」
沖田は突然大笑いをした。
「面白いですねぇ〜皆さん、一緒に飲みましょう」
山南も大笑いした。
「そうですねぇ飲みましょう」
りょうとゆいかも大喜びした。
「あんちゃん達えらい!!よく言った」
「いいぞ!あんちゃん達!」
坂本は冷や汗をかいた。
(この女ども天下の新撰組の山南と沖田に、あんちゃんって...知らないとは言え、なんちゅう命知らずだ...)
だが坂本の思いとは裏腹に山南と沖田は、楽しそうに酒を飲んだ。
何杯も...
何杯も...
酒を飲み続ける。
何杯も...
何杯も...
楽しい時間が続く。
姉妹も酒を飲む。
楽しい時間だけが過ぎて行く。
そして...
坂本、山南、沖田は姉妹に潰された。
「もう無理...」
「なんて女性だ..」
「坂本君後は頼みます...」
潰れた3人を見た姉妹は嘲笑った。
「アハハハハハッお姉ちゃん潰れちゃったよぉ〜」
「だらしな〜い」
そのまま姉妹は朝まで飲み続けた。
恐るべし姉妹であった。




