第13章 山南敬介と今井恭子
2人の楽しい時間はゆっくりと過ぎって行った。
そんな中、山南が敷いてた座布団をどかし、急に山南は真顔になった。
何事かと恭子は困惑した。
「え?どうしたんですか?」
山南は恭子に深く頭を下げた。
「や、山南さん?」
「恭子さん、申し訳ない、実は私は知ってました」
「え?」
「あなた達が先の世界が来た事を」
恭子はひどく驚いた。
「し、知ってたんですか?」
「すいません。前にあなた達が話してるの聞いてしまいました」
「そうなんですね」
「怒らないのですか?」
恭子はニコリと笑う。
「ないですよ。むしろ私達の方こそ黙っててすいません」
恭子も山南に深く頭を下げた。
お互いに頭を下げたこの状況に、お互い目が合った時大笑いをした。
「私もあなた達の世界が見たいです。どんな日本になってるんですか?」
「あー山南さんそれはダメですよぉ〜歴史が変わっちゃいますからぁ」
「あはは。そうでしたねぇ」
「嘘ですよ。山南さんはそんな事しないって信じてますから」
恭子は山南に現代の日本の生活を話した。
流石に歴史が変わってしまう話はしなかったが、TVや洗濯機や携帯電話の話しをした。
山南はそれを嬉しそうに聞いていた。
「話しが凄すぎてついけないなぁ。でも平和な日本でよかったです」
「はい」
山南は心の底から恭子に癒される感じがわかった。
「私はあなた方と出会えた事、本当によかったと思います。あなた方が元の時代に帰れる事を祈ってます」
「はい」
恭子は健やかな笑顔で返事をした。
「それでは私はこれにて失礼しますね」
恭子は何か妙な胸騒ぎをした。
立ち去ろうとした山南を呼び止めた。
「山南さん」
「はい?」
山南は立ち止まり振り返る。
「また会いに来てくれますか?」
山南は一瞬考えた様にも見えたが、笑みを浮かべて答えた。
「もちろんですよ。それでは」
恭子に一礼をして邸を後にした。
帰ってる道中、山南はある決断をした。
恭子と別れ、数日が過ぎた2月18日、山南は身の回りの物を片付け、皆が寝静まった夜中に屯所を出た。
山南は新撰組を離れ江戸に帰った。
新撰組には局中法度がある。
その中に局を脱する事許さずがある。
山南はこの法度に触れてしまってるため、もし捕まれば切腹は免れないのである。
山南は覚悟の上であった。
その翌日、山南敬介脱走の知らせが近藤、土方の元に届く。
これを聞いた近藤は手を叩いて喜んだ。
これで山南を新撰組から追い出す大義名分ができたのだからである。
土方は何も言わなかったが、その顔はどことなく悲しい顔つきであった。
近藤は幹部を集めて、すぐさま山南を捕らえる指示を出す。
山南の捕縛命令は大勢で行う事を指示した。
だがここで待ったをかける男がいた。
土方である。
土方は近藤に沖田総司のみで行かせる事を提案した。
近藤はこれには反対したが、山南は北辰一刀流の免許皆伝である。
歯向かってくればこっちの犠牲は、少なくないと近藤に進言した。
沖田は山南を兄の様に慕っていたので、恐らく歯向かう事はないと踏んだのだ。
近藤は土方の言い分を渋々のみ承諾した。
土方は沖田に馬で行く様に指示をし、小さい声で沖田に囁いた。
「総司、山南さんを逃がせ」
沖田は何も答えず土方の目を見て頷いた。
沖田が八木邸から出発しようとした時、坂本が沖田を呼び止めた。
「沖田さん俺も連れてってください」
沖田は少し考え、坂本に手を差し出し馬に乗せた。
沖田と坂本は山南を追った。




