第11章 禁門の変
麻美は坂本と別れ帰宅した。
(朝帰り...なんて言おう...)
居間に恐る恐る入ると3人は朝食を取っていた。
麻美に気がつく3人。
恭子は笑顔で麻美に挨拶した。
「おはよう」
わんわんは昨日の事もあり少し不機嫌な顔をしていた。
「ずいぶん遅いお目覚めだね」
「え?」
「昨日遅くに帰ってらしいね」
「え?」
恭子は目でアイコンタクトをしてきた。
恐らく恭子は麻美は、まだ寝てるとでも言ったのであろう。
さすが恭子である。
麻美は恭子に申し訳なさそうに顔で詫びた。
「んであのバカは?」
「え?ああ...なんか知らないけど、わんわんに(運命は自分自身で決める)って伝えてだってさ、んでどっかに走って行っちゃったよ?」
「え?ああ...ふっ」
わんわんは一瞬笑った。
麻美はわんわんに尋ねた。
「どう言う意味?」
「さぁー?」
わんわんは惚けた。
「早く飯食っちゃえよ、俺とのりお君は稽古いくからね」
「うん」
朝食を済ませた2人は稽古に向かった。
3人の男達はゆっくりであるが侍としての道を歩んで行く事になった。
そして...数日が過ぎた。
1864年 7月19日
京都御所 蛤御門で長州藩と会津、桑名藩が激突した。
これをきっかけに京都中に戦火は広がった。
会津藩お預かりの新撰組も当然招集された。
それに伴い、新撰組隊士は全員集められた。
もちろん坂本達にも声がかけられた。
新撰組屯所八木邸の庭に続々集まる隊士。
わんわんとのりおが庭に行くと、稽古中だった坂本は先にいた。
あの日以来に久々に会う坂本とわんわん。
坂本は少し気まずそうにしていたが、わんわんは何事もなかった様に接してきた。
「よう」
「お、おう」
「お前の方が早かったんだな」
「うん。ずっとここに居たからね」
「そうなんだ」
「沖田さんに稽古つけてもらってんだ」
「え?」
坂本はこれまでの経緯をわんわんとのりおに話した。
「まだ数日だけど、あの人涼しい顔して鬼みたいな事ばっかり言うんだよ...」
「そうなんだ...でも決めたんだろう?運命は自分自身で決めるって」
「ああ。麻美と恭子のためにもね」
「まぁ頑張りなさい」
わんわんは笑みを浮かべながら言った。
のりおも黙って2人の会話を聞いていた。
「ところでこの後どうなるん?」
「ああ、新撰組は大して参加しないけど、会津と薩摩に追い込まれた残党を、攻める事になる天王山ってとこで」
「なるほどな、んで守屋達もそこに来るのか?」
坂本は首を横に振る。
「多分それは無いと思う。守屋は天才だからね、無駄な事はしないよ、動くなら恐らく...」
「なんだよ」
「久坂玄瑞のところに現れるはずだよ」
「誰それ?」
久坂玄瑞とは長州藩士。
池田屋で殺された吉田稔麿と並ぶ秀才である。
もし明治維新まで生きていれば、確実に官僚になっていたであろうとされている。
だが禁門の変で長州の敗退確実になり、孝明天皇に直接直訴しようと公家の鷹司教に嘆願しに行くが、御所に発砲した事により賊軍になった長州藩の願いなど聞き入れて貰えず、そのまま戦の責任を取る形で自害したのである。
「そんな奴に守屋は何する気なんだよ」
「恐らく助けると思う」
「なんで?そんな事してなんの得があるの?」
「守屋はどこまで知ってるか知らないけど、武市半平太を助けるには、どうしても長州の力が必要になるし、久坂玄瑞が秀才で人望が高いのは有名だから、後の事を考えてるはずだよ」
「長州は負けるんだろ?肩入れしても仕方ないだろ?」
「この後、薩摩と長州が手を結んでひっくり返すんだよ。それは守屋も知ってるはずだよ」
「ふーん。なら久坂のとこに来るかもね」
「ああ」
坂本の読みは当たっていた。
守屋と拓司は戦闘になった時から久坂を守って一緒に戦っていた。
長州藩士から絶大な人望を持ってるため、久坂に死んでもらっては困るである。
流石の守屋も久坂がこの先どうなるかは知らない。
坂本は禁門の変で久坂玄瑞に死んでもらわないと、歴史が変わってしまい困るのである。
特に久坂は秀才の為、禁門の変以降の長州の動きや、明治以降の官僚制度に大きく影響が出てしまう恐れが高い。
わんわんとのりおは難しい話が苦手の為、その辺の指示は坂本に任せる事にした。
そして会津藩より新撰組はしばらく待機となった。
待機を指示されてわんわんは坂本に尋ねた。
「どうするよ?」
「新撰組が正式に指示を受けるのは2日後だけど、久坂は今日死ぬ」
「今日かよ!!」
「うん」
「じゃあ今から行こうよ」
「うーん、守屋と拓司に勝てるかな...」
「今はまだ無理だろうね...」
「どうしようか...」
わんわんは考える。
「んーじゃあ仕掛けるか...」
「そうだな...」
2人は悪巧みを考える。
これを見ていたのりおは思った。
(でたぁぁ悪低コンビの悪巧みだ..ろくな事が起きないぞこりゃ)
坂本とわんわんが打ち合わせを始めた。
のりおは嫌な予感しかしない。
2人は打ち合わせが終わるとすぐ動いた。
わんわんはのりおに家に帰る様に言う。
そして麻美と恭子にも手伝わせるから、どこにも行くなと指示を出す。
坂本は山南のところに行き、鷹司教の邸の場所を
聞いた。
更に数人の隊士を貸して欲しいと頼んだ。
山南は快く快諾した。
のりおは帰り道に確信していた。
絶対にろくな事にならんと...




