第11章 禁門の変
邸に戻ったわんわんはこれまでの経緯を麻美と恭子から聞いた。
わんわんは坂本に深い憤りを感じていた。
怒るのも無理はない。
麻美達を守る立場でありながら、麻美達を危険な目に合わせ、さらに守屋達に助けられる始末。
しかも毎日不真面目な稽古を行った為の報い。
当然の結果である。
この先、自分たちが生き抜く為にも、坂本の知識は絶対に必要なのである。
少しお灸を据えなければならない。
そう思ってる所に坂本が戻ってくる。
えらく傷心してる様子である。
それもそうであろう。
あんな失態をやらかして何とも思ってない方がどうかしている。
しかしわんわんはそんな坂本にお構いなしに罵声を浴びせる。
「テメーどのツラ下げて戻ってきやがった!おう?!」
当然弁解など出来る訳もない。
しかしわんわんは止まらない。
「テメーに言ってたんだよ!口ねーのか!」
坂本は麻美達に深く頭を下げた。
「悪かった...」
「謝って済む問題じゃねーよ!お前もう死んだ方がいいぞ?可哀想で見てらんねーよ!」
何にも反論出来ず、ただ黙って立っている事しかできない。
「なぁって!これはテメーが撒いた種なんだからな!普段から真面目に稽古してこの結果なら文句は言わねーけど、不真面目にやっ結果だろ!」
「わかってるってば!!しつこい!!!」
坂本は自分の不甲斐なさに苛立ち、つい強い口調で言い返してしまった。
この態度にわんわんは激怒する。
坂本に近づき、突然ハイキックを頭部に喰らわした。
坂本は一瞬で横に倒れ込む。
彼は空手の黒帯だった。
麻美と恭子は驚き、すぐわんわんを止めた。
「わんわん暴力はだめだよ!」
坂本は倒れたまま起き上がらない。
このまま起き上がらないで、気絶したふりを決め込もうとしたのだ。
もううんざりだったのだ。
恭子は坂本の体を心配そうに揺する。
「もっさん!しっかり!!大丈夫!?」
体を揺すられながら坂本は考えていた。
(もうほっといてくれ)っと..
だがわんわんは坂本の幼馴染である。
全ての性格を知っている。
「どけ!恭子!」
恭子をどかし坂本の脇めがけて蹴り上げた。
「ぐふっ」
わんわんはわかっていたのだ。
「テメーどうせ気絶したフリをしてんだろう!!?」
坂本のペテンはわんわんには通用しない。
それ以上にわんわんがペテン師なのだ。
咳き込みながら起き上がる。
これにはのりおも恭子も麻美も呆れると同時に、坂本の事をよく熟知してるわんわんにも感心した。
「テメーよくこの状況で演技なんかできるな!」
「もうほっといてくれ...」
「出て行け!テメーの顔なんかもう2度と見たくないわ」
そう言われると居づらくなり邸から出て行った。
麻美は心配になり坂本の後を追った。
恭子はわんわんに尋ねた。
「やりすぎたんじゃない?」
「あいつには死んでもらっちゃ困るんだよ」
「優しく言えばいいのに」
「そんなのあいつの為にならん、ここで乗り切ってもらわないと困るんだよ」
「そうだね。そこまで考えてたんだ」
「って言うと思うか!!!マジでムカついたんだよ!本当死ねば良いのに!!アホくさいからもう寝る」
そう言うと寝室に向かった。
のりおは恭子に言った。
「まぁあれが本音でしょうね」
「ムカついたのが?」
「いや..その前に言った事ですよ」
「あっ...やっぱり?」
「でしょうね。でも大丈夫ですよ」
「なにが?」
「必ず解決しますよ。あの2人中学の時俺らの学年でなんて呼ばれてたか知ってます?」
「え?」
「悪底コンビですよ」
「なにそれ?」
「最悪と最低のコンビって事ですよ」
「あ、ああ...」
どっちが最悪でどっちが最低なのかは何となくわかった恭子だが、聞くのはやめた。
「まぁそれが味方だとどんなに心強い事か...まぁそんな所です。俺も寝ますね」
のりおも寝室に向かった。
坂本が変わるには、自分次第なのである。




