第9章 土佐勤王党
吉田との会談の日。
武市は正装して吉田邸に赴いた。
武市のお供には、平井収二郎、守屋、拓司そしてもう1人吉田の強い要望で龍馬が招かれた。
5人は奥の間に通され吉田を待った。
暫くすると吉田と後藤象二郎が姿を現した。
一同はひれ伏し、吉田が上座に座る。
吉田は全員に頭を上げさせた。
全員の顔を見て、武市に目線を合わせて話しだす。
「おんしが武市半平太か」
武市は大きく返事をした。
「はっ!本日は時間を取って頂き、まっことありがとうございます」
「おんしの建白書は読んじょったき」
「ありがとうございます」
「なぜおんしは攘夷を推し進めるのがじゃ?」
吉田は早速本題に入った。
武市は自分の思いを吉田にぶつけた。
「今、攘夷を行わなければ、日本は異国に国を乗っ取られてしまいます。幕府に任せておいては日本は乗っ取られてしまいますきに」
「ふむ、けんどおんしの言うように、条約を結んじょる国に攘夷を行えば、異国と戦になるろう?勝てると思っちゅうがか?」
武市は大きく頷く。
「勝てますきに」
「どう勝つがじゃ、その根拠を示すがぜよ。幕府は黒船の艦隊を見ただけで、開国をしたがぜよ、たかが一藩で何が出来るがぜよ」
「だから日本全体が攘夷一色になって、異国に立ち向かい、その中心に土佐藩が立つべきながです。それに攘夷は帝や容堂公のお考えでもありますき」
吉田は顔を顰めた。
帝である孝明天皇は大の異国嫌いであり、日本に不利な条約を破棄するように、幕府に命令を出している。
前土佐藩主山内容堂も攘夷論を唱え、安政の大獄で蟄居謹慎になり、弟の豊範に藩主の座を譲ったが、だが謹慎後もその権力は維持していた為事実上の藩主であった。
その2人を兼ね合いに出した武市に吉田は激昂した。
「おんし、帝が攘夷唱えているからって戦を仕掛けろっていつ言ったがか!容堂公からもそがな話し聞いた事がないぜよ!」
「しかし...」
「しかしもへちまもないがぜよ!おんしはなぜもっと先を見ないがじゃ!異国の技術取り入れ、内政の向上、軍事力の強化をする方が先がじゃ!異国との戦はそれからじゃ!」
武市は吉田の気迫に黙り込んでしまった。
吉田は龍馬に問いた。
「坂本おんしはどう思うがぜよ?武市の言っちゅう様に無謀にも異国相手に戦を仕掛ける方が、ええが思っちょるのか?」
「ワシですか?ワシは頭悪いき、日本の行く末なんぞ考えたことありませんき、ただこんままだと吉田様の言う様に、間違いなく日本は異国に勝てませんろう」
武市は龍馬を睨みつけた。
「おんしまで何を言うがか」
龍馬は実際江戸に留学中黒船を見ている。
今の日本の戦力で対抗出来るとは思ってなかった。
「武市さんは黒船を見てないき」
「あんなの見掛け倒しじゃ」
「こんバカたれがぁ!!!」
吉田は武市を恫喝した。
「おまんは本当に何もわかってないのぅ!ええか、向こうが大砲を撃って来ても、こっちの大砲は届かんのじゃぞ」
「ではこのまま吉田様は、異国に日本が乗っ取られてもええ言うがですか?」
吉田は呆れ顔で反論する。
「武市よ、なぜ異国に日本が乗っとられると決めつけるがぜよ?なぜ異国から技術を学ぼうと思わんぜよ?おんしこれがわからないと言うならば、これ以上ワシと話しても無駄やき帰りやぁ」
吉田はそう言うと、席を立ち立ち去ろうとした。
しかし武市は吉田の足の裾を引っ張り、進行を妨たける。
足を引っ張られた吉田は激怒した。
「この無礼者が!!!」
右足を振り解き、武市の右肩を蹴り飛ばした。
武市は勢いよく後ろに吹っ飛び、それを助けるかのように、平井が武市の両肩を掴んだ。
「二度とワシの前に顔を見せるなが!!それとおまんらぁが結成した土佐勤王党は早急に解散せぇ!お前らは武士ではないがぜよ!!!」
吉田は鋭い目付きで恫喝した。
武市は両腕を強く握りしめて、悔しさと吉田への憎悪で胸がいっぱいになり、大声で泣きじゃくった。
これで完全に吉田とは決裂し、一生分かり合える事はないと...武市は吉田東洋を斬ることを決意した。
龍馬は武市が哀れでならなかった。
吉田の言うことは理にかなってる。
勿論守屋も吉田言う事は正論だと感じている。
しかし恩義がある武市を守屋自身で担いで、必ず土佐藩の中心になれるように、心に誓った。




