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運命の絆  作者: ふじわら
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第9章 土佐勤王党

夜になると、守屋達は上士に連れられて、見覚えのある所に連れて行かれる。


店の前に立つ守屋達。


「ここは...」


この間、龍馬に連れてってもらった遊郭であった。


吉田は笑みを浮かべながら言った。


「おまんらこんな所、来た事ないじゃろ」

「あ...はぁ」


うだつの上がらない返答をする守屋。


店に入ると、入り口で主人と遊女達が平伏していた。


龍馬の時とは全然違う。


それもそのはず、土佐藩の最も身分の高い吉田東洋が来店したとなれば、店側の対応も変わって来る。


「吉田様ようこそいらっしゃいました」

「うむ、こん2人が今日の主役じゃき、ええ女付けっちくり」

「かしこまりました」


主人は2人を見てすぐ気がつく。


「この間の坂本様とお見えになっちょった方々ですろう」


それを聞いた吉田は2人に尋ねる。


「なんじゃおんしらぁ来たことあったがか」


守屋は気まずそうに頷く。


「なんじゃ、そいならそうと、言えばよかったきに、なら話は早い、誰にするがか決めるがええき」


守屋は誰でもいいと答え、拓司はもちろんこの間のアイを指さした。


アイはニコリと笑い、拓司は頬をほんのりと赤らめた。


そして、大広場にて宴が開かれた。


吉田をはじめとする上士5人と守屋と拓司。

計8人である。


最初は緊張して少しずつ飲んでいたが、吉田をはじめとする上士達が、次々と酒を注ぎに来る。


守屋は普段はクールな性格で礼儀正しいが、酒が入ると人が変わる。


酒が進むにつれて、顔が真っ赤になり様子が変わって来る。


そんな守屋に吉田が語りかける。


「おまんら初めて、おうた時、妙な格好しちょったじゃろ。あの妙な格好はなんじゃ」

「あれですかぁ〜あれは未来の世界の格好でぇ〜す」


本来ならこんな事は絶対言わないのだが、かなり酔ってしまい、本当のことを言ってしまった。



本来なら拓司が止めるところであるが、拓司は拓司でアイに夢中になり、全く話を聞いてない。


この守屋の発言がこの先の、土佐藩の運命を大きく変える事になる。


吉田は興味津々に守屋に尋ねる。


「ほう...未来とな...その未来とはなんじゃ」


目を真っ赤にして、語りだす守屋。


「未来というのは、今より140年先の世界でぇ〜す」


これには吉田は驚いた。


他の上士はざれ事だと思い聞き流し、遊女に夢中にである。



しかし吉田は真剣な赴きで聞く。


「するとおまんらぁは、先の世界から来ちょったって事がか」


「そうですよ〜えへへ」


完全に泥酔してる守屋。


「何しに来たがじゃ?」

「何しにも何も知らぬ間に、この世界に来たんですよ〜」


吉田は、守屋達居た未来の話を事細かく尋ねた。


守屋も酔った勢いで全て吉田に話してしまった。


酔ってるとは言え、守屋は天才である。

現代の政治経済を事細く話してしまった。


吉田は守屋の話を聞いて驚愕した。


にわか信じられない話しではあるが、今まで自分が考えた事ない、新しい経済の仕組みに正直驚いている。


攘夷か開国かと悩んでる吉田を開国論者に変えてしまうきっかけになってしまったのである。



そのせいで、この後、攘夷を主張する武市の土佐勤王党と衝突してしまう事となる。


吉田は守屋の話を鵜呑みにしていた。

普通なら信じ難いこの話なのだが、吉田は余りにもリアルな守屋の話に疑いの目を持たなかった。


「おまんの話が本当のなら、土佐藩はどうなるがじゃ?」

「わかりましぇんーー」

「なんじゃきぃ?わからんじゃと...」

「土佐の事はわかりませんが、この先は、薩摩と長州が幕府を倒すのでありますぅぅぅ」


これには吉田は驚いた。


「薩摩と長州じゃとぉぉぉなぜじゃゃ薩摩は幕府寄りじゃないかぇ」


守屋は目が虚になりながら答える。

「そんな事知らんですけど、あっっっ確か龍馬さんが薩長同盟の仲立ちするんだった」


吉田は興奮して守屋に詰め寄る。

「龍馬?誰じゃそれは」

「誰って土佐の坂本龍馬さんですよぉぉ」

「なんじゃと土佐の人間じゃとぉぉぉそがな人物わしゃ知らんきぃ」

「下士ですからねぇぇ」

「なんじゃちぃ下士じゃとぉぉ」


この守屋の発言で吉田は、龍馬の身辺を調べる事となる。


もちろんこの頃の龍馬を調べたところで、何もでやしない。


時代の先を知ってるこの2人...

吉田は自分の側に置いときたくなった。


「おまんらぁ2人共、ワシに仕えて見る気はないがか、上士に取り立てるきにぃ」


守屋は手を横に振って答える。


「いやいやぁ〜いいですいいです〜」

「なんでじゃ」

「なんでじゃって言われても...俺らは今のままで十分なんですぅぅ」


そう言うと、守屋は畳にバタンと倒れ込み、寝てしまった。


完全に泥酔していた。


吉田はため息を吐き、守屋を見ながら考えていた。

もしこの男が言ってる事が本当なら、土佐は薩長に一歩遅れてしまう事になる。



薩長に遅れを取らないようにするには、どうしても守屋達の力が必要だと感じた。



守屋は泥酔してイビキをかきながら眠っている。


拓司の方は酔っていたが、違う意味でも酔っていた。


遊女のアイにデレデレであった。


アイは拓司に寄りかかりながらお酌をしていた。


拓司は小顔で笑顔のアイに完全に心を奪われた。


アイは顔を更に近づけ耳元に囁いた。


「今日は朝まで居てはるんですろう」


拓司の顔は、酒で赤いのか、照れて赤いのかわからないくらい赤くなっていた。


2人の距離感を見た吉田は、笑いながら拓司に言った。


「おまんは、そん女が気に入ったがじゃ?今日は貸切じゃき、好きにしてええぞね」


吉田の話を聞いて、アイは無言で立ち上がり、拓司の肩を軽く叩き、別の部屋に誘った。


拓司はお猪口に入ってる酒を一気に飲み干して、緊張した赴きで後をついて行った。



吉田の宴は夜遅くまで続き、守屋以外は遊女と朝を迎える事となった。


朝になり、目が覚める守屋だったが、だいぶ飲みすぎた為、頭が割れそうになるくらい痛い。


昨夜の事は全く覚えてない。


そして誰もいない。


暫くボケっとしていると、拓司が部屋に入って来る。


「健大丈夫か」

「ああ。全然覚えてないけど、俺どうしてた」

「さーわからないけど、吉田さんとなんか話してたよ」

「全く覚えてない...ところで、お前どこにいたの?」


拓司は、頭をかきながら誤魔化した。


「いや〜他の部屋で潰れてて」

「ふーん」


部屋に昨夜一緒に飲んでた上士が入って来る。


「起きちょっとがか」


上士は吉田が朝食を用意してくれてると言う。


2人はそのまま、吉田の所に向かう。


廊下を歩いてる時に突然守屋は立ち止まり、拓司にボソッと呟く。

「どうした」

「お前顔中の口紅ぽいの取れよ」

「え?」

拓司は手で顔を拭った。

手の平を見ると、口紅なのか赤くなっていた。


守屋は笑いながら再び歩きだし、吉田の所に向かった。


部屋に入ると吉田が座り、2人分の膳が用意されていた。


「おーおはようさん、まぁ座って食いや」


2人は、お辞儀をして座って、朝食を食べだした。


「昨夜は実に楽しかったのぅ」


守屋は困惑しながら吉田に聞いた。

「すいません、全く覚えてなくて...」

「結構飲んじょったにゃぁ」

「何か失礼な事しました」

「うんにゃ、けんど...おんしらぁ、先の時代から来ちょったんじゃろ」

「え?」


2人は驚き戸惑いながら、守屋は尋ねた。


「そ、そんな事言いましたっけ」

「言っちょったきに」


2人は気まずそうに顔を見合わせた。


吉田は動揺してる2人を見て大笑いした。


「心配すんなき、誰にも口外しないぜよ」

「信じてるんですか」

「信じるもなんも、おんしらぁの最初に会った時の格好や、昨夜の話しを聞いちょったら、信じてしまうき」

「すいません、黙っていてくれると、ありがたいです」


吉田は笑みを浮かべながら頷いた。


「どうじゃ、昨夜もゆぅたのじゃが、おまんらぁ2人共ワシに仕えてみんろうか」

「え...」


2人は驚いたが、守屋は2年も世話になった、武市道場の皆の事を思うとそれはできない。



「すいません、それはできません、見ず知らずの俺らをここまで面倒見てくれた、人達を裏切れません」


「下士...いや武市道場の人間か」

「そうです」

「そうじゃのぅ、下士から上士になったって聞いたら、気まずいのぅ」

「はぁ...」

「よし、そいじゃ、定期的にワシの屋敷に来るがじゃ、そいならええじゃろ」


流石にこの提案は断れなかった。


2人は快諾し、朝食を取って吉田に深々と頭を下げて、中平の家に帰って行った。


ひょんな事から吉田東洋に気に入られた2人が、上士と下士の事件に大きく関わって来る事になるとは、この時思いもしなかったのである。


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