第9章 土佐勤王党
武市は守屋と拓司に剣術の腕前を聞いたが、学校の授業で剣道をかじったくらいである。
2人は横に首を振った。
すると武市はこれから毎日道場に通うように言う。
守屋達には選択権はないのだ。
言われるがままにする事にした。
こうして守屋達の土佐での生活が始まった。
2人は中平に連れられて、中平の邸に向かった。
途中数人の上士に出会ったが、ちゃんと端に寄り、言われた通りにしたのだが、やはりなんせ目立つ為、ジロジロと見らられる。
守屋は早く着替えないまずいと思い、中平に服を貸してもらえないか頼んだ。
中平も2人の格好が目立つ事は、この帰り道でよくわかった。
帰って合う服を探してみると、快く快諾してくれた。
邸に着くと1人で住む様な広さではない。
部屋は5部屋ほどあると言う。
とりあえず8畳の部屋を借り入れた。
部屋で2人きりになり守屋が拓司に今後の相談をした。
「なぁ拓司、恐らくここは幕末の日本だと思う」
「え?」
「わからんけど、タイムリープしたんじゃないかと思う」
「そんな映画みたいなことあるの?」
「信じられないけど、そうじゃないと説明がつかなくない?」
「まぁそうだけど...」
拓司はにわか信じられなかった。
確かに普通に考えればそうである。
しかし現実に、自分らは周りから見ればかなり浮いてる。
拓司は守屋に今後どうするか尋ねる。
「まぁもっさんほどの知識がある訳じゃないから、あれだけど、教科書の通りだと、結構エグい展開もあると思う」
「エグい展開?」
「あの坂本龍馬って人が幕末の龍馬なら暗殺される。後は池田屋事件とか禁門の変、戊辰戦争とかかな」
「それって土佐も関係するの?」
「んーわからないけど、長州や薩摩中心だからね」
「なら大丈夫だね」
「んーどうだろう、もっさんが居れば興奮してそう」
「そだね。もっさん達も居るのかな」
「わからんけど、探さないと、俺らも戻れないじゃん」
2人話してると部屋に中平が服を持ってきてくれた。
「これ着てみぃ」
2人は礼を言って服を着た。
運よくサイズはピッタリであった。
2人の幕末での生活が始まったのである。
守屋達は土佐に来て、半年の月日が流れていた。
守屋達の生活は早朝、日が出たら畑に向かい中平の手伝い、朝食後は家の清掃、午後から武市道場にて剣術の修行、夜は武市の門下生が集まり、武市の講義が行われ、たまに夜門下生達と酒場に飲みに行くこともある。
これが大体の1日の流れである。
武市の講義が終わり、守屋と拓司と中平は帰り支度をし、道場を後にした。
その帰り道に、龍馬に出会う。
「おお、おんしらぁ久しぶりじゃのぅ」
守屋と拓司は軽く会釈した。
「そうじゃ、おんしらぁとは、1度ゆっくり話したいと思っちょったき、これから飲みに行かんか」
3人は、話し合い少しならって事で龍馬と飲みに行く事にした。
龍馬の家は郷士ではあるが、本家が才谷屋と言う商人の家で、坂本家はそこから財産を分与してもらい、かなり裕福な家であった。
余談ではあるが、この後、薩摩と長州の仲を奔走する時、正体を隠すために、偽名を使った名前が才谷梅太郎である。
龍馬は3人を遊女が居る飲み屋に連れて行く。
現代で言う、高級クラブやキャバクラみたいな所である。
4人にそれぞれ遊女が付いた。
全員美人揃いである。
いつの時代も人間の欲には女性がつき物である。
龍馬以外は初めて来たので、かなり緊張していた。
拓司に付いた遊女が、お酒を持ちニコリと笑った。
「どうぞ」
拓司は一目惚れした。
おチョコを持ち、緊張して手が震えていた。
震えた手を見た遊女が拓司をじっと見つめた。
「手が震えちょるき、どげんしたがかぁ」
拓司は心臓が爆発しそうだった。
(ヤバい...可愛いすぎる)
拓司は一気に酒を飲み干す。
それを見た龍馬は驚き笑った。
「おお、拓司君おんしすごいのぅ」
遊女は更に拓司にお酒を注いだ。
それを再び一気に飲み干す。
調子に乗った拓司は、これを繰り返した。
完全に酔っ払ってしまった。
拓司はそんな酒が強い方ではない。
しかし遊女に勧められ、男としてかっこ悪いところは見せられない。
この緊張感を酒で誤魔化そうとした結果、拓司は数分で潰れてしまった。
拓司は遊女の膝の上に眠ってしまった。
遊女は嫌がりもせずに、拓司の頭を優しく撫でた。
時間が経つにつれて、それぞれ酒が回り守屋がかなり酔ってしまった。
守屋は割と静かなタイプであるが、酒が入ると陽気になる。
しかも酒は強い方で、飲めば飲むほど、かなりテンション上がり、泥酔状態になっていた。
その様子を見ていた中平は守屋を止めた。
「お、おい守屋君飲み過ぎじゃき、もう飲むの辞めぇ」
しかし守屋は泥酔しているため、聞く耳持たない。
「ギャハハなんだよ中平さんも、そんなつまらん事言わないで、飲んで飲んでぇ」
龍馬は大声で笑った。
「チャチャチャ、愉快じゃのぅおまんら、よかよか気の済むまで飲むがええき」
中平は申し訳なさそうに龍馬に謝罪する。
「じゃき、ええきええき。ワシはそろそろ帰るき」
龍馬は自分に付いてる遊女をじっと見つめる。
「おんしも一緒に帰るかぇ」
遊女は少し頬を赤らめながら小さく頷く。
龍馬は持ち金全てを、中平に預けた。
「これで勘定しいやぁ、残った銭は今度返してくれればええき」
中平は立ち上がり、大きく頭を下げた。
「ほいたらな」
しかし守屋は酔っ払て龍馬に絡んだ。
「おー龍馬さん帰るんですかぁぁぁ」
「ほうじゃ、これからこの娘と...チャチャチャ」
「えー。このどすけべがぁぁ、これが薩長同盟の仲立ちした坂本龍馬の正体かぁぁ」
「ん〜何を言っちょるか、薩長同盟じゃと」
酔っ払って余計な事を言う守屋。
「そうですよ。教科書に載ってますもん」
「教科書?なんじゃちぃそれは」
「教科書は教科書ですぅぅ」
中平は龍馬に謝罪した。
「龍馬さん、すいませんき、だいぶ酔っちょりますき、気にせず帰ってつかんさい」
龍馬は中平の言う通り気にしつつも、帰る事にした。
中平は余程疲れたのか、ため息をついた。
そして帰るように促した。
しかし守屋は中平に預けた龍馬の銭袋を、勝手に開けた。
中には10両近く入っていた。
それを見た守屋は暴走する。
「うおおおおおお、小判だ小判だぁぁ、もっと女の子呼んでぇぇ」
中平は守屋から銭袋を取り上げる。
「何を言っちょるがぁ余った銭は龍馬さんに返すき」
「何を言うんですかぁぁ、全部使えばいいんですよぉぉ後のことは後から後悔すればいいんですよぉぉ」
それを聞いた拓司ムクっと起きた。
「そうだそうだぁぁ使ってしまえぇぇ」
「おんしらぁあほかっダメじゃ」
守屋は急に真顔になった。
「中平さんここで全部使わないと龍馬さんに失礼ですよ。龍馬さんは俺らの器を試してると思いますよ」
「器じゃちぃ?」
「そうです。私たちの生まれた故郷では、1度渡した銭返すのは失礼に値すると言われてます。我々がそんな失礼なことする人間か試してるんですよ」
「そがなもんなんか」
「そうですよ」
中平は悩んでいた。
学がない分、世の中の事はよくわからないので、悩んでいた。
それっぽい事を言う守屋であったが、言ってる事は最低である。
悩んだ中平を見て更に詰め寄る守屋。
「絶対に褒められます。気持ちよく全部使ったなぁって」
「そがなもんかのぅ」
「そがなもんです」
「けったいな土佐弁使うなき」
「へへへ」
中平は悩んだ結果、守屋の言う通りにする事にした。
「よしぃぃそうしようかぁ」
「そうしましょうぅ、よしもっと女の子と酒だぁぁぁ」
こうして守屋達は、10両全て一晩で飛ばしたのである。
馬鹿である。




