第7章 池田屋事件その後
坂本達の会話を聞いてしまった男は、驚愕した。
慌てて自分の部屋に戻った。
男は座り込み腕を組んで、目を瞑った。
額からは汗が流れ、心臓の音が自分でもわかるくらい、早い鼓動になっていた。
そして坂本達の、今までの言動を思い出していた。
原田が言ってた為三郎の名前を知っていた事。
山南総長と呼んだ事。
監察の山崎を知ってた事。
古高俊太郎を知ってた事。
池田屋か四国屋と言ってたのに、突然池田屋
と言い出した事。
そしてあの容姿。
彼らが先の時代から来て知ってるとしたら....。
全て辻褄が合う。
だが、それと同時に男は、坂本達を不憫に感じた。
生まれた時代から、過去に戻ってしまった事。
こんな理不尽な事はない。
男はその事を考えると、胸が締め付けられる思いだった。
何とか力になりたいとそう考えたのである。
男は山南敬介だった。
そして、部屋に隊士が訪ねて来る。
「失礼します。山南先生、局長がお呼びです」
「わかりました。」
そう言うと山南は近藤の元に向かった。
一方、坂本達はお風呂から上がり、部屋で寛いでいた。
そして山南同様、近藤に呼ばれ、部屋を後にした。
近藤の元へ行くと、殆どの幹部が勢揃いしていた。
坂本達が部屋の隅に座るのを確認し、話を始めた。
「諸君、今回の事ご苦労であった。藤堂君は額に傷を負ったが、命に別状はないそうだ」
それを聞いた全員は安堵した。
だが皆が気になってるのは、沖田の事である。
沖田は斬り合いの中、吐血している。
原田は沖田の容体を確認した。
「局長。総司はどうなったんだ」
近藤は目を瞑り、しばし黙りこんだ後静かに口を開いた。
「総司は労咳だ」
「労咳...」
それを聞いた皆は愕然とした。
労咳とは、今の肺結核みたいなもの、現代の医学では十分治る病気だが、幕末では不治の病とされてる。
「総司はもう戦う事はできない。静かに養生しなくてはならない」
こうなる事は知ってる坂本だったが、やはりその場に居ると、皆の悲しむ顔を見ると辛い思いになる。
土方は一呼吸置いて、坂本達に目をやり話し出した。
「君たちの言ってる事は、正しかったな、約束は守ってやる」
坂本は会釈をし、お礼の言葉を言った。
「ありがとうございます」
ここでわんわんが土方に、自分達の剣術の稽古を付けてもらえる様に嘆願した。
これには、山南が快く了解してくれた。
更に山南は近藤に提案した。
「局長、坂本君達の世話を全て、それがしに任せては、もらえないでしょうか」
「ふむ...」
近藤は悩んでいる様子だったが土方が進言する。
「局長、良いではないか」
「わかった。全て山南君に任せよう」
坂本達は一言お礼を言った。
「ありがとうございます」
「住む場所はすぐ探しますので、それまでは、先ほどまでの、部屋を使ってください」
「了解しました。ご足労おかけします」
坂本達は、何とか新撰組の世話になる事になった。




