第6章 池田屋騒動
「ほいじゃ、半次郎さん後は任せたきぃ」
「任せてたもんせ」
そう一言言うと、守屋と拓司はこの場から立ち去ろうとしたが、守屋はぴたりと足を止めて、こちらを振り返る。
「これは独り言やきぃ、明治は土佐の人間で動かすきぃ初代総理は、武市半平太ぜよ」
これは坂本達にしかわからないことである。
歴史を変えると、そう宣言した様なものだった。
そう言い残すと、2人はこの場から去った。
2人が立ち去ると、中村は新撰組に言い放つ。
「さぁどけんするちぃ」
原田はもちろん引くつもりはない。
「薩摩だろうがなんだろうが、新撰組の邪魔をするなら、斬る」
中村は嘲笑う。
「おまんさぁらが、束になってかかって来ても、
おいどん達、薩摩隼人の相手になりもはん」
「御託はいい。来ないならこっちからいくぞ」
原田と井上は挑発に乗ったのか、同時に中村達に斬りかかろうとしたその時だった。
戻ってこない原田達の様子を見に来た、土方や谷、武田らが合流した。
土方はさきの戦で殺気だっていたのか、すぐ刀を抜いた
「貴様ら何してやがる」
「土方さん、邪魔しないでくれ」
原田は土方に睨みつけた。
いくら新撰組の副長でも、男と男の真剣勝負に割って入る事は誰であろうと許されないのである。
しかし土方と聞き中村は反応した。
「ほう、おはんが鬼の副長土方さぁでもんそかぁ」
「薩摩か」
「うんにゃ、薩摩は関係なかでごわす」
井上は土方に囁いた。
「人斬り半次郎です」
土方は鼻で笑った。
「ふっ。お前があの人斬り半次郎か」
「新撰組の副長に名前を、覚えてもらっとるとは、光栄でごわっとな」
「あんたら、会津と薩摩は手を組んでる事、忘れたのか?」
中村は不敵に笑みをこぼす。
「さっきから言ってるが、こんこつは、薩摩とは関係なか」
土方と中村の会話を、苛立ちながら原田が割って入る。
「副長こいつは俺の獲物だ。どいててくれ」
しかし、土方はそれを許さなかった。
「駄目だ。新撰組の隊服を着ながら、薩摩と斬り合う訳には行かない」
原田は土方の言葉に激怒した。
「副長何言ってんだぁ。うちの連中がもう何人も斬られてんだぞぉ」
「そんなの見ればわかる」
「だったらぁ」
「原田君、君の気持ちは痛いほどわかる、だか堪えてくれ。頼む」
土方は原田に頭を下げ懇願した。
鬼の副長に頭を下げられたら聞かない訳にはいかない。
原田達は刀を収めた。
それを見てた中村は不敵な笑みを溢す。
「ふっ。そいが懸命じゃとな。弱腰の相手しても仕方ないごって」
土方は冷静に振る舞っていたが、内心は怒りに満ちていた。
中村を睨みつけ、その場に居た全員が、凍りつくほどの殺意で、中村に激昂した。
「弱腰だと?貴様らは、必ず新撰組の手で、葬ってやるからなぁぁ」
中村は全身から冷汗が出た。
(オイが臆してるじゃと...)
今までこんな殺意を持った、人間を見た事はなかった。
流石が鬼の副長と呼ばれるだけの事はある。
だが、男の闘争本能なのか、この男と戦ってみたいと思っていた。
しかし、これ以上やり合うと、薩摩を巻き込む恐れがある為、引く事を決断する。
「わかりもした。そん言葉楽しみにしてもんそ」
そう言い残すと中村達は、闇の中に消えてった。
こうして、壮絶な池田屋騒動が終わった。




