第16章 それぞれの道
大雨が辺り一面降り注ぐ中、2人は相手の目を瞬きせずに見ている。
少しでも目を逸らせばその隙に、襲いかかって来る勢いである。
拓司の殺気は凄さましく、いつでも飛びかかって来てもおかしくないほどであった。
その殺気は女性の麻美にも感じられるほどであった。
拓司の殺気を感じのりおは笑った。
「なにがおかしいながじゃ!」
「お前の殺気も大した事ないなぁって思って」
「なんじゃと!!」
拓司は激怒し、間合いを詰めのりおに斬りかかる。
のりおは拓司が刀を斬り出す瞬間だけ動いて、ギリギリのところでかわす。
剣術とは簡単に言えば、スピードと力である。
拓司は力より、スピードに長けていた。
しかし、いくら攻めてものりおは紙一重でかわし拓司を苛立たせていた。
それを見守る坂本と麻美。
「たくちゃんの攻撃全く当たらないねぇ」
「ああ。拓司のスピードは大したもんだ。だがそれ以上にのりお君が全て見切って動いてるからやばい」
「なんでのりお君は攻撃しないの?」
「さぁ?」
拓司の苛立ちは限界にきていた。
「くそぉおおお!なぜ当たらないぜよ!!」
「お前は殺気が出すぎなんだよ。ある程度の腕なら、お前の殺気に臆して斬ってきたかもしれないけど、俺にはそれは通用しないよ」
「なんじゃと!!」
「しょうがない...教えてやるよ。確かわんさんが高杉さんにブチ切れた時、こんな感じだったかな...」
そう言うとのりおは目を瞑った。
そして次の瞬間。
のりおから夥しいほどの殺気が出てくる。
「ぐっっっ!!」
坂本ものりおの殺気に苦笑いをする。
「こ、こいつ...」
「何これのりお君が怖い」
その殺気は麻美にもわかるほどだった。
麻美は恐怖で腰を抜かした。
拓司は恐怖で全身から冷や汗が出てるのを感じた。
まさにあの時わんわんが高杉に出した殺気と同じだった。
「こ、こんな馬鹿な事があるわけないき!!」
「馬鹿なことか...じゃあその上をみせてやるよ」
「なんじゃと!!」
のりおは殺気を消した。
そして...
目を瞑った。
暫くすると坂本が気がつく。
「マジかよこいつ...」
「ど、どうしたの?」
「沖田さんが俺に教えてくれた事をやってる」
「どう言う事?」
「無の境地だよ」
「無?」
「ああ。殺気が全くない状態だよ」
「え?でもさっきの方が怖かったよ」
坂本は苦笑いをしながら麻美を見る。
「何も感じない方が怖いよ、いつ攻撃してくるかわからないし、それよりも相手が何倍の大きさに見えるんだよ。俺の腕触ってみな」
「え?」
麻美は言われるがまま坂本の腕を掴んだ。
「震えてるじゃん」
「うん。本能からか知らないけど、こんな離れている俺ですら今ののりおが怖い」
「の、のりおくんってそんな強くなってんだ」
「達人の域だよ。潜在能力が昔から高かったけど、幕末に来て開化されたな、こえーぞ今のアイツ」
「もうあんたら馬鹿に出来ないね」
「俺はな。でもそれでもわんわんには勝てないと思う」
「なになに?わんわんもそんな強いの?」
麻美を見て頷き笑う。
「いくらのりお君が腕をあげても、本気の死合になったらわんわんが勝つと思うよ」
「それはのりお君もそうだけど俺らが1番わかってるやん」
「まぁわんわんはいろんな意味で負けた事ないからね...」
「だろ?ある意味アイツが1番最強だよ」
坂本の言う通り、拓司は体全体恐怖で震えていた。
のりおから何も感じない上、のりおが何倍もの大きさに感じる。
どこを攻めても勝てる気がしなかった。
「来ないのか?」
「うるさいき!!!」
「そうかなら俺からいくよ」
のりおは一気に間合いに詰めて、拓司の腹部に膝を入れた。
「うぐっっ」
「さっきのお返しだよ」
拓司は地に両膝をつけて、腹部を押さえた。
のりおは刀の剣先を拓司のノド辺りに近づけた。
「今のままじゃお前は俺には勝てない」
「うるさい!!うるさいき!」
「恐怖で体が震えて何を言ってんだ」
その時だった。
村人達が騒がせた。
岡田以蔵が首を刎ねられたのだ。
「くそおおおおおおおお!!」
拓司は拳で地面を何度も殴った。
「拓司もういい加減俺らと来いよ」
「何を今更言うがぜよ!!!おまんらに俺らの気持ちがわかってたまるか!!!」
「だけどな...お前このまま行ったら待ってるは死だけだぞ?」
「そんなもん怖くない!!!」
「嘘つけ、さっき恐怖で震えてるいたじゃないか」
坂本はのりおに近づき肩に手を置いた。
「のりお君まぁ今は何言っても無駄だよ、とりあえず止めれたんだから行こう。拓司お前もう少しゆっくり考えろよ。いつでも待ってるからさ」
「うるさいうるさい!!必ず殺してやるからな!!!」
拓司は大粒の涙を流しながら悔しがった。
麻美はそんな拓司を見て哀れんだ。
「たくちゃん待ってるからね」
3人はそう言うと拓司の元を去った。
さっきまで降っていた雨が止み、今度は辺りに一面太陽の光でいっぱいになった。
岡田以蔵享年27歳。




