第15章 祇園大騒動
わんわんと高杉は睨みあったままだった。
高杉は銃口を、わんわんに向けたままだが、銃声が聞こえても眉一つ動かさなかった。
皆、銃声が聞こえた方に目を向けると、天井に向けて撃った男がいた。
坂本龍馬である。
龍馬は笑みを浮かべた。
「高杉さんやめぇや、高杉さんの負けじゃき」
高杉はわんわんを睨みつけていたが、龍馬のこの一言で銃を下げ笑った。
「ふっ。参ったな〜大した男じゃ」
高杉は銃を懐に入れた。
「こんな奴は初めてじゃ」
「本当じゃ、伊藤君と井上君はとんでもない男を連れてきたもんじゃき」
この状況が収まりつつあったのだが...
この後、ここに居る全員が凍りつく事になる。
「おい!勝手に終わらしてんじゃねーよ」
わんわんから、とてつもない殺気が滲み出る感じがした。
「死ぬほど嫌いなんだよ!銃を突きつけて自分が有利な立場を利用して、大物ぶりやがって!何様だ!」
殺気全開のわんわんの発言で、何も言い返せなくなる高杉晋作。
それどころか冷や汗が止まらなくなる。
のりおもこれ以上、煽るのは危険だと思って止めようとしたが、わんわんの凄さましい殺気に恐怖し声もだせなくなる。
のりお同様、付き合いが長い守屋、拓司もこんなわんわんを見た事がない。
幕末という動乱で男としての本能に火がついたのか、突然覚醒した。
「そんな物で俺を殺せるなら試して見ろよ!!」
わんわんは刀に手をかけ立ち上がった。
高杉は殺気に満ちたわんわんの大きさが、2倍ほどの大きさに感じた。
(な、なんじゃこいつ...こんな奴初めてじゃ...)
この場に立っているのがやっとなくらいである。
わんわんは今にも斬りかかりそうな勢いである。
「こりゃあかんぜよ。高杉さんしっかり謝らんとワシら全員斬られるがぜよ」
龍馬は高杉を宥めた。
龍馬自身もわんわんの殺気で大量の冷や汗をかいていた。
ここで高杉が折れなければ、本当に斬り合いになると感じていた。
そして恐らく全員、わんわんに斬り殺されると...
高杉も龍馬と同じ事を感じ、プライドを捨て謝罪した。
「うむ。すまなかった」
素直に謝罪した高杉に対して、徐々に怒りを収めるわんわん。
喧嘩は、先に激昂した方が有利だと、今までの経験でわんわんはわかっていた。
もし最初からお互い刀を抜き、戦闘モードに入っていれば、同じ結果ではなかったかもしれない。
今回はわんわんの1人勝ちであった。
「わかりました」
何事もなかったかの様に自分の席に座った。
ようやく収まりがついた。
龍馬は苦笑いをした。
「伊藤君、さっきの撤回じゃ、おんしらぁとんでもない化け物を連れて来たがぜよ」
わんわん小さな笑みを浮かべた。
「ふふっ化け物って...酒が入ってたからですよ」
高杉は大きな声で笑った。
「いや〜気に入った。僕は君が気に入ったぞ」
この様子を見ていた守屋と拓司は、拳を握りしめ悔しそうに無言で部屋を出て行った。
「おい、どこに行くぜよ!」
龍馬は大声で2人を呼び止めた。
だが2人が戻ることはなかった。
「ちょっとすいません」
わんわんはのりおに目で合図をし、2人を追いかけた。




