第3章 わんわんの賭け
襖が開き男が部屋に入ってくる。
そして険しい顔で坂本達に告げる。
「これから局長がお会いになってくださる。ついて来い」
立ち上がると恭子が男にちょっと待って欲しいと嘆願する。
男は無言で頷き了承した。
「ねぇ?あれやらない?」
「あれって?」
そんな恭子に頬を赤らめながら坂本が答える。
「ば、ばかこんな所でダメだよ…で、でも恭子が望むなら…」
坂本は唇を恭子に近づけた。
それを見た麻美は坂本の頭を叩いた。
「ばかじゃないの?」
「あはは…」
呆れ笑いをする恭子。
「そうじゃなくて小学校の時やってたクラブチームの円陣だよ」
「ああ〜あれか」
坂本達は小学校低学年の時、サッカーのクラブチームに所属していた。大事な試合前にチームの結束を固めるため、円陣を組んでいた。
「覚えてるかな」
坂本は顔を顰めた。
「気合い入れるためやるか」
そう言うと坂本達は肩を組んで円陣になった。
そして坂本が大声で気合を入れた。
「いくぜ!!」
だが誰も何も言わない。
「なんで言わないんだよ」
「違くね?」
わんわんが間違いを指摘する。
「え?こうじゃなかったっけ?」
全員首を横に振る。
「じゃあのりおくんやってよ」
ちょっと苛立ちながら坂本はのりおにやる様に指示をする。
「いや僕こうゆうのやるタイプじゃないんで…」
「はぁ?ならわんわ…」
「ことわる!!」
言いかけた坂本に拒否するわんわん。
「なんなんだよ!なら麻美か恭子がやれよ!恭子が言い出しっぺなんだからさ」
坂本の言い方に麻美は反論する。
「そんな言い方しなくて良くない?キョーは良かれと思って言っただけじゃん!可哀想にキョー泣いちゃったじゃん」
いきなりフラれキョトンとしてる恭子だったが、すぐ様手を目にやり声を出して嘘泣きした
「え〜ん。え〜ん。」
「嫌おせーし、しかも泣いてねーし」
この後も坂本達は、なすり付けあい、エキサイティングして収集がつかなくなってしまった
それを傍観してた男が困惑しながら恐る恐る言う。
「あ、あのう…」
全員同時に「なんだよ!」と隊士にいきり立つ。
坂本達の結束は溝が深まっただけだった。
「そろそろよろしいですか?」
我にかえり坂本が申し訳なさそうに返事をする。
「すみません」
そして男に連れ添われて違う部屋に通された。
さっきの部屋とは少し大きい部屋だった。
坂本とわんわんが2人で座らさせられ、その後ろに残りの3人が座った。
連れてこられた男に局長が来たら頭を伏せる事と、声がかかるまでは決して頭を上げない様に念を押された。
時代劇で見るやつだと全員思った。
しばらく待たされ、屯所に連れてきた原田ともう1人、強面風の男が入って来た。
強面男が原田に言う。
「こいつらか?原田が連れてきた奴らは」
「ああ」
「確かに妙な成りしてるな」
「そうだろ?」
2人は喋りながら部屋の隅に方に座る。
2人の会話を聞いてた坂本は「原田」の名前を聞いて確信した。
やはり自分達を連れて来たのは原田左之助かと…そうなるともう1人の強面風の男が誰なのか気になってくる。
そこに突然1匹の茶色猫が入ってくる。
猫は麻美に近づいてくる。
麻美も猫が好きなので、手を伸ばし撫でようとしたが、猫は麻美に「シャー!」と威嚇して麻美の手を引っ掻た。
そして、そのまま恭子の元へ行き、首を当て気持ちよさそうにし、その場に寝転んだ。
手を痛そうにしながら麻美は心の中で呟いた。
(クソ猫め)
そしてもう1人部屋に入って来る。
「姫丸知りませんか?」
美形の顔つきで身長も高いこの男は何かを探してる感じだった。
原田は恭子に指を差し、すぐ様答える。
「ああ、あのお嬢ちゃんのところさ」
原田の指す方向を見て、猫を見つけ嬉しそうな顔をする男。
「ごめんなさいね。それ僕の猫なんです。」
そう言うと猫を抱えて男は笑顔で恭子に言う、恭子は少し困惑しつつも返事をする。
「あ...はい」
更に男は恭子を見ながら語りかける。
「でもすごいな初対面なのにいきなり懐くなんて」
無邪気に話す男に強面の男が問いかける。
「おい総司具合良くなったのか?まだ顔色悪いぞ」
「永倉さんは顔がデカイですよ」
「うるさい生まれつきだ」
このたわいもない会話にやはり反応したのが坂本である。
(沖田...総司に永倉新八かよ!!やばいよーやばいよーすげーよ。母ちゃん)
坂本からすればここは芸能事務所みたいなものだった。
そして廊下に居た隊士が叫んだ。
「局長と副長がいらっしゃいました!」
坂本達は正念場を迎えた。




