第15章 祇園大騒動
坂本と藤堂は部屋に入り、大きくため息をついた。
「ふぅ〜やばかった」
藤堂からすれば当然である。
偶然とはいえ、長州藩士と、しかも過激派の筆頭である高杉晋作と一緒に居たわけであるから、本来なら殺しあってもおかしくない状況である。
しかも藤堂は新撰組隊長である、本来なら捕縛しなければならない。
これが近藤や土方に知られたら、タダでは済まないのである。
それを知った上で坂本は藤堂をこちらに招いたのだ。
「坂本さんのお陰で助かりましたよ」
「いやいやいくら藤堂さんでも、あの人数相手にするのは厳しいですしね」
「面目ない」
藤堂は悔しそうな表情をした。
「あの高杉って人は剣術より、単銃を潜ませてますからね。それに一緒に居た人も同じく銃を持ってるし、小千葉道場で塾頭をやってました」
「え?小千葉ってあの北辰一刀流の?」
「ええ」
藤堂は坂本に不思議そうに尋ねた。
「なぜそんな詳しいのです?」
「え?いやまぁ...」
坂本が気まずくしてると、丁度そこにお酒を持って、麻美と恭子が部屋に入ってくる。
「お待たせ〜」
「おそいよ」
麻美は坂本の横に座り、恭子は藤堂の横に座った。
「藤堂さん今日は飲みましょう」
「そうですね」
「お前らも飲みなよ」
「ありがとう」
恭子は体のこともあるので、1杯だけにして、お茶に変えた。
坂本が思い出しように麻美に尋ねた。
「そういや、今日あの桜に似てる咲ちゃんは居る?」
「あー今日居たけど、私たちのこと物凄い目つきで睨んできたんだよね...」
「あーそうなんだ...なぁ咲に会えないかな?」
坂本は麻美に頼んだ。
「いいけど...なんで?」
「まぁちと話したい」
「ふーん。まぁいいや、聞いてくる」
麻美は咲を呼びに行った。
坂本が桜に頼んでからだいぶ月日が経っていて、そろそろ戻って来てもいい頃である。
麻美は戻って来たが、咲は一緒に居なかった。
「なんか、ここには来たくないから1階の奥の間に来て欲しいってさ」
「奥の間ってどこ?」
「階段降りて、左に向かって突き当たりの部屋」
「わかった。藤堂さんちょっとだけ行って来ます」
藤堂は快く快諾した。
坂本が部屋を出ると、気になり麻美はその後をつけて行った。
坂本は奥の間の部屋の前に立ち、一呼吸置いて襖に手をかけて開けた。
襖を開けると、咲が座っていた。
坂本は咲を見てその美貌に一瞬見惚れた。
だが頭を振り、すぐ我にかえる。
襖を閉めて咲の前に座った。
坂本をつけて来た麻美は、襖を少し開けて中の様子を盗み見した。
坂本は咲に静かに尋ねた。
「桜か?」
「はい?咲ですよ」
「本当に咲ちゃん?」
咲は薄ら笑いをした。
「そうですよ。誰ですか?桜って?」
「幼馴染ですよ」
「アタシと似てるんですか」
「瓜二つですね」
「そうなんですね〜世の中同じ顔が3人は居るといいますからねぇ」
坂本は突然大笑いをした。
「アハハハハっ笑える。桜だろ?」
「へ?」
「初めて会った日、咲は京都弁だったし、それにこの時代の人間が、同じ顔が3人いるなんて知るわけないだろ?」
咲は少し下を向いて、すぐ顔上げて笑い出した。
「ウフフッわかっちゃった?」
「ウフフじゃないわ。ややこしいことするなよ」
坂本は苦笑いをして呆れた。
「んでどうだったの?」
「ん?ああ。笑笑地蔵の後ろにあんたのメッセージ刻んであったわよ」
「そうか。まだ刻んでないから変な気持ちだけどな...」
「でもあんたら居たわよ?」
「はい?」
「あんたらがタイムリープしたって言った日に、諏訪神社に全員居たわよ」
「どういうことだ?」
坂本は頭が混乱した。
「さー?わからないわ。でも旅行を中止したって言ってたわよ」
「中止した?」
「確かにそう言ってたわ。ただ、わんわんと麻美が変な事言ってたわよ」
「変な事?」
桜は坂本に諏訪神社での出来事を話した。
「わんわんと麻美が...どういう事だ?」
「さぁ?私にはさっぱりわからないわ」
「なぁ引き続き調べてくれないか?」
桜は少し何かを考え条件を出した。
「タダじゃ動かないわよ?」
「なにが望みだ」
桜は坂本に条件を話した。
「そん条件...まぁいいか」
部屋の襖が勢いよく開く。
盗み見していた、麻美が我慢出来なくなり、部屋に入ってきた。
「ちょっともっさんどういう事!!?」
「あ、麻美どうしてここに...」
「そんな事はどうでもいいんだよ!なんで桜ちゃんがここに居るのよ」
「落ち着けって、これには深い訳が...」
麻美は聞く耳持たない様子だった。
「それにあの条件何勝手に飲んでるのよ!」
「興奮しすぎだって、人の話聞けよ!」
桜は黙って麻美の話を聞いていたが、我慢出来なくなり憤慨した。
「うるさいわよ!!あんた関係ないでしょ!」
「何よあんた急に!」
「昔からあんたと恭子が大嫌いだったのよ!」
坂本は急に憤慨する桜に驚く。
「おいおい桜やめろよ」
「あんたらが居るから私はいつも3番、特に恭子は私の好きな人をいつも奪うし、本当最低!」
「はぁ?キョーがいつアンタの好きな人を奪ったのよ!!」
「奪ったのよ!!私が好きだった小学校の時の山下も、中学校の時も田中もみんな恭子が好きって!」
「はぁ?そんなの逆恨みじゃない!!」
「いつもそう!なんかあればアンタらはわんわんやもっさんに守られてさ!本当に死ねばいいのよ!」
これには坂本が激怒した。
「おい!いい加減にしろよ!言っていい事と悪い事があるだろう!」
麻美はボロボロ涙を流しながら桜に詰め寄る。
「今の言葉取り消しなさいよ!!キョーが今どんな状況わかってて言ってる?」
「知ってるわよ。結核でしょ?」
「ならなんでそんな最低な事言えるの?」
「ふん。そんなの私には関係ないわ」
麻美は桜の頬を力一杯ひっぱ叩いた。
「痛いわね!!何するのよ!!」
「アンタ本当最低!」
大粒の涙を流しながら麻美は激怒した。
桜は鋭い目つきで麻美を睨みつけた。
「地獄に落としてやる」
そう言い残すと部屋を勢いよく飛び出していった。
坂本は麻美の肩をぽんと叩いた。
しかし麻美は坂本のほっぺを強く叩いて部屋を出ていった。
「痛っ!」
そうここは肩を叩くところではないのであった。
女心がわからないまだまだな坂本だった。




