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レジスタンス  作者: 猪仲
上書きされた世界
13/15

正規軍の奥の手

【Г2048/10/11】



作戦決行日、オニヒトデ要塞周辺の警備を確認しレジスタンス本拠地から多数の戦車や装甲車が出撃した。リナ達四葉救出小隊もオルデン鉱山にあるデータサーバーへ向かい、司令室にはアルフォードと日野、アンドレイが残った。



「正面突破、側面突破、ともに移動が完了したか」


「いよいよ攻撃ですね」


「で、なんで俺がココにいるんだ?」


「アンドレイ、お前の知恵が必要になるかもしれないからな。シガールのほうがよかったんだがアイツは別任務だから代役だ」


「このオヤジは嘘言わねぇな・・・わかったよ」


「全部隊に通達、作戦開始!」



オニヒトデ要塞の正面、先頭にはレミがいる。いつもの服装ではなく、ヴァストーク陸軍特殊部隊の戦闘服を着て向こうの出方を伺っているようだ。



「レミ隊長、作戦開始の通達です。始めてください」


「わかった、ガート副隊長、一撃を加えた後機動部隊の戦車隊を前進させつつ特殊部隊で要塞内部の迎撃用施設を破壊。歩兵がどの程度取り込まれているかは不明だが機械兵や特殊作戦群に要注意せよ」


「了解」


「・・・攻撃開始!」



レミのスキルは2つ、1つは温度操作で+10億度から-273度まで瞬時に温度を変えることができる。そしてもう1つはプラズマ操作。腕を前に出してその方向に向けて大出力のプラズマ砲を撃ち出すことができる。今回はプラズマ操作で正面に穴をこじ開ける作戦だ。



しかしどういうわけかさっきからレミは攻撃する様子がまったくない。味方に対して宇宙戦艦の主砲を遥かに上回る攻撃をするのに躊躇しているのだろうか。



「レミ隊長?」


「・・・スキルが発動しない・・・」


「え?わ、私も発動しないです!?」



その時機械兵が大量に要塞から姿を表してきた。特殊部隊の隊員達はスキルを発動しようとするがやはり発動しない。そのまま部隊の中心まで進行され、機動部隊も近すぎて行動できなくなった。



「司令!スキルが発動しません!!敵の罠の可能性が高いです!」


「何!?他の部隊はどうだ!」


「こちらナビ、現在転送作業を継続中。スキルは発動できるよ」


「こちらエドワルト、こっちもスキルは使える。使わなくてもいいけど」


「こちらレミ、正面はスキルが発動せず他の隊員も同様。至急援護を要請する」



「リナ!レミのところまで急行してくれ!このままじゃ全滅する!」


「了解!というわけで隊長さん、シガール兄、青木さん、私は正面に援護へ向かいます」


「わかりました、私が一人で片付けましょう」


「よろしくおねがいします、その前に・・・スキル複製、延命、オーバーマジック、リバース!」


「そうか、スキルが使えないから先に発動しておくんですね」


「はい、それではいってきます、テレポート!」



正面突破部隊は大混乱の中戦闘状態が続いていた。スキルが使えなくなったとはいえ、特殊部隊は肉弾戦や銃撃戦などの訓練は受けている。火力が下がったところで一方的にやられるような部隊ではないのだ。しかし、機械兵は防御力に優れ、人間とは違い痛みでひるむことがないので苦戦を強いられていた。



「弾がない!このままだと全滅するぞ!」


「レミ隊長!大丈夫ですか!」


「副隊長、このまま全力後退して機動部隊を後方に展開できる?」


「不可能です、機械兵が戦車の進路を防いでいます。強行突破するにも対戦車ロケットがあります」


「まずいな・・・」



その時、テレポートしてきたリナが現れた。RM剣を両手に持ち、二刀流のスタイルだ。しかしRM剣はアンドレイが作った新型ではなく、前の西洋風のロングソードになっている。山本の刀は腰に挿したまま抜く気はないらしい。



「レミ姉!今から機械兵を一掃する!私の周りに来ないで!」


「リナちゃん!?大丈夫なの?」


「大丈夫、私にはスキルじゃない攻撃手段がある、ディストラクション!!」



リナの周りで大爆発が起きた。近づくなというのはこの魔法の範囲を狭めることができないからだ。機械兵は跡形もなく消し去り、正面に大きな穴ができた。形成を立て直すなら今しかない、そう判断したのかレミは部隊を前進させ、機動部隊で機械兵を狙えるような状況を作り出した。



「今だ!機動部隊、機械兵を砲撃開始!歩兵は巻き込まれないでよ!」


「レミ姉!スキルを妨害する機械みたいなの心当たりない?」


「わからない・・・でも他の部隊が影響を受けてないということは移動式というより固定式だと思う」


「固定式・・・わかった、片っ端から壊していくよ。ウィング!」


「わー空飛んでる・・・」



上空から施設を探そうとしたリナだが、要塞内どこを見渡してもどれがなんの施設なのかまったくわからなかった。リナには研究の類いの知識はあっても軍事的な施設の知識はないのである。


「兄、スキルを妨害する固定式の施設のようなもの!どういうふうな形状してるか想像できる?」


「おそらくだが電波の類いを発信できる施設だと思う、似たような形だとレーダーとかもあるけど気にせずぶち壊してしまえばいい!」


「了解、ディストラクション!!」


オニヒトデ要塞のいたるところで爆発が発生。要塞の防衛装置が働き、リナに向けて砲撃が始まった。しかし、それらを螺旋琉で吹き飛ばし、防衛装置もディストラクションで破壊した。特殊部隊の面々はその様子を見て唖然としていた。



「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな・・・」



「何弱音吐いてるの副隊長!機動部隊前進!要塞内部へ進行しリナを援護せよ!」


「隊長!スキルが使用できます!」


「リナちゃんがやってくれたみたいね、機動部隊停止、あとは・・・私がやる」



再び最前線に出たレミは、両手を前に向けてスキルを発動した。前方に存在した建物ごと吹き飛ばし、オニヒトデ要塞に30mほどの大穴が開いた。攻撃を受けた箇所は瞬時に常温に戻し、すぐに突撃できるよう調節した。



「要塞内部に突撃!」


「うひゃー!レミ姉のスキルいつ見てもおっかない・・・」


「リナちゃんにだけは言われたくないよ!!」



レミに聞こえていたのがバレたのを恐れてリナはすぐにテレポートで四葉救出部隊のほうへ向かっていった。今のリナでもレミのスキルは恐ろしいらしい。



「司令室、正面攻撃成功!これより内部に進行し敵を迎撃します」


「よくやった、側面牽制部隊はどうだ」



「こちらエドワルト、特に問題なく作戦を継続中。敵はあまり見受けられないが一応スキルの妨害装置も警戒しつつ進行する」


「わかった、ナビのほうはどうだ」


「こちらナビ、歩兵部隊の転送作業終了、これより諜報作戦と内部で暴れさせるよ」


「頼む」


「アルフォード、こりゃーすぐに片がつくな!スキルを抑え込んでなんとかする作戦だったらしいが、リナの魔法は計算外だったみたいだしな!」


「そいつはどうかな、アドルフのヤツは仮にも我軍の参謀だ」


「何か作があると?」


「多分な」


「山本の部隊も気がかりです。山本が逆らえない状況にいる以上敵対してくるでしょうから」



「こちらナビ、エリアによってスキルが使えるところと使えないところがあることを確認!」


「それはどのエリアだ」


「総司令部の区域は全域、あと要塞のコントロール室周辺、それから・・・」


「それからなんだ」


「衛星砲の管制室」


「アドルフ・・・何を企んでいるのか読めてきたぞ・・・」



衛星砲は惑星内のどこでも攻撃が可能なヴァストークの強力な兵器群の1つであるため、このコントロールは歴代司令長官のみに委ねられていた。現在その司令長官が不在で副長官も現在王国本土の王宮にいるとのこと。つまり止められる人間が現在要塞内にいないのである。



「ヴィンセント!王宮に緊急配備!急がないと間に合わなくなるぞ!」


「了解、連絡いたします。リナさんあとはお願いします」


「隊長、お気をつけて」



「ナビ、衛星砲管制室に強襲を仕掛けろ。エリザと歩兵部隊を集中運用」


「わかった」


「発射される前に手を打たないとまずいな・・・」


「アルフォード、俺にいい案がある。リナ、聞こえたか?作戦が完了次第サーバーでオニヒトデ要塞へつながる全ての通信をシャットアウトしろ!少し時間稼ぎになる」


「わかった、もうすぐオルデン鉱山に到着する」



リナ、シガール、青木の三人はオルデン鉱山に到着した。相変わらず入り口に見えないプレハブに到着し、スキルが使えることを確認。そのままセキュリティをバグらせてエレベーターを起動した。



「中に入るとサーバー群がずらりと並んでいる。とりあえず中央にある制御室を占拠できればこっちのもんだ。その前にやらないといけないことだが」


「はい、外部との連絡手段の遮断ですよね。今準備しています」


「親父、僕達はこれから連絡手段がなくなってしばらく通信不能になる。何かあっても作戦終了まで耐えてくれ」


「わかった、成功を祈る」



エレベーターがサーバールームに到着した。それと同時に無線通信を全て遮断する特殊な装置をサーバー内に放り込み、全員で走ってLANポートがある場所へ移動した。青木が端末を差し込み、シガールがそれをサポート、リナが終了するまで援護するという流れだ。



「さーて、鬼さんこちら手のなる方へ!ライトニング!!」



魔法ライトニングは強力な電撃を発生させる魔法である。リナのスキルを使うことで放電することなく手元に電気が集まった。異常に気がついた研究者や職員、警備兵などをこれを使って次々と気絶させていき、防犯カメラやセキュリティは全てコントロール下に置いて作戦の実行を諭されることなく行っている。



「リナちゃん!外部との通信を完全に遮断したよ!」


「了解!それじゃあ制御室にいきますか」


「制御室はこっちだ、早く行こう」



同じ頃、ナビとエリザ、複数の陸軍歩兵隊は衛星砲の制御区画にいた。警備をしていた兵が何人書いたが、問題なく突破し、制御室の前まで進行した。



「スキルは・・・あれ、使える」


「なるほどね、俺達の足止めのためにそういうギミックを仕込んでいたと思ったが・・・」


「エリザさん、これから突撃します。まずはウチがスキルを使って相手の注意を引きます」


「よろしくぅ!俺たちは3秒後に突入する」


「了解、いきますよ!」



ナビが移動して3秒が経過し、エリザ達は突入したがそこには驚くべき光景が広がっていた。空間移動できるナビが何者かに捕らえられているのである。その人物は山本の部下、橋姫愛織だった。



「よぉ、お前さんが噂に聞くエリザ・ワーグナーさんかい?初めまして、アタシの名前は橋姫愛織っていうんだ。よろしく」


「ずいぶん丁寧な挨拶だねぇ、そうだ、俺がエリザ・ワーグナー。ナビに何をした」


「まあまあ落ち着きなよ。アタシだってやりたくてやってるわけじゃないんだからさ、あんたらの上司から聞いてるだろ?アタシらも協力したいんだけどね。この嬢ちゃんなら大丈夫、水を少しかけてやっただけだから」



「ナビの弱点か・・・山本から聞いたんだな」


「そうだ、そして此処から先は任務外。アタシはあんたと一度でいいから戦ってみたかった!死闘ってやつさ!!」


「俺はあんたのことを全然知らないねぇ、得物がなんなのかくらい教えてくれてもいいんじゃないか?フェアじゃないぜ」



「それもそうだな、アタシの得物はナイフと鋼糸さ」


「ほぉ、コイツは面白そうだ」


「だろ?アタシら戦ったら絶対面白いんだよ、機会がなかっただけさ!!アンタはアタシの足止めをして施設の外に行く、歩兵部隊がココを占拠して衛星砲の発射を阻止。どうだ?」


「その提案は美味しいね、ナビをついでに離してやってくれ」


「ああ、折角の機会を邪魔されたくなかったからこの子の”移動先に固形物があって移動できない場合は自動で移動できる最寄りの場所に座標を変更する”って特性を利用して飛んでくるところを把握してたのさ。簡単だろ?」



「こいつは驚いた、その子はね、ヴァストークでも指折りの実力者だよ」


「さて、いこうか」



妙に意気投合した二人は部屋を出て近くの少し広い場所に移動した。山本の部下との直接的な接触だが、陰ながらサポートしてくれているのは事実のようだ。




その頃正面ゲートでは機械兵と防衛設備をあらかた掃除した正面突破部隊の姿があった。戦車、装甲車の消耗はほとんどないが、人員の消耗が激しい。死者は3人、重傷者は30人にも及びほとんどの兵も体力をほとんど奪われていた。


序盤のスキル発動妨害装置が相当応えたのである。レミはこの状況に苦悩の表情を浮かべていた。



「アタシがもっとしっかりしていれば・・・3人も死なせてしまった」


「気を落とさないでください隊長。あなたは精一杯やりました」


「やったのはリナちゃんだよ。アタシはスキルがないとただの人間だった」


「私だって自分の身を守るので手一杯でした・・・隊長は人間ですしスキルが使えてもやはり人間です。いくら最終兵器とか言われていてもそこは忘れないでください」



「副隊長・・・そうだね、残りの任務をこなしてしまおう」


「はい、行きましょう」



「部下の敵討ちだ、3人の魂とともに敵を全て殲滅する、スキル発動」


「機械兵、並びに反逆者に加担するものよ!今なら間に合うぞ。死にたくなければ降伏しろ!」



レミが指揮をする。指揮棒ではなくプラズマ砲の閃光が要塞に当たり、要塞が崩れていく。機械兵や歩兵がそれを止めようとするが、レミの周囲に10億度のバリアを張っており銃弾は全く届かない。何人か白旗を上げて降伏したが、降伏した人物の周りだけを次々と破壊、殺していった。


もっともヴァストークの最終兵器はこれでも出力を1%まで絞っている。全力で放てば要塞は木っ端微塵に消し飛んでしまうからである。しかし、破壊力よりも静かに怒りを燃やしているレミの表情のほうが恐ろしかった。



「隊長、そこまで怒らないでください。能力のさじ加減を間違えると我々まで巻き沿いになりますから」


「・・・そうだね。あとは任せた」


「了解!」



正面ゲートが地獄と化していたとき、司令室に諜報部隊から伝令がきた。



「大変です!戦艦大和が行動を開始!宇宙軍の戦艦3隻を随伴させてそちらへ向かっています!」


「ついに動いたか宇宙軍!日野幕僚長、よろしく頼みます。アンドレイ、日野幕僚長についていけ、ここは私一人で十分だ」


「わかった、何かあったら転送装置を使ってくれ、この施設はもう殆ど必要ないだろうからな」


「ああ」


「日野さん、武蔵へ行きましょう」


「はい、アルフォードさんお気をつけて」


「ああ、そっちも」



各戦場で動きが活発になり、戦況は現在レジスタンス側が優勢だが、参謀アドルフはまだなにか企んでいる可能性が高い。アンドレイと日野は戦艦武蔵に向かい、大和と接触すべく直ちに出撃したのであった。

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