02:4人死ね
「よ……4人……し、しぬ?」
しぬって……なんだよ。
しぬって死ぬ?
し……死ぬ?
「なんだよ……なんなんだよ一体……ここはどこなんだよぉお!!!」
俺の叫びに、答えは返ってこなかった。
淡々と、まるで機械のように放送は続く。
『プレイヤーの皆さん、まずはテーブルの上に置いてあるカードを見てください』
「か、……カード?」
俺は立ち上がり、部屋を見渡す、あった。
……いつからだ?
いつからあのテーブルはあったんだ?
部屋の真ん中に……。
気づくはずだろ……いったい、いつから。
「ん? ……こっこのカードは!?」
テーブルの上に置いてあったのは、見たことがあるものだった。
正義。
黒い封筒とともに送られてきたあのカードが置いてあった。
なぜ?
なぜ?
その言葉が頭の中を埋め尽くす。
なぜこのカードがここに?
俺は持ってきてないはずだ……。
「……」
1つ、1つだけ確かなことが分かった。
この世界は俺の知ってる世界なんかじゃあない。
もっと別の……そう、異世界。
もう俺の常識なんて通用しない。
『そのカードを所持している間、プレイヤーの皆さまはある特別な能力が使えるようになります。……それはそれぞれ別の能力ですが……』
「の、能力……?」
もう一度、カードを見た。
座っている王様が、俺を見てニヤリ。と笑った気がした。
『プレイヤーの皆さま、さきほど説明したとおり、この世界から帰るには4人死ぬことです。……いえ、誤解があるかもしれません。……皆さまは、生きて帰るために』
なんとなく、この先はわかった気がした。
『殺し合ってもらいます。……カードの能力を使って。4人が死亡した時、ゲームは終了いたします。』
ブツンという音が聞こえた。
放送はこれで終わり……だろう。
「うっ!」
放送が終わるとともに、目の前の壁が光りだした。
思わず、目を瞑る。
「……な、……ど、……ドア……?」
光が弱まり、壁にドアがあらわれた。
ドアは閉まっているため奥が見えない。
「こ、ここから……行けってことかよ」
ドアの取っ手に手をかけるが、なかなか動かせない。
このドアを出たら、俺はもう2度と帰ってこれないかもしれない。
2度と……会えないかもしれない。煌と……。
『なお、ドアが現れてから5分以内にゲームに参加しない場合……棄権とみなします。では、皆さま存分に殺し合ってください』
「……」
行かなきゃ……ならないのか……。
俺は、深呼吸を繰り返し。
そして取っ手を……まわした。
本当は行きたくなかった。
だが、ある考えが頭をよぎったのだ……。
俺のもとにカードがあるのなら、煌もこのゲームに参加してるんじゃないか……と。
俺は、煌を助けだす。
何としてでも……。
何をしてでも……。
【異世界】
「……こ、ここは……も、森?」
ドアを抜けると、ドアは消滅し、代わりに樹が見えた。
「……」
手ごろな樹を探し、根に座る。
そよ風が吹いている。
「……のう、力……か」
このカード、正義の能力は一体なんだろう……。
それを知らない限り、俺に未来はない。
「この後ろも……関係が?」
後ろに書いてある●も……関係があるに違いない。
煌のカードには何も書いてなかったが……。
きっと煌の能力はそういうものが関係ないのだろう……。
「待ってろよ……煌……」
とにかく、動くのは得策じゃあない。
「しばらく……座って……」
瞬間。
バグォォン……という轟音が鳴った。
木々が揺れ、地も揺れる。
「なっ!? ……なんだ!? なんだこの音と衝撃は!」
あたりを見渡すと、ある個所から煙が出ていた。
「あ、あそこか!」
俺はそこを目指し、走り出した。
今の音は確実に……爆発だ。
もし、もし被害者が煌なら、まだ助けれるかもしれない……。
急がなくては……!
「はぁっ……はぁっ……あ、あっちか……」
根を飛び越え、枝を折りながら、俺は走り続けた。
「……はぁっはぁっ」
ここか……?
辺りの樹が、少し焦げているようにも見える。
き、煌……煌か!?
俺は辺りをさが……し……。
「うっ……う、うわあああ!!!」
ちょうど、根の陰で見えない位置にそれはあった。
「う、うげぇぇええ」
抑えることができず、嘔吐する。
そこにあったのは、体の一部がまるで何かにえぐられたかのように無くなった。死体だった。
手が、足が、頭が、腸が、内臓が……はじけ飛んでいる。
これは……これはもう、そういうことだった。
「も、……もうすでに……すでに……」
すでに、ゲームは始まって。そして……殺した奴がいる。
「はぁっ……はぁっ……なんなんだよ……なんなんだよ一体……俺が、煌が何をしたっていうんだ……」
死体を、直視できずに俺はその場から離れた。
遺体は……煌じゃなかった。
服が違ったから。
「ふー……ふー……」
洗い呼吸を繰り返す。
冷や汗が止まらない。
「きゃああああああーーーーっ! だ、だれかああああーーーっ! 誰か助けてぇええーーー!」
「こ、声……」
声が、女性の声が聞こえた。
叫び声だ。
あ、あそこか……!
「いやああああーーーっ! お願い! 離して!」
「おら! うるせえんだよっ! 黙ってろ! ひひひ……ここは天国だぜ……」
一人の男が……女性の手を引っ張り引きずっていた。
女はその間、助けて。助けて。助けて。と叫んでいる。
「う……あ……ぅ……」
……俺は、脚が動かなかった。
助けたくないわけじゃない……。
「お、俺だって……俺だって本当は……助けたいんだ……助けたい……けど……けど……」
女性の叫び声が、だんだんと遠くなってゆく。
向こうから、こっちは見えない。
そうだ……そう、これでいいんだ。
4人死ぬなら……4人死んで生きて帰れるなら……あの女を入れて2人……。
涙が、止まらなかった。
「助けてえええええええーーーー!」
女性が、再び叫んだ。
もう、叫べないかもしれないのに。
――――その声が、煌と重なった。
俺は、俺は煌めを助けれなかった。
あの女性も助けれないのか……?
「……」
不思議と、足の震えはおさまり、呼吸も整った。涙も、止まった。
確かに、相手は……あの爆発の犯人かもしれない。
相手は能力をスデに知っているかもしれない。
でも、俺は知らない……。
勝ち目なんて、ないかもしれない。
……死ぬ。かもしれない……。
けど……。
けれど……。
「はぁっ……はぁっ……どっちだ、どっちに行った!?」
気が付いたら、俺は追いかけていた。
地面の擦れた後を追いながら……。
「び……ビル……?」
擦れた後は、廃れた建物の中に続いていた。
「こ、この中……か……」
もう男も女も居なかった。
「……」
一歩、建物の中に入った。
空気が、変わった気がした。
男の言葉を思い出すと、女性は……。
早く……早く助けなくては……。




