えろ天狗 向こう岸に奇跡をみる
エロいことを考えると鼻が伸びる天狗の話
エロ天狗は電車が止まる慣性に引っ張られて、うたた寝から目を覚ました。車窓からホームで待つ黒いレースの服をきた女性に目を奪われた。
「エロいなあ」
寝ぼけ眼でそんなことを思っていると、彼女はヒールの音をつかつかとたてながら電車に乗り込んできた。
そのまま見つめていてしまったものだから、目が合いそうになり、とっさにつり革の広告を見る。
彼女はそんなことは意を介さずに向かいの席に座った。
「顔は可愛い、服装も可愛い、スニーカーはグズグズだ」
頭の中で呟く。最高に好みだった。
手帳を取り出し、スラスラと自分のアドレスを書き、カバンにしまう。
自分が電車を降りようと立ち上がったら、それに続いて彼女も降りる準備をしだした。ドアが開き歩き出すと、ちょうどエロ天狗は斜め前を歩く形になった。少し腕をさすりながら勇気をもって話かける。
「今日は冷えますね」
急に話しかけられたものだから、彼女はキョトンと不思議な表情をしながら答える。
「そ、そうですね」
不審に思われている。自覚はあったが、これで終わっては話しかけた意味がない。
「とても綺麗だったので、つい目が奪われてしまいました。これをうけとってもらえませんか」
先程のメモ書きをちぎって手渡す。指で掴んだのを確認したのちに、
「では」
と言って、再び電車に乗る。最寄駅はここだが、見ず知らずの男に声をかけられたあと帰り道を共にするのは怖いだろうと考えたのだ。メモにはアドレスと一緒に
「よかったらお友達になってもらえませんか。連絡をくださると嬉しいです」
と書いてある。おそらく連絡はこないだろう。だが、あのメモ書きを読み、一瞬でもエロ天狗のことを思い起こすだろう。
無駄な乗車時間を過ごしながら、七十億分の一の奇跡に感謝した。
鼻が伸びた。
エロ天狗はスターシステムを採用しております。




