えろ天狗 にんじんに艶かしさを感じる
バラ売りって安いの高いのか測り難いよね。
えろ天狗はスーパーに買い物に来た。
カートを引っ張り出してカゴを乗せて、野菜売り場に躍り出た。
じゃがいもと玉ねぎとにんじんがそれぞれ一つ18円!
大安売りなのだ。
綺麗で大きくて美味しそうなものを選ばなければいけない。
ただ、今はもう夜の9時30分、蛍のひかりが流れる閉店間際の野菜コーナーにいるのは、へたって形の悪い残り物ばかりだった。
じゃがいもは小さめだが芽の出ていない剥きやすそうな形のものを、玉ねぎは皮に汚れがついているが先っちょが腐ってなさそうなしっかりしたものをなんとか探し出した。
残りは人参だけだ。
にんじんは小ぶりだったり、細長すぎて剥いたら無くなってしまいそうなものばかりだったが、一つ目を引くものがあった。
二股だ。
ダンボールの折り返しの陰からのびた2本のさらりととした足。
艶の感じるつるりとした皮。
これは欲しい。
カレーにぶち込むためではない。鑑賞していたいのだ。できることなら長生きさせてやりたい。
そのためなら土に埋め直して育て直してもいい。
そう思いながら手を伸ばしたその時……
真っ白でさらりとしたまさしく人間の手と交差し、触れ合ってしまった。
見合わせるととてもまつ毛が長く、目の大きい、これまた美しい人が目の前にいた。
「あっ…ど…どうぞ」
思わず譲ってしまった。
美しい人は綺麗な所作で軽く会釈をしてカゴの中に二股人参をいれてしまった。
えろ天狗はただその後ろ姿を見送ることしかできなかった。
あの人参はどうなるのだろうか。
まさかエロ天狗と同じように愛でる目的ではあるまい。
きっと華麗な手捌きで包丁を使って綺麗に剥かれ、均一な大きさに切り分けられたあと、炒められていくのだろう。
そしてカレーにぶち込まれて、美しい人の口に吸い込まれていくのだろう。
えろ天狗は譲ったことを後悔はしなかった。
美しいものは美しい人のものに行きつく運命だったのだ。
えろ天狗は売れ残りの人参をかき分けながら、人参と美しい人に思いを馳せた。
そして少し鼻が少し伸びた。
美しい人は肉じゃがを作ったようですよ。
彼氏に頼まれたらしいです。




