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近所の異世界に通ってます。  作者: 悪萬畜倫(おまんちくりん)
第二章 助奏

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第七話 扉の先で習うこと

 生気を失った巨大な狼が目の前に横たわる。

「大丈夫かい?お嬢ちゃん」

 狼の絶命を確認した男が奏に声を掛ける。


 弓を持った女性が地面に刺さった矢を抜き奏に近寄って声を掛ける。

「ケガは無い?」

 女性は褐色で耳が長くとがっている。


「は、ハイ」

 奏は二人の姿をまじまじと見つめる。


 

「トラス!フランツ!」

 幼い女の子の声。

 小さな足音が近づいてくる。

 

 自分の背丈の倍近くある杖を担いだ小人族の女性がやってきた。

「ナッティスだいぶ腕上げたね」

 斥候のダークエルフ、フランツが彼女に声を掛ける。

「ああ、ストーンボルトの威力も精度もバッチリだ」

 人間の男、トラスも嬉しそうに話しかけた。

 

「これで終わ……」

 ナッティスは奏を見て息を飲んだ。

 

(この子の魔力……何者!?)

(直接魔力量を視られるわけじゃないけど……)

(とんでもない量と圧)

 「だだ洩れ……」


 「漏らしてないです……」

 奏は恥ずかしそうに言う。


(無意識なのね……)

「あ……いや、あなた何処から来たの?」

 ナッティスが奏に声を掛けた。

 トラスが剣を仕舞いながらこちらに寄って来る。


「怖かったでしょ?大丈夫?」

 フランツが手を差し出し奏を起こした。

「大丈夫です!ありがとうございます」

 身なりを整える奏。

 

「それより、めっちゃすごい!!!」

「あんな大きいのをあっという間に」

「あの魔法どうやるんですか!?」

  奏は目をキラキラさせながらナッティスを見下ろす。


「あ、え……っと」

 ナッティスが奏の圧に気圧される。

 小人族は成人でも120㎝ほどしかない。

 奏は150㎝くらいある。

 

「プッハハハハハ!」

「アハハハハ!」

 冷や汗をかくナッティスをよそにトラスとフランツが笑っている。


「ナッティス、珍しく押されてるじゃない」

 フランツがナッティスを茶化す。

「だ、だって、普通じゃないわこの子……」

 真面目に返すナッティス。


「確かに、大したもんだよお嬢ちゃん!」

 トラスが掛け合いに割って入る。

「あんな状況で、俺たちの技までよく見てたな」

 奏の頭を撫でる。

「で、どうしてここに居たんだ?」


「あ……えっと……」

「父……」

 奏は言葉を選んで説明する。

「お、お父さんを探してるんです!」

「はぐれてしまって……」


「おいおいおい、こんな所で迷子か?」

「よく無事だったな」

 トラスが困った顔をする。

 

「あなた魔法使い?」

 フランツが奏の持つ杖を見て聞いた。

 

「いえ、違うわ」

 否定するナッティス。

「この子、魔力コントロールが出来て無いわ」

 奏を見上げるナッティス。


「はい、違います。」

「今勉強中で……」

 奏は気まずそうに言う。


「そっか、じゃあ教えてやれよナッティス」

 軽く言うトラス。

「え!?」

「何で私が?」

 ナッティスがトラスを下から睨みつける。

 二人のやり取りを、更に目を輝かせて見つめる奏。

「だってよぉ」

「魔力コントロールができない子供を連れて歩くのは危険だろ」

 トラスがナッティスを窘める。

「そうだけど!」

「あああああ……わかったわよ!」

 ナッティスが複雑な顔で奏をみる。

 奏は渾身の笑顔でナッティスに応えた。

「仕方ないわねぇ」

 

「俺たちはこいつをバラシてるからさ」

「どうせあと2~3日はここで野宿だしね」

 トラスとフランツが倒した巨大狼の方に向かった。


「私はナッティス」

「あっちの2人はトラスとフランツ」

 二人を杖で指す。

「あなた、お名前は?」

 ナッティスは首を傾ける。

「松若 奏」

「カナデといいます」


「マツワカ カナデ?」

「変わった名前ね」

 

「マツワカ……」

(何処かで聞いたような……?)

 ナッティスが首をかしげる。


「まぁいいわ」

「ここに座って」

 ナッティスは奏を目の前に座らせる。

 息をのむナッティス。

(やっぱりすごいわ、この漏れ方普通じゃない)

(それにこの杖……コワイ)

 微かに光る奏の杖。

(ひぃぃぃぃ……)

「どうかしました?」

 不思議そうに見つめる奏。

「何でもないわ……」


「まずは目を瞑って」

 奏は目を力いっぱい瞑る。

「いや、そんなに力入れなくていいかな……」

「まず自分の魔力を感じられる?」

「はい」

 奏は素直に応える。

「そう、いいわ」

「自分の魔力の形をイメージできる?」

「あ~、はい」

 あの怖かった時を思い出す奏。

「大丈夫、最初はみんな怖いのよ」

(そうなんだ)

 奏の表情がゆるくなる。

「力を抜いて」

「そして今の自分の形と同じ大きさにできる?」

 奏は大きく膨らんだ魔力のイメージを、一生懸命、自分の身体と同じ大きさに縮めていく。

 ナッティスは奏を見つめる。


「ふぅ~」

 深呼吸する奏。

 

「できそう?」

「もう少し……」

 …………。


 

「できたと思う」

 しばらくして奏が返事をした。


(やっぱり普通じゃない大きさなのね)

 ナッティスはまた息をのむ。

「そう、じゃあ今より小さく出来る?」

「あ、出来ました」

「早!」

 驚くナッティス。

(え!?目の前に居ないみたい)

 よほど研ぎ澄まさないと感じられないほど、奏の魔力は小さくなっている。

「あなた……」

 ナッティスは言葉を飲み込んだ。

「じゃあ自分の大きさに戻したり小さくしたりを何回か繰り返してみて」

「はい先生」

 ナッティスは少し照れて笑った。

 (この子マジでヤバいわ)

 (完璧に大きさをコントロールできている。)

 (完璧に消して、寸分たがわずもとに戻せてる……しかも秒で)

 ナッティスは額にかいた汗を拭く。

 

「おーい飯が出来たぞ~」

 トラスが二人を呼びに来た。


 日が傾き3つの月がのぼりはじめている。

 奏は初めて、異世界の夜を迎えようとしていた。

 

20261031

誤字修正、可読性の向上の為の修正。

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