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近所の異世界に通ってます。  作者: 悪萬畜倫(おまんちくりん)


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第三話 狭い異世界広い部屋

 奏の頭の中に響く綺麗な声。

『転移失敗、転移失敗』

『緊急シークエンスに移行します』

 

 奏はしゃがんでアタマを抱える。

 すると、身体が……。


 浮く。

 無重力!?

 内臓が持ち上がる感覚。

 口から出そう!

「きもちわる!」

 

 目を見開く奏。

 そこは眩しくない光、白い空間。

「助けぇぇぇ……」

「……父ぃぃぃ」

「母ぁぁぁぁ……」

 奏は必死に空をかき泳ぐ!


 クロール!


 平泳ぎ!


 バタフライ!


 背泳ぎ……。

 は、何か違う。

 

 と思った瞬間、一気に圧し掛かる重力。

「きゃあああぁあああ!?」

「落ちるぅぅぅぅ……!!」

「うっやあぁぁぁ!!」


 白い空間から放り出され真下に迫る床。

 落下の痛みを受けるように構えた。


 奏の眼前に現れた大きな円。

 その内側、環状に書かれた文字と図形が青白く光る。


 床に叩き付けられる寸前。

 光の幕が奏を受け止めて衝撃を消し去った。

 

 頭を抱えたままゆっく円の真ん中に着地する奏。

 

 床の冷たい感触に触れて目を開けた。

「たすかった……の?」

 上体を起こしてペタンと座る。


『緊急転移完了』

『転移者の安全を確認』

『転移魔法終了』


 頭の声が消えると、円と文字は光を失った。

「てんい……まほう?」

「何!?」

「声?」

「誰?」


 奏が床を見る。

 不思議な図形と模様の真ん中に座っている。


「似てるけどちょっと違う……」

 エレベーターの床で見た模様を思い出す。

 この図形は青い塗料で書かれているようだ。

「これ何て言ったっけ?」

「ま、いっか」

 奏は立ち上がると服に着いたホコリを払った。

 

 周囲を見渡す。

「めっちゃ広い部屋」


 壁や柱に丸いモノが光って見える。

 照明のようだ。

 弱く光るものや光を失った物もある。


「ん?何これ?」

 自分の立つ円形の横に殴り書きされた文字。

 読めないけれど、何故か懐かしく感じる。

「……怒ってる?」

「こっわ……」

 身震いする奏。

 

 「ちち~」

 不安で小声になる。


 「居るならいるって言え~」

 「居ないならいないって言え~」

 国民的アニメの一幕を思い出す。

 ひとりで笑う奏。

 

 …………。

 

 奏は部屋の明るさに目が慣れてきた。

 部屋の至る所に古びた書棚や机、壺や瓶のようなものが見える。


 

「教科書で見た絵みたい」

 この部屋は、外国の大昔の絵の中のような感じがする。


 奏が周りを見渡していると、奥の方に両開きの扉が目についた。


 つま先からゆっくり円形の外に踏み出す奏。

 薄暗い部屋を扉へ向かって歩き出す。


 あちらこちらに貼られた布や紙。

 書かれた文字。

 奇妙な像。

 鎧?

 武器?

 見た事ない物ばかりだ。


「わっ!!」

 ドサッ!

 奏は足元の杖に気付かなかったのか、豪快にこけた。


「いったーい!!」

 膝をさすって痛みを誤魔化す奏。

 足元に転がる杖を睨みつける。

「くぅぅぅ……う?」

 なんとも不思議な杖。

 恨み言のひとつでも言ってやろうと思ったが、何か惹かれるカタチ。

 見た事の無い大きく歪な石がついている。


 奏は足元の杖に向かってに腰を落とすと、

 手に取って持ち上げてみた。


 「なんか、めっちゃしっくりくる」


 道で拾って家まで大切に持って帰りたくなるお気に入りの木の枝みたいな感じだ。


 両手で握ると杖の石が少し光った気がした。

「光った!綺麗!」

 

 奏はそのまま杖を握り締め扉の前に立った。

 扉は木材に金属で装飾されていおり装飾自体に何か意味がありそうにみえる。


 左側のドアノブに手を掛けそっと押す。

 重厚そうな扉は意外にあっさり開いた。


 奏はその部屋に一歩入る。

 

 チカチカッ!

 「ビックリした~」

 小部屋に入ってすぐにこの部屋の天井四辺が灯る。

 奏の後ろ、 両端、正面の順番に点灯した。

 部屋の照明のようだ。

 

「父と母の部屋くらいだね」

 八畳ほどの広さの部屋には何も置いてなかった。

「扉が大きいのに変な部屋」

 

 広いの部屋に戻る。

 小部屋から差し込む照明の明かりが消えるのを背中に感じた。


 「なかなかECOな仕組みだ」

 「学校で習った奴!」


 そんな事を考えながら

 出口の無い単純な二部屋の迷宮でひとり、拾った杖を抱えて途方にくれた。


 「どうにかして出ないと……」

 恐怖より焦りが勝り始める。

 

 他に出口は無いかと広い部屋を再び見渡してみる。

 片付いて無いわけじゃないけど、物はいっぱい置いてある。


 この感じ、どこか懐かしさもある。

 埃っぽいけど匂いも嫌いじゃない。

 そんな感じで、奏の気持ちは落ち着いていた。


 何かヒントがあるかもしれないと歩きまわる。

 ふと気に成って壁面に列ぶ本棚の前に立つ。

 持ってた杖を立て掛けた。

 本を一冊手に取ってページをめくる。


「…………」

 全く持って読める気がしない。

 閉じて棚に戻す。


「ダメだ!何にもわからない」

 本棚にもたれ掛り見えない天を仰ぐ。


 ポワッ

 奏の横で立て掛けた杖が静かに光る。


 書棚の本が一冊だけゆっくりズレ。

 

 フワッと宙に

 

 そこは奏の頭の上

 

 空中で止まり

 

 そのまま奏に


 ボカッ!


「イイッタァーーーイ!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

「こんなんばっかり!!」

 奏は思わず杖を手に取ると本を杖で叩いた。


 バシ!


 叩いた弾みなのか。

 杖の石がキラキラ光ると、

 叩いた本も合わせたように光り出す。


 風も無いのに本が開いてページがめくれる。

 奏の目の前に突如現れた図形と文字が自分に迫って来る。

 

「いやあぁぁぁ!」

「叩いてごめんなさ~い!」

 奏の頭をすり抜けて消え去った。

 

 すると、奏の頭の中で何かが語り掛ける。

 『言語理解魔法発動』


 何が何やら分からずビビって固まる奏。

「なに!?」

「ナニ?何?」

「また声が聴こえる!」

「本?本が喋った?」


 奏は落ちた本を杖で恐る恐るつつく。


「あら?」

 奏は本を手にとった。

「まどうしょ」

 先程まで読めなかった本の表紙。

「言語理解の魔導書」

「ナニコレ!」

「読める!」


「魔法の本?」


「魔法……?」

「魔法が使えるの?!」


「マジで?」

「ヤバくない!?」

 奏のワクワクが止まらない!

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