第十話 保護者は誰そ
ギルドカフェはギルドと壁を挟んだ隣。
ウエスタンドアを通り抜けた先にあった。
昼時とあって店内は、ほぼ満席。
お腹がすいた女子三人には刺激的過ぎる香りが充満している。
——スンスン。
「いい匂い!」
奏が賑わうカフェの香りを嗅ぐ。
「スパイシーなお肉のかほりぃ~」
ボーイやウェイター、ウェイトレスが両手いっぱいに料理や飲み物を持ち、テーブルの隙間を忙しなく動き回っている。
『これ、八番テーブル』
『おーい、こっちもお願い!』
包丁の小気味よいリズム。
トントントントントン!
ジュウゥ~~~~!!!
『ソースとって!』
バーカウンターの奥ではシェフ達が動き回っている。
オープンキッチンスタイルだ。
奏が一際目立つウェイトレスを見つけた。
「猫耳ウェイトレスだぁ!」
ゆらゆら揺れるしっぽがピンと立って小刻みに揺れだした。
「フランツ!ナッティス!ひさしぶりだねー!」
ギルドカフェのウェイトレス、猫人のバーニッシュが手を上げて二人を呼ぶ。
「あ!バーニッシュ~」
ナッティスが杖ブンブン振って挨拶。
周りの冒険者達が迷惑そうに避けている……。
バーニッシュが三人を半円のソファ席に案内する。
ギルドカフェ内は円形の木のテーブルに木の長椅子か丸椅子。
冒険者パーティが冒険の話し合いをしやすいように考慮されている。
落ち着いて座れる半円のソファ席は帰着後の冒険者がよく利用する。
奏を真ん中に、両脇にナッティスとフランツが座る。
「おなかすいたから早くメニューちょうだい」
フランツが意地悪顔でバーニッシュに告げる。
「ごあいさつだねぇ」
「私よりメニューだなんて」
バーニッシュの手から素早くメニューを取り上げる。
「もぉお腹すきすぎて死にそうなんだよ」
「あら、新人さんかい?」
バーニッシュが奏に笑顔の接客。
「はじめまして」
奏はお辞儀して挨拶する。
「あら、これはご丁寧に」
バーニッシュも頭を下げる。
「こんな素敵なお嬢さんが冒険者?」
「そう今日からね」
スンとなるナッティス。
「訳あってねぇ……」
メニューを見ながら口籠るフランツ。
「なるほどねぇ……」
「副長から言伝は聞いてるから」
「さぁ注文どうぞ!」
「じゃあねぇ~」
「コレと……」
「コレ!」
「あとコレもお願い」
次々と料理を頼むフランツとナッティス。
「奏ちゃんも何か頼んでいいよ」
「あ、はい……」
「私はこの鳥肉料理がいいです」
奏がメニューを指さして店員のバーニッシュに告げる。
「お!いいねぇお嬢ちゃん」
「こんがり鳥脚グリルはウチの看板メニューだよ!」
(父が好きそうな奴だ……)
「あ、それ美味しいよ!バーニッシュそれ三つ頂戴」
フランツが横から顔を出した。
「お願いします!」
奏がバーニッシュにメニューを渡すと
「まかせといて!」
パチッ!
バーニッシュが奏にウインクしてキッチンへ向かっていった。
ゆらゆら揺れるしっぽが遠ざかる。
注文した料理を待つ三人。
「はやくぅ~」
テーブルに突っ伏すナッティス。
「おなかすいたぁ~」
フランツは天を仰ぐ。
「猫耳かわいい……」
客の呼び声に耳がピコッと動く。
バーニッシュを目で追う奏。
その尻尾が揺れながらコチラに向かってくる。
「ナッティス!」
「さっきそこの冒険者に聞いたんだけど」
「マティック先生この街に来てるらしいよ」
バーニッシュが耳をピコピコさせながらナッティスに伝えに来た。
「マティ先生が!?」
突っ伏したナッティスが飛び起きる。
「まてぃせんせい?」
奏がナッティスを見る。
「私の魔法の先生なの!」
ナッティスが目を輝かせて奏を見つめる。
「会えるといいなぁ~」
「先生の先生!」
(どんな人だろ?私も会ってみたいな……)
「あ!料理できたみたい!」
「取ってくる!」
尻尾が真っすぐキッチンに消えて行った。
《ギルド長室》
——扉が閉まる。
中央に据えられた会議用のテーブル。
その奥に一際重厚なデスクが置かれている。
マルコに連れられてトラス。
一歩下がってルスカスとマリドが奥のデスク前へ。
「連れて来たぞ~」
マルコが部屋の女主に声を掛けた。
「久しぶりねトラス」
窓の外に見える古城を眺めていた部屋の女主、ギルド長のカーラが振り向くと
腰まである赤毛の髪がフワリと揺れる。
役職制服の上からでも鍛え上げられた体躯が分かる。
小柄だが凛とした雰囲気を持つ彼女。
誰一人軽口を叩こうとしない。
この部屋で最強は間違いなく彼女だった。
「ギルド長殿!お久しぶりです!」
トラスがかしこまったフリをする。
「わざとらしい……」
カーラが渋い顔で返した。
「カーラ元気そうだな」
トラスがギルド長と書かれたデスクの前に立つ。
「ええ、相変わらず忙しいけど……」
「まぁ二人とも座って」
緊張を解く男達。
トラスとマルコを会議用の長テーブルに座らせる。
「古城の調査報告さっき受け取ったわ」
「ああ、個体数がそれほど多いわけじゃないが、あの辺りは警戒区域に指定したほうがいい」
「あのあたりは観光エリアとも重複する初心者用のランクFエリアだからな……」
「直ぐにランクCエリアに引き上げさせよう」
マルコが腕を組みながらルスカスとマリドに目配せする。
マリドが頷いて移動しようとした。
手をスッと上げてカーラがマリドを止める。
「いや……」
「Bにしましょう」
「おいおい、俺達Cランクパーティで討伐可能なんだぞ」
「君たちは、今日付けでBランクだ」
「それに、君たちはとっくにC+++パーティだったからな」
——依頼達成の数や質によりギルド内部判定としてランクに+を付ける。
三つでランクアップの条件を満たす。
「冒険者達に通達」
「古城周辺エリアの一般市民及びDランクパーティ以下の立ち入り禁止」
「緊急要請・治安維持討伐依頼を出してくれ」
「依頼種別はB種依頼、Cランクパーティは三パーティ以上でレイドを組むように」
マルコが指示する。
「畏まりました!」
マリドとルスカスが一礼し、急ぎ退室した。
「さて……」
カーラが顔の前で手指を組んでトラスを見つめる。
「副長から聞いたと思うが」
「今回の依頼はポーター案件」
「それと、あの娘……」
「このポーター案件の真因に関係する可能性がある」
「あの娘が要人保護対象であることと、この案件との関係は、君のメンバーには秘密にしておいてくれ」
「……ってことは?」
「しばらく面倒みてやってほしい」
「要人保護対象者だ」
「必要な支援はギルドが行う——」
「これは特級依頼だ、君たちは断れないからね」
「すでに帝国から使者が到着している」
「先行して先ほどコレと依頼書が送られてきた」
ドン!
白金貨十枚と金貨の入った袋が置かれる。
「マジか……」
困惑したトラスが頭を抱えた。
「彼らの動きが早いのは知っているだろ?」
カーラが整えられた眉を寄せる。
「ああ、良くも悪くも早いな……」
トラスが険しい顔をする。
「また連絡する」
マルコが席から立ちあがりトラスの肩に手を置いた。
「ああ、わかった」
金貨袋を手に諦めの表情で扉へ向かうトラス。
「また飲みに誘うわ」
急に砕けた表情のカーラ。
「ああ、それは断る」
振り返って手で拒否を示すトラス。
「なんでよ~たまにはいいじゃない」
腕に絡んで甘えるカーラ。
「ったく!甘えんな!」
「もぉ!」
カーラが頬を膨らませる。
「じゃあな」
トラスがそそくさと部屋を出た。
「厄介ね……」
首を振るカーラ。
「全くだ……」
ギルド長デスクの上に置かれた資料。
【マツワカ カナデ】
血縁者
父:マツワカ マコト
マツコト商会会長。
(帝国創生委員会代表役員)
最重要国家要人
母:——————。
《ギルドカフェ》
「うぁぁぁ……」
「めっちゃ食ってるな」
三人のテーブルに合流したトラス。
テーブルいっぱいに置かれた料理の数々。
「ホハフホ、ハヘハホ!」
(トラスも食べなよ!)
ナッティスがトラスに鳥の脚を差し出した。
「食いながらしゃべんな!」
トラスが鳥にかじりつく。
パリッ!
ジュワァ~。
「やっぱうまいなここの鳥」
パリッ!
ジュワジュワ~。
「うん!皮がパリパリでジューシーだね!」
顔で鳥の脚を食べる奏。
「ハハハ……鳥で顔が見えてないぞ」
笑うトラス。
(奏が要人ねぇ信じられんなぁ)
「やあ!トラス」
「飲み物は何にする?」
バーニッシュが追加のサラダをテーブルに置いて注文を聞く。
「ドライエール!」
「はーい!」
鳥の脚陰からバーニッシュをチラ見する奏。
(猫耳……)
「あーサラダ取って~」
フランツがサラダを指差してトラスに頼んだ。
「はい、奏ちゃんもサラダ」
フランツが取り分けたサラダを奏に渡した。
「あ、結構です」
スンとして手で拒否する奏。
「ダメ!ちゃんと食べる!」
ナッティスが奏に詰める。
「ここのサラダ美味しいんだよ!」
「パリサクソウのサラダ」
「食感と味がめっちゃいいのよ」
「ええぇ……」
いやいやながらフォークでサラダを刺す奏。
サクッ!
「お……」
目を閉じてパクっと一口。
パリッ!サクサクサク……。
「おいひぃ!」
奏が目を見開いて二口目。
シャクシャクシャク……!
「なんで!?」
「一口目と二口目で食感が変わるの?」
目をひん剥いて振り向く奏。
アハハハ!
「おもしろいでしょ?」
ナッティスが奏の顔で笑う。
ハハハハハハハハ!
「なんて顔してんだ!」
トラスも奏の顔を見て噴き出した。
クルッと振り向く奏。
「コラ!こっち向くなぁぁぁ」
アハハハハハハハ!
フランツが腹を抱える。
三人の笑い声が店中に響き渡った。
——その後、マルコが会計の値段を見て冷や汗をかくことになる。
「三十エレクになります」
「お、おぅ……」
会計をするマルコの手が震えた。
バーニッシュに見送られ奏とトラス達はギルド前の広場へ。
「腹もいっぱいに成ったし買い物でも行くか」
「うん!行く!」
奏が元気よく答える。
「行く行く!」
ナッティスも続く。
「ほれ、受け取れ」
トラスが金貨の入った袋を渡す。
「獲物の素材を売却した金だ」
自分の手を鎌の形にするトラス。
「え!いや、受け取れません!」
首を振る奏。
「遠慮するな!奏の取り分だ」
袋を差し出すトラス。
「私は何もしてないというか」
「ただ気がついただけで……」
奏の手を取りその手に袋を握らせる。
「あれが無ければ俺は今ここに居ない」
「あれはお前の手柄だよ」
トラスが奏の肩に手を置く。
「そうよ受け取って奏ちゃん」
フランツが腰を屈め奏に目線を合わせる。
「あれは私も気づけなかった」
「奏ちゃんのおかげで私達はトラスを失わずに済んだのよ」
ナッティスが寄り添う。
「せんせい……」
奏がナッティスを見る。
「そういう事だ!」
「仲間と一緒に戦った報酬だと思ってくれ」
奏が再びトラスの笑顔を見る。
「うん!ありがとう」
金貨の袋を握りしめる奏。
笑顔で深々とお辞儀する。
奏が袋を開いて中を見る。
フランツが右から、ナッティスが左から覗く。
「一、二、三」
「四……」
「に、二十枚入ってます」
「「スゴ!」」
フランツとナッティスが驚く。
「あの延髄鎌キリは亜種だったらしい」
「通常の十倍だそうだ」
トラスが素材売却の証明書を見せる。
「あれ、狼も他の二体も亜種だったの?」
「ああ、見た目はほとんど変わらないが」
「魔石の質が通常の五倍あるらしい」
——魔物からは魔物固有の魔石が取れる。
トラスは濃い色の魔石を袋から出して見せた。
「よく倒せたよね……」
キョトンとするナッティス。
「そうだった」
「俺達、今日からB級だからな」
口をへの字に曲げるトラス。
「「へ!?」」
顔を見合わせるナッティスとフランツ。
喜ぼうと思った奏が首を傾げる。
「マリドが明日、新しい証明書発行するから取りに来いって」
三人が残念そうな表情で肩を落とした。
「あっちゃ~引き伸ばし作戦……」
フランツのつぶやきに
「失敗……」
ナッティスが合わせる。
「どういう事ですか?」
「ランクアップ嬉しくないの?」
奏が目をパチクリする。
「B級になると依頼件数にノルマが発生するし……」
トラスがナッティスの口についたソースをハンカチで拭いてやる。
「ありがと」
「指名依頼が増えるから忙しくなるんだよね……」
ナッティスがトラスの手を握る。
「特級依頼とかもあると断れないのよね」
フランツもナッティスと反対側でトラスの腕に手を絡める。
「オトナのじじょう……」
三人の軽いイチャイチャを見て、思わず口にする奏。
「それだけ3人が強いって事ですよね?」
「助けられる人も増えたって事?」
————!
「そうだな!」
「奏ちゃん素敵!」
「流石我が弟子!」
明るくなった三人の表情に奏も笑顔になる。
「よし!ギルドのホテルにチェックインしたら買い物に行くか!」
「「「おー!!!」」」
また賑やかな女子三人の声が広場に響き渡る。
「当、ギルドホテルのお部屋は魔法にてカスタマイズ可能でして、パーティルームと呼ばれるコンドミニアム形式が主な部屋の作りに成っております」
「この度はカナデ様を暫定パーティメンバーとして四ベッドルームの四LDKをご用意しております」
というのがフロントスタッフの説明で、ギルドの計らいでペントハウスが予約されていた。
各自装備を置いて普段着でリビングルームに集まった。
フランツは、ナチュラル素材のワンピースに細身のパンツを合わせていた。銀髪は羽根飾りのマジェステでまとめ、片側にだけ編み込みを垂らしている。
トラスは袖をまくったシャツに黒いパンツ。背中側の腰には短剣を横向きに差していた。
ナッティスはホットパンツに明るい着流しを合わせ、ゆるく編んだ髪を両肩へ垂らしている。
奏は三本のピンクラインが両腕に入ったジャージに、推しキャラのTシャツ。
デニムのキュロットは来た時のままだ。
キッズ用のダッフルコートと黒タイツだけ脱いでいた。
「おお~みんなオトナカッコイイ……」
皆がリビングのソファに座った所でトラスが話し始める。
「さて」
「奏をうちのパーティで面倒見る事になった」
「ギルドからの正式な指名依頼だ」
「保護者が現れるまでの期限付きだがな」
「奏を連れて任務や依頼をする事は可能だが」
「ギルドの承認は取る必要がある」
「これは決定事項だから拒否はできない」
「って事は……」
ナッティスがトラスの顔を見る。
「特級依頼だ」
「やっぱりか……」
フランツが奏に目をやる。
「私なんかまずかったですか?」
奏が不安な顔をする。
「いやいや、親父さんか保護者が見つかるまでの世話役ってことだ」
トラスが笑顔で安心させると奏も表情が和らいだ。
奏が立ち上がると
「改めて、よろしくお願いします」
髪を揺らしてお辞儀する。
「まかせとけ!」
トラスが自分の胸を叩いてニコッと笑う。
「奏ちゃんほんとうに十二歳?」
フランツが奏のほっぺをプニプニしながら問いかける。
「まったく貴族の子供みたいだね~」
ナッティスが感心しながら温かく見つめる。
「え~っと……」
顎に手を置き考える奏。
「子供とおとなを行ったり来たりしてまして……」
「自分でももどかしく……」
「ん~っと」
「こどな!」
「ってとこでしょうか」
真顔で悩んで答える。
ハハハハハ……!
バンバンバン!
「それ!おもしろーい!」
ナッティスがソファを叩いて笑う。
「いいな!それ」
トラスがニコニコ笑顔。
「奏ちゃんが居ると笑いが絶えないわね」
フランツが奏を膝に座らせた。
(お母さんみたい)
「よろしくね奏ちゃん」
ギュッとするフランツ。
「よろしくね」
ナッティスが奏の膝に手を添える。
「困ったら何でも言ってくれよ」
トラスが親指で自分を指さした。
「よし!買い物!」
トラスが立ち上がる。
「やっと行ける!」
奏もフランツと立ち上がり、真っ先に部屋を飛び出した。
四人はホテルを出て広場から更に街の中心部にある市場へ。
「このパンが、一エレク?」
奏がパン屋でお勉強。
「そうそう」
「この丸いパンが、一エレク」
ナッティスが答える。
「こっちの長いパンが、三エレク」
なるほど
「量り売りもしてくれるんだ」
「百グラム三エレク」
「水も一エレク」
「コップ一杯のお酒やジュースが二エレク」
「お酒には税金が掛るけどね二杯目からは三エレクになる」
持参したノートにメモを取る奏。
「なるほど~」
次に魔道具ギルドへ。
不思議な魔道具を見学する奏。
皆それぞれ便利な魔道具に夢中になる。
「あ、このキャラクター入りのマジック水袋可愛いね」
フランツがナッティスに見せる。
「それ、最近流行りのマツコト商会マジックバッグシリーズね」
「最近はこのハチ割れの猫のキャラクターが人気だよ」
ナッティスが水袋を受け取って商品紹介の看板を指さした。
「マツコト?」
奏が耳なじみのある名称に反応してナッティスの指した方を見る。
【マツコトマジックバッグシリーズ】
新作!マジックウォーターバッグ(保冷/保温)
制作販売:マツコト商会
開発者名:マツワカ マコト
「凄い便利そうですね……保冷も保温も出来て……」
「マツコト商会……って!!!」
「ちちが!!!」
(父が作ってるの!?)
思わず声が出る奏。
「ちちがどうかしたのか?」
慌てて看板の前に商品を積んで父の名前を見えなくする。
フランツが焦る奏を見る。
「あ~ちちが……おっぱいが成長するアイテムはないかなぁ~って」
ハハハ……。
(コレって私なんかわかんないけど……やばい?)
「マツワカ……父って有名人?」
その後も、武器屋。
マツコト商会 マジックレーザーソード。
防具屋——。
マツコト商会 マジックシールド。
薬屋——。
マツコト商会 緊急救急箱。
魔導書専門店。
マツコト商会 マジックプレート式魔導書記録板(タブレット式の魔導書)
屋台——。
マツコト印 ハチ割れ猫キャラ 人形焼き。
等々、四人で散策して買い物をした。
(父!!!!!!)
(ヤリ過ぎ!!!!!!)
しっかり買い物しながらもマツコト商会の勢いを目にした奏。
「超有名人やん……」
奏は呆然とする。
『異世界中で使われている技術だよ』
あちこちの店で店員が言っていた。
「これじゃ父……帰れないじゃん」
「どうした?奏」
トラスが店から出て来た奏に声を掛ける。
「ほれ」
フルーツのドリンクを手渡すと黙って受け取る奏。
店前のベンチに二人で座る。
「ちょっと疲れただけ……」
「そっか……」
黙って残りの女性陣を待つ。
「おいおいおいおいおい!」
トラスが出て来た二人をみて声を出した。
「どんだけ買うんだよ……」
疲れた顔のトラス。
「トラス~マジックバッグに入れて~」
両手に抱えた商品で顔が見えないナッティス。
「わたしも~」
フランツも同じ状態だった。
トラスが買ったばかりのマツコト商会のロゴ
【松COT】
と書かれたマジックバッグに商品を入れる。
ズズズズズ……。
カップの底をストローですする奏。
「やっぱまずいよねぇ……娘がココに居るのは」
コツコツコツコツコツコツ……!
石畳の上を歩くヒールの音が聞こえる。
奏が音の方を振り向く。
市場の路地から出て来た女性が人込みの中をコチラに向かって歩いてくる。
奏の前を颯爽と通り過ぎる金髪の女性。
スンスン!
(この匂い!!)
「父の女!」
奏は立ち上がると人込みに消えそうな金髪女性を目で追う。
「まって!」
カップをベンチに置き走り出す奏。
「奏ちゃん?」
ナッティスが気づく。
荷物を全部トラスへ押し付け、奏を追いかける。
ガチャン!
戦士の装備にぶつかる奏。
『オイ!』
「ごめ……」
言い切る前に女を追いかける。
駆けて来たナッティスが戦士に謝った。
見失いそうになるも必死に追いかける。
「待って!」
「お願い!待って!」
「かなでちゃーん!」
ナッティスの声が後ろからするが奏の耳には入っていない。
広場に抜けて周りを見渡した。
「居た!」
全力で走る奏。
バッ!
奏は建物に入ろうとする金髪女性の腕を掴むと
「父を返して!!」
渾身の声を彼女にぶつけた。
女性は驚いた表情で振り返る。
「奏……ちゃん?!」
20261103
誤字修正、可読性の向上の為の修正。




