第24話 会食
数日後、問題となる会食の日がやってきた。
最近はレオン様と会うときも作業のしやすさを優先した服を着ていたけど、さすがに今日はきちんとしたものを着ている。
というより、アリアによって会食にふさわしい衣装というものを着せられてしまった。
それに加え、以前レオン様からプレゼントされたアクセサリーまで身に着けているので、一体どこのパーティーに出席するのかという格好になっている。
「正直、気にし過ぎだと思うのだけどね」
ソファに座ってレオン様を待ちつつ、左腕にはまるブレスレットを見る。
これはレオン様が念のために、と渡してくれた魔道具になる。
毒を防ぎ、身を守るための結界まで張ることができるという優れもの。
似たようなものは以前から身に着けていたけど、どうやらそれとは比べ物にならないくらい性能が高いらしい。
実のところ、今日の格好はこれを自然に身に着けるためというのがメインの目的になっているそうだ。
とはいえ、いくら微妙な関係にある相手との会食だからといって、ここまでするのはどうしてもやりすぎだと思ってしまう。
「待たせてしまったかな?」
そんなことを考えていると、ほどなくしてレオン様がやってきた。
「いえ、ちょうどいい頃合いです」
そう言って立ち上がり、レオン様のもとへと向かう。
実際、準備を終えて一息ついたところなので、私的にはかなりいいタイミングだった。
「それなら良かったよ。
じゃあ、あまり気は乗らないけれど向かおうか。
あー、それと、君にも不快な思いをさせてしまうかもしれないから、先に謝っておくよ。
本当なら、君のためにも強く出るべきだと思うけれど、今さらそんな対応を取ると、より面倒なことになりかねなくてね。
だから、ごめんね」
「は、はぁ」
レオン様の言葉に戸惑いつつ、差し出された手を取る。
このタイミングでさらに気が重くなるような言葉は聞きたくなかったのだけど、それをあえて言ってくるからには私が考えていたよりも酷いのかもしれない。
そんな憂うつな気持ちとともに、レオン様にエスコートされて会食の場へと向かって歩き出す。
いやまあ、単に屋敷の食堂に向かうだけなのだけど。
会場となる食堂に着いたものの、約束の時間になってもレオン様の叔父の何某はやってこなかった。
で、十分以上遅れて姿を現し、こちらに一言もなく、何事もなかったかのように席に着くのを見て、これは無理だと察した。
その態度に対し、レオン様も諦めたように何も言わないのが、これまでの境遇を物語っているようだ。
おそらく、事前に不快な思いをさせると謝られたのは、こういった些細な積み重ねも含めてのことなんだろう。
そんな微妙な気持ちを抱く中、相手が席に着いたことで、特に言葉もなく会食がスタートした。
「レオン、来月の初めにパーカーの視察に向かってくれ」
微妙な雰囲気で進行していた会食の途中、レオン様の叔父の何某がようやく今回の目的らしきものを口にする。
ここまでずっと、雑にレオン様を当てこするような話題ばかりを出され、いい加減にうんざりしていたので少しホッとした。
ある程度は雰囲気が悪くなることを覚悟していたとはいえ、限度というものがあるからね。
「パーカーの視察?
急にまたどうしたのですか?
特に視察が必要な時期でもないと思いますが」
「代官が交代するという話が出ていてな。
後、パーカーで作物の収穫量が落ちてきているという報告もあるから、その調査も兼ねてだ」
「代官の交代と収穫量の低下ですか。
私の方には連絡がなかったようですが?」
「あそこは代々うちとの付き合いが深いからな。
交代についての相談とともに連絡が来たんだ。
話が正式に決まれば、お前の方にも連絡が行くだろう」
「そうですか。
では、予定に入れておきますよ」
……いや、本題に入ったところで雰囲気は変わらなかったね。
というか、向こうの態度が間違いなく当主に対するものじゃないし。
確か、パーカーというのは、公爵領にある町の名前だった気がするけど、そこの視察を命じるような真似をするなんて。
「あぁ、それから視察には彼女も同行させるといい。
せっかくだし、新婚気分で遠出するのもいいだろう」
「!?」
我関せずという感じで、気配を消して食事を進めていたのに、突然話に出てきて驚く。
幸い、こちらの反応を向こうは気にしなかったみたいだけど、場の雰囲気も含め、本当に心臓に悪い。
「プリムラも一緒にですか?
確かに二人で遠出するような機会はなかったですが、視察に同行させろと?」
「夫婦で領地の視察に向かうのは何もおかしくないだろう。
それに、今後は他家に夫婦で向かうこともあるだろうからな。
なら、公爵領の視察に同行するのはいい機会だろう」
えーっと、この人ってこれまでそういうことを散々妨害しようとしていたんじゃなかったっけ?
それがいきなり、いい機会だから二人で視察に行ってこい?
いや、怪しすぎでは?
「わかりました。
確かに、いい機会ではありますからね。
彼女の予定を確認して、可能なら同行してもらいますよ」
「ああ、そうするといい。
収穫量の落ち込みの調査も、お前の得意とするところだろうしな。
せっかく、錬金術なんてものをやっているんだ。
この機会にその成果を見せてくれ」
にもかかわらず、より違和感を感じているはずのレオン様はあっさりと同行の件を了承してしまった。
一応、予定を確認して、なんて言葉を加えているけど、私の予定がスカスカなのはレオン様も向こうも承知の上だろうし。
というか、最後に加えられた言葉と視線がこちらに対する嘲りを隠しもしないものだったんですが?
えっ、本当に大丈夫なの?




