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オリジナル・バトルロワイアル  作者: 八緒藤凛
一日目
27/54

25 雷撃少年

1


「もう一体くらいっ、作っとこっかなっ!」


 殺害報告と消滅報告。ゴーレムに関する全ての情報は脳内へと集積されるらしい。兵丹七葉(へいたみ・ななば)は気分上々だった。墓場で作り上げたゴーレムの内一体が、首尾よく誰かを殺したようだ。そのゴーレムも誰かに消されてしまったけれど、消費と対価を考えれば十分にプラスだ。


「てかっ、作りたいっ」


 七葉の前には既に一体、ゴーレムが歩いている。材質石。火力25、速度15、耐久60のトントン。名前の由来はそのままストーンのトンからとった。森方面へと走っていった材質木。火力15、速度60、耐久15のモックンと比べると速度は四分の一だが、耐久力は四倍。


「どっかっ、ないかなっ、いいとこっ!」


 インドア系女子の七葉にとって、炎天下の中歩くだけでも苦痛だ。殺し合いという緊迫要素はあまり関係がない。他人の行動には無頓着だから。ただ自分の創作物の働きを邪魔されたくないだけ。


「なっ……! つくづくデタラメだな!」

「おっ?」


 そんな七葉の前に現れたのは少年一人。青い髪、無垢な瞳、整った顔立ち。そして驚きに満ちた表情。七葉の前を歩く石の巨人が、彼の顔をそうさせていた。


「ふぅ……。聞きたいことが山程あるな。まずは自己紹介からはじめよう、おれの名前は――」

「やっちゃえっ!」

「ドオオオオオ!」

「はあああああああっ!?」


 無論、七葉に話を聞く気はなかった。



2


「なんでだよっ! 普通こんな得体の知れない場所なら情報が欲しいだろっ!?」

「いらないっ、死んじゃえっ、ころせっ!」


 七葉の無邪気な指示に従って、石のゴーレムトントンが少年へと襲いかかる。だが速度に15しか振っていないそのゴーレムの動きは、一般男子にとって躱すのは容易い。


「待て待て待て! 落ち着け冷静になれ! 当たったら死ぬからこれ、な?」

「わかってるよっ!? 分かっててやってるんだよっ!」

「あっタチ悪いやつだこれ!」


 少年は何かを察したのか諦めたようにその場に立ち止まって、小さく息を吐く。


「出来るかなー失敗したら死ぬよなこれ、知らないぞーおれは! 能力なんてうさんくっせえからなっ! でもこれがお前の能力の産物ってんなら、おれの能力だって発動する可能性はなきにしも――」

「いっけえええっ!」

「話聞けっ!! もういいよお前!」


 手を前に出す。念じる。光る。空間を切り裂く雷鳴がほとばしった。空気が震える。


「うわっ、すごっ」


 七葉ですら思わず見とれてしまう。少年の手から放たれた雷撃は、石のゴーレムに直撃した。


「ははっ! 俺つえええってやつかこれ! 見た? 見た!? これなら!」


 能力使用は初めてだったらしい。少年は七葉と同じくらい無邪気に笑う。


「ドオ?」

「でもさっ、石に電気ってっ、どうなのっ?」

「え?」


 煙の中から現れるゴーレム。外傷も内傷もほぼ無傷に近いその擬似生命体の殴打が、少年へと襲いかかった。


「あっ、死んだなこれ……」


 覚悟の瞑目の直後、大きな衝撃と共に少年の意識は途切れた。



3


 タックル、からの完全防御。


「……間に、合った」

「だれっ!?」


 石のゴーレムは全長二メートルはある。それに加えて体躯の良さ、丈夫な下半身。およそ人間でこのような体型の人間がいたら、間違っても敵対はしたくないだろう。同じ様な体格を持つ者でなければ。


「お前が、悪か?」


 突如二人の間に割り込んできた巨体の男が、七葉に問うた。


「わたしっ!? 違うよっ!?」

「ドッ」

「じゃあ、あいつか」


 次に傍らで倒れる少年を指差す。

 

「あのこもっ、ちがうとおもうよっ」

「ドッ」

「……なら、いったい」


 誰が悪なんだとでも言いたげな真摯な瞳を携えて、男は構えを解いた。 


「だれもっ、悪くないよっ」


 男の名前は湾田守蔵(わんだ・もりぞう)。能力名【絶対防御】

 前面からくる能力関連の攻撃の威力を一パーセントにまで軽減する能力。


 守蔵は突き飛ばした少年を見る。自らのタックルの影響で気絶しているものの、命に別状はなさそうだ。ズキズキと痛む自身の右腕を見ると、青い痣が出来ていた。石のゴーレムの攻撃を一パーセントにまで軽減したとはいえこの威力。まともに受けたら絶命は必至だろう。


「おじさんっ、邪魔っ」

「おじさん、じゃない」

「むーっ……」


 石のゴーレムは、盛んに少年を殴ろうとしているが、全て防いでやる。この場での悪は誰だ。一見この少女が最有力候補だが、本人は否定している。悪の自覚のある悪でなければ、粛清する意味が無い。


「しつこいなっ」


 七葉の顔には不機嫌さが蓄積されていった。自分の邪魔をする目の前の男に対する苛立ちが募っていく。だが現状、七葉にそれをなんとかする手段はない。ゴーレムへの命令はただ一度のみで、標的を変えようにもそれは不可能なのだ。そしてその事実に徐々に守蔵も気付く。


「不便な、やつだな」


 守蔵は少年の身体を軽々と持ち上げると、その場から走って離脱した。


「あっ」


 石のゴーレムは当然二人を追っていく。だが敏捷性の乏しいトントンでは到底追いつくはずもなかった。



4


「おい、起きろ」


 北側住宅街のはずれに位置する小さな病院で、守蔵は青い髪の少年を下ろした。後ろを確認したが、ゴーレムは視界に見えない。どうやら脚は早くないようだ。


「んー……むにゃむにゃ」

「おい、起きろ」


 身体をゆすっても目を覚ます気配はない。仕方ない、少々手荒だが強制的に起こすとしよう。あまりここで時間は取りたくない。


「フンッ!」

「あぎゃっ!!」


 脳天にげんこつ。少年は頭を抱えて飛び起きた。


「はっ、なんだお前! さてはあの化物の第二形態だなっ!? あの子はどこいったっ!?」

「なにを、言ってる」

「言葉もたどたどしいし、決定かこれ!」

「うるさい、もう行く」

「あっ、待てよ!」


 守蔵は荒ぶる少年を残し、その場を去った。後ろから何かを喚いてる声が聞こえるが、聞こえないフリをしてやり過ごす。自分は確固たる悪を粛清しなければならない、少年の状況把握に付き合う気もなかった。


 先程の少女はどうだろう。純粋無垢な悪ならば、あまり粛清する意味はない。頭で理解した上で悪に手を染める、そんな人間が大嫌いだ。他人の為でもない、正義の味方という訳でもない、守蔵はただ自分がそうしたいからそうするだけだ。


「待てってば! おい!」


 ……これは驚いた。先程の少年は自分の後を付いてきたようだ。意識から外すあまり、今の今まで気づかなかった。


「助けてくれたんだろ? ありがとな、自己紹介くらいさせてくれ! おれの名前は――」

「興味、ない」

「おおい!」


 少年の声を一蹴し、足を前へと進める。


 この会場には41の人間が居て、その内何人が悪なのだろうか。己の標的に成り得る存在はどこにいるのだろうか。他人に危害を加える存在は、今何をしているのだろうか。


「ふぅ……。今から死ぬってのにいいんだ! それで!」


 その内一人は自分の後ろにいて、今まさにその力を行使していた。



5


「なん、だと」


 突如背中に受けた衝撃に驚きを隠せない。自分の背後に居るのはあの少年だけだ。状況に流されただけの、ただの殺し合いの被害者であるはずの青い髪の少年。その少年が自分へと攻撃してきたのだ。


「おれの名前は雷岩陽仁(らいがん・あきと)! 青葉市立戦雅高等学校1年生だ!」


 バチバチと火花が舞っている。ビリビリと静電気のような感覚が守蔵の背中を襲っていた。いや、静電気の何十倍もの痛みが背中から全身へと広がっていく。


「何を、した」


 守蔵は、陽仁の攻撃手段を知らなかった。

 住宅街を歩いていると、曲がり角の向こうからくる空気の震えとほとばしる閃光を確認した。急いで角を曲がった時には既に、石の化物がその手を陽仁に向けて振り下ろす直前だったのだ。あの震えと閃光はそういうことだったのか。だが、今更理解しても遅い。


「教えてやるよ! おれは【サンダーテイカー】だ。まだやれるのか? 歯ごたえのあるやつだなこれ!」

「お前が、悪だったか」

「悪? なんだよそれは。おれは強い、それだけでいいだろっ!?」


 背中に受けた雷撃は、守蔵の内蔵を半分以上破壊していた。電撃を食らって生きていられる方がどうかしている。焦げ付いた喉が、呼吸を阻害する。だが、前を向いてさえいればこれ以上の損傷はないはず――


「情報も大事だけど、やっぱ戦いだよな! 壮士にも見せてやりたいよこれ!」

「だれ、だよ」


 守蔵には攻撃手段がない。一般的な人間としての殴打や蹴りを見舞うことは出来るが、それをするには陽仁との距離が離れすぎていた。それに満身創痍のこの身体では、たった10メートルの距離でも遠く感じる。


「じゃあなおじさん! 奇襲が卑怯とか言うなよ、これは戦いだからな!」

「おじさん、じゃない」

「そこはどうでもいいんだよ!」


 陽仁が親指と人差し指を立て、守蔵に向けてピストル状に構えられる。

 守蔵はその雷撃を防ぐべく、全神経を集中させた。


「が、っ」


 脳天に衝撃。前からくると思っていた攻撃は、上からきた。


「気をつけろよな。雷ってのは上から来るもんだぜ」


 守蔵はその巨体を支えきれず、その場へと倒れこんだ。何が絶対防御だ、限定的過ぎて使い物にならない。己の無力と不運を嘆きながら、守蔵の生命活動は停止した。


「ふぅ……。やれるなこれ!」


 陽仁は小さくガッツポーズをするとその場から走り去った。



6


 雷岩陽仁(らいがん・あきと)は自分の能力が不安だった。

 電撃を司るなど、人間の身にしてあり得ない。だがそのあり得ない事があり得る場所だと、石のゴーレムとの戦いで理解した。ならばもう戦うしかないじゃないか。


「応用も利きそうだし、完璧だなこれ」


 自らの右手を眺めつつ、道の真ん中を歩く。早く次の相手と戦いたい。手に余りすらするその能力を限界まで引き出したい。そんな思いが陽仁の歩みを早くしていった。




No.42 湾田守蔵(わんだ・もりぞう)26歳 退場

【能力名】絶対防御

【能力】 自身への攻撃の威力を、全て一パーセントまで軽減する能力。ただし「前面からの攻撃にしか適用されない」

【タイプ】パッシブ

【系列】 支援回復系



No.29 兵丹七葉(へいたみ・ななば)17歳

【能力名】古代の錬金術士

【能力】 任意のタイミングでゴーレムを作製することが出来る能力。作製にかかる時間は一体辺り一時間で、その間自身は無防備になる。完成したゴーレムには初回一度のみ命令を組み込み可能で、今後の変更は一切不可。

【タイプ】アクティブ

【系列】 物質操作系



No.39 雷岩陽仁(らいがん・あきと)16歳

【能力名】サンダーテイカー

【能力】 雷撃を司る力得るを能力。

【タイプ】アクティブ

【系列】 銃撃系



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