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オリジナル・バトルロワイアル  作者: 八緒藤凛
一日目
17/54

16 情報躍進

1


「あー、疲れた。結局何も食べれるもんないし……」

「缶詰の一つでもあると思ったけど、意外とないね」


 男の襲撃を退けた後も、二人は森の中の小屋の物色を続けていた。

 それが今終わって、L字型のソファに座ってくつろいでいる。


「まあでも、これは大きな収穫だったと思うよ」

「そうかなぁ、あたしパソコンわかんないもん」

「へえ、珍し」


 二人の前には小型のノートパソコンが置いてある。机の引き出しから出てきたそれは、意外にも電源が点いた。逢坂秀都(あいさか・しゅうと)は手慣れた動きでキーボードとタッチパッドを弄っている。


「なんか、慣れてるね」

「大学生だからね」

「へー! やっぱり?」

「やっぱりって?」


 思えばこの会場で出会ってから、二人はお互いのことを話していなかった。勿論、状況が状況なだけにそんな余裕が無かったからと言うのもあるが、やはりまだどこか現実味に欠けていたのかもしれない。


「高校生にしては落ち着いてるし、でもおっさんって感じでも無かったから。大学生なら納得納得」

「それは褒めてるの?」

「さーあ」


 ふふふと小さく笑った隣の少女、高坂星華(こうさか・せいか)は自分の青いリュックサックから乾パンを取り出すとそれを食べはじめる。「まっず……」と小さく呟くのが聞こえた。すぐに水を飲んでいる。


「あれ? ネット繋がるかも」

「え、ほんとに?」


 ほぼ0に近い期待を込めて押したブラウザのアイコン。起動に時間がかかってはいるが、少しずつ文字が表示され始めている。その最上部に書かれた小さな文字は。


「この回線は、この会場内でのみ使用できます……か。まあ、だよね」

「ん? どういうこと?」

「つまり、この殺し合いの行われてる場所限定の回線ってこと、広さはわかんないけどね」

「いや、つまりになってないんだけど」

「うーん。まあ、外の世界には繋がらないってことだよ」

「ええ、意味ないじゃん!」


 ガクリ、と大げさに頭を垂れる星華を横目に、秀都はページが表示されるのを待つ。



2


「退場者リスト……会場地図………能力系列……」

「なになに?」


 表示された三つの項目を、秀都は読み上げる。横から星華が覗き込んできた。


「もしかして、これは……」


 生き残るにしろ、ゲームをぶち壊すにしろ、重要な情報になるかもしれない。


「高坂さんって、地図持ってたよね。ちょっと貸して貰っていいかな」

「おっけー」


 秀都は自分の荷物から、自分に支給されていた名簿を取り出しつつ、星華から一枚の紙を受け取る。これらの確認は出会ってすぐに済ましておいたが、どちらも情報が完全ではなかった。


 例えば地図は、ほぼ全てが森で覆われていて、その中央右寄りの湖、北西方面に山、西に墓場が記してあるくらいで、他には何もない。南側と西側の不自然な切れ目から察するに、これは完全な地図の右上部分のみなのだろう。


 秀都は、会場地図と書かれた文字をクリックした。たっぷり十秒程のロードを経て、四分割された白い枠と、そのそれぞれに入力欄のある画像が写った。


「なにこれ真っ白じゃん」

「うん。つまりここにコードを入れればいいんだな」

「理解早っ」


 星華から受け取った地図に記されていたコードを、枠の右上部分に打ち込んでいく。エンターキーを押すと同時に、画像の右上部分が鮮明に写し出された。


「小屋……はここら辺か。高坂さんの地図には、小屋の場所なんか書いてなかったよね」

「うん、山と湖、あとお墓だけしか書いてない」

「ここから湖を迂回して南下すれば神社もあるみたいだな……後で移動してみる?」

「あたしは付いてくよ」

「はは、心強いな」


 秀都が移動を提案したのには理由がある。この会場に来てからそれなりの時間を経ても、未だに出会えた人間の数は星華を含めて二人。本当に殺し合いが行われてるのかすら疑問に思えてくる。だが今頃どこかで、殺された人間がいるのかもしれない。それに、この地図の反映方法を見るに、残りの三枠の地図を持っている人間が居るはずだ。それを探すのを当面の目標とするのも悪くない。


「さて、と……」


 秀都はページを戻して、名簿を手に持ち、退場者リストの文字を押した。



3


「なっ……」


 そこには十もの名前が並んでいた。

 思わず小さく声が出てしまう。冷や汗が頬を流れていくのを感じた。


「へえ、意外とみんなやる気なんだ」


 隣で画面を覗き込んでいる少女は、特に驚きもせずにそう言う。それどころか、少し感心しているようにも見える。


「このままだと、意外とすぐ終わっちゃうかもしれないね」

「それは……、いいのかな」


 秀都の考えでは、生き残ったところで十中八九無事では済まない。何らかの災難が身に振りかかるはずだ……と。だが実際にこの進行具合を目にして、少し心が迷う。突破口の見つからない打倒殺し合いに身を傾けるのもいいが、このまま何事も無く終われるのならそれはそれで。


「いやいや、駄目でしょ」

「ん?」

「体育館での女の人さ、ゲームマスターの中じゃ私だけなんだよ、って言ってたじゃん」

「あのやたら笑う人? 言ってたねそんなこと」

「それって、こんなゲームが他のとこでも行われてる……って事になるよな。だからさ」

「うん」

「きっと他の場所でも俺みたいな事考える奴はいると思うんだ。だから、ここは俺が潰すよ」

「え、どういう意味?」

「さあ、他のゲーム壊し組への責任かな?」

「うん、意味わかんない」

「ははは」


 秀都自身、自分で何を言っているのかよく分からなかった。今の考えすら、発想を飛躍させすぎたかなと少し思う。だがそれでも、正当な人間の倫理観として、この殺し合いを潰さなければと思い詰めていた。今ここでこうしている間にも、どこかで誰かが死んでいる。それを思うと、何故か少しの焦燥感を感じるのだった。


「俺、いつからこんな真面目になったのかな」

「何いってんの、秀都くん。ここでそんな考え方出来るんだから、きっと生まれてからずっとだよ」

「はは……」


 星華の口弁に、思わず苦笑いしてしまう。リュックの中からボールペンを取り出して、不完全な名簿に退場者の名前を埋めていく。



4


「こんなもんかな」


 空欄だらけの名簿に退場者の名前で十埋めて、合計十五の名前が埋まった。残りの枠は二十七。死者の名前は赤で書いたので、随分と明るい名簿へと変貌する。


 No.1からNo.42までが一人一人に割り振られているらしい。その数字は、初めから書いてあった。それと。


「連、秀次……」

「ん、どうした?」

「なんでもない! ……ってか、なんでこの人達は、最初から名前書かれてんの?」

「さあ、ランダムじゃないかな」


 今書き込んだ死者十人以外で、秀都に支給された名簿に初めから書かれていた名前は五つ。No.7の烏丸千尋(からすま・ちひろ)、No.13の周防龍臣(すおう・たつおみ)、No.19天条千草(てんじょう・ちぐさ)、何故か星華が反応したNo.40連秀次(れん・しゅうじ)。そしてNo.1逢坂秀都(あいさか・しゅうと)。


 何故自分の名前が初めから表記されているのか分からない。恐らく、この名簿も地図と同じように複数人に分けて支給されていて、偶然自分の名前が書かれていたものが配られただけなのかもしれない。


 秀都はしばらく名簿を眺めると、それを元々名簿の入っていたファイルに挟んでリュックへとしまう。そして、ページを戻して最後の項目をクリックした。


 能力系列。実は秀都が最も気になっていた項目である。能力をあげるからね、と言われてこの場に放り出されたは良いものの、自分も星華も、さらに言えば先程襲撃してきた男も能力は分からないと言う。能力とやらの不認識が、秀都が未だに殺し合いの場所だという現実味に欠けている最大の理由でもあった。


 数十秒のロードを経て、ずらりと文字が並ぶ。


「うっわ、頭痛くなりそ……」

「そうかな」

「そうだよ!」


 星華はページを見るやいなやソファへともたれこむ。元々このパソコンが小さい上に、これだけ文字を並べられたらダウンするのも無理は無い。


 秀都は、それを上から読んでいった。



5


 能力系列について。


 キミ達に支給してある能力は、大きく十種類に分けることが出来るんだ。実はこれはリュックサックの色と連動してるから、慣れてきたら相手のリュックの色を見れば、大体どんな能力か分かっちゃうって寸法さ。面白いでしょ? あはは、結構考えたんだよね。


 で、その肝心の能力なんだけど……実はこれをここに書くかは結構迷ったんだよね。ふふふ、ほら、パソコン見つけられた人とそうでない人の差が開いちゃうじゃん? まあでもそこは運だからね、あはは、ちゃんと書いておくから安心して。


 あ、余談だけど、会場内にパソコンは合計で十個置いといたからね。コレクターになるもよし、自分の分を確保したら他は破壊するもよしだよ! 自分以外は殆ど敵だからねー。あーでも今回は生き残り三人までだっけ? じゃあ一応手を組むのもありだね? あはははは。


 ごめんごめん、話それちゃった。じゃあここから下に十種類一気に書いておくから、参考にしてね。ふふふ。



①爆発系

 主に爆発に関する能力。


②銃撃系

 主に銃撃に関する能力。


③情報系

 主に脳内への情報獲得に関する能力。


④物質操作系

 爆発、銃撃を除く物質に関する能力。


⑤能力操作系

 今回の特別支給品である、特殊能力について影響する能力。


⑥支援回復系

 主に攻撃ではなく、治癒や補助的な作用を呈する能力。


⑦身体変化系

 身体や身体能力を変化させる能力。


⑧精神変化系

 自己、もしくは他人の精神に干渉する能力。


⑨生存確約系

 特定の条件下において、他人の自分への危害行為を防ぐ能力。


⑩規格外

 上記のどれにも当てはまらないもの。予測不可能。



 こんな感じかな! どの能力がどれに当てはまるのかは自分で考えてね、あはは。どの系列がどのリュックの色なのかも、自分で考えるように! ふふふ。


 じゃあ、殺し合い頑張ってね。



6


 この頭にくる文章。体育館での女の口上を思い出す。どうやらあの女が直々に執筆したものと見て良さそうだ。笑いまで再現されてるのは謎だが。まあその文体はともかく、情報としては大いに役立ちそうな内容だった。それら全てを頭に叩き込むと、秀都はパソコンの電源を切って、リュックの中へと仕舞う。


「終わったの?」

「うん、一応は」


 チラリと星華のリュックの色を見る。そう言えばクッソ目立つとか何とか言っていた。彼女のリュックの色は青。自分は黒、まだ能力とやらがわからない以上何とも言えないが、自分と星華で能力系列が違うことは確かなようだ。


「そっか、これからどうすんの?」

「とりあえず、どこかの拠点を目指そう。何にせよ人に会いたいからさ」


 リュックを背負って立ち上がると、星華も荷物を纏めはじめる。そのしゃがんだ体勢のまま、彼女が訊いてきた。


「……もし、そいつがやる気だったら?」

「その時は……」

「ふふっ、私の出番かな?」

「……そうだね」

「遠慮しなくて大丈夫。なんかほんとに、体の調子はサイコーだから!」

「うーん、まあ無理はしないで」


 墓場か神社、人の手が加えられている施設を目指すとしたらそのどちらか。なのでまずは、神社へ向かうことにした。湖畔を通り過ぎての南下、もし可能ならば、湖で水の補充をしてもいい。


「それじゃあ、行きますか」

「はーい!」



No.1 逢坂秀都(あいさか・しゅうと)21歳

【能力名】???

【能力】 ???

【タイプ】アクティブ

【系列】 ???


No.10 高坂星華(こうさか・せいか)17歳

【能力名】戦場のヴァルキュリア

【能力】 身体能力が著しく上昇する。ただし「???」

【タイプ】パッシブ

【系列】 身体変化系


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