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オリジナル・バトルロワイアル  作者: 八緒藤凛
一日目
16/54

15 快足少年

1


「ヒャッホーウ! すごくねこれ、マジやばいんだけどおおおおお」

「はいはい、分かったから……」


 サッカー部のユニフォーム姿の少年、立浪瞬(たつなみ・しゅん)は、神社の境内を走り回っていた。それを呆れ気味に見ているのは、紅色の髪を携え露出の高いオレンジのタンクトップに短パン姿の女性、与那城朱美(よなしろ・あけみ)。二人はつい先程出会ったばかりだ。と言っても、境内を走り回る瞬を朱美が見つけて声をかけただけなのだが。


「アンタ、飽きねーのかよ、それ」

「飽きないね! 今なら世界、狙えるぜっ!」

「帰ったらなくなるんじゃなかったっけ……」

「あっ、そうだった! 帰りたくなくなってきたな」

「オイオイ、アタシはこんなところにいつまでもいるのはゴメンだわ」


 大学のフットサルサークルの活動中、少しベンチで居眠りして起きたら体育館にいた立浪瞬。彼は類まれなる適応力を持っていた。それは適応力と呼んで良いのか曖昧な代物であるが、彼は難儀な事は思考しない主義。つまるところ初めての経験に心が踊りっぱなしと言うわけだ。


 そんな瞬の能力は韋駄天。その名の通り単純に足が速くなる能力。まだ成人も迎えていない上に、元来スポーツマンである瞬にとってはこれほど楽しい能力はない。


「アンタはさ、これからどうすんの?」

「んー。とりあえず今は楽しむかなっ!」

「えぇ……呑気だね」


 ふぅ、と溜息をついて、与那城朱美は段差に腰掛ける。森の中にぽつんと立つこの神社は、昼間だというのに鬱蒼と茂る木々のせいで薄暗い。夜になったら、さぞ不気味な空間が出来上がるだろう。銃声。


「ぐえっ」

「は?」


 瞬の身体が、宙を舞った。



2


「え、なになに? どうした?」


 朱美はドサリと地面に落ちた瞬へと近づいていく。その健康的に焼けた焦げ茶色の身体の下から、赤い液体が流れ出していた。視覚だけで分かる、これは血だ。


「は? なに、これ」

「なんだ、もう一人いたのか。ラッキー」

「あ?」


 第三者の声のする方を見ると、色素の薄い髪を垂らした中性的な面貌の男。だが、その全身は整った顔立ちとは正反対に、真っ赤に塗れていた。恐らくあれも血。しかも距離から考えて今目の前で倒れている立浪瞬のものではない。その男が、無表情で朱美へと銃を向けている。


「なんだよ、アンタ」

「いいから、死んで」

「銃だって……? 話が違うじゃねーか」


 体育館での女の発言によれば、これほどまでに殺傷能力に特化した武器がこの会場にあるなんて言ってなかったはず。朱美は舌打ちを一つ挟むと、あの女を恨んだ。


 だが男は、一向に銃を撃ってはこない。


「ん」


 男は銃をしげしげと見て、純粋に不思議そうな顔をしている。まるで、何か誤作動が起きたような。


 それとは反対に朱美は小さな安堵と大きな納得を得ていた。殺傷能力の高い武器の話は信用出来ないことが分かったが、どうやら能力とやらの話の方は信じて良いらしい。朱美の能力は正常に作用しているようだ。


「つまり、死に直結する行為全てを封じるってわけね。便利じゃねーか」


 そういうと朱美は、ひらひらと手を振りながら荷物を担いで男の横を通り過ぎる。風に乗って、血なまぐさい臭いが嗅覚へと入ってくるが気にしない。


「おまえ……」

「あん? そこで倒れてるそいつのことか? ここに来て出会ったばっかで名前も知らないそんなヤツ、知ったこっちゃないね」

「……そうか」


 男は背を見せて歩く朱美に腰の果物ナイフを投擲しようとしたが、それも手から離れる直前で力が抜けて地面へと落ちた。


「アタシから先に狙えばよかったな。残念でした」

「どういうこと」

「さあね」


 男が追ってきそうな気配はない。今しがた不発だった銃と、地面に落ちた果物ナイフを不思議そうに見つめているままらしい。


「次からは誰かに出会ってもスルーだな。あぶねーあぶねー」


 そう小さく呟くと、朱美は神社の階段を一段ずつ降りていった。





No.17 立浪瞬(たつなみ・しゅん) 19歳 退場

【能力名】韋駄天の脚

【能力】 走行能力が強化される。

【タイプ】パッシブ

【系列】 身体強化系


No.38 与那城朱美(よなしろ・あけみ) 21歳

【能力名】唯我独尊の極み

【能力】 一対一の戦闘において、生存が確約される能力。

【タイプ】パッシブ

【系列】 生存確約系



3


「なんだよ、あの女」


 神社の境内に一人残された周防龍臣(すおう・たつおみ)は、階段を降りていく女の後ろ姿を見送っていた。もう一度、傍らに転がる少年の遺体へと一発発砲してみたが、何の問題もなく弾はでた。


「まあいいや。次のやつ、頂戴」


 特に気に留める風もなく、何もない空間に手を差し伸べる。そこから出てきたのは、一振りの日本刀だった。


「一回使ってみたかったんだよね」


 鞘から刀身を抜くと、微かな日光に反射して真っ赤に染まった上半身が映る。湖のほとりで少女を惨殺した際のものだろうか。まあいい、ここから帰ったらこの服は捨てればいいだけの話だ。腰に日本刀をさして、龍臣はその場から立ち去った。



No.13 周防龍臣(すおう・たつおみ) 21歳

【能力名】ソールドアウト

【能力】 一を退場させる毎に、臨んだ武器を掌の上に顕現させる。

【タイプ】アクティブ

【系列】 規格外


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