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オリジナル・バトルロワイアル  作者: 八緒藤凛
一日目
13/54

12 思惑通りの世界なんて

1


「ん、夢……?」

「あ?」

「そうか、夢だな、これは」

「……」

「確かに感覚はリアル! でもっそれでも! 状況があまりにも現実味に欠ける。はい! よってこれは夢! おやすみ!」

「夢ちゃうわ、ボケ、死ねや」

「ええ……洒落になってないんですが……」


 俺は身体を起こした。いつものベッド、いつもの部屋、いつもの目覚まし……なんてものは何一つなく、古ぼけた畳、時代遅れの和室、無気力な声が俺を包む。どれもこれもが見知らぬ空間だった。


「どこですか、ここは」

「知らんがな」


 先程から自分の問いかけに答えてくれていた男は、壁にもたれて薄い冊子状の何かを読んでいる。無気力そうなその姿勢と雰囲気とボサボサの髪。勿論その顔にも見覚えはなく、俺は寝起きの頭をボリボリと掻いた。


「お前、どんな夢見とったか覚えとるか?」


 パタン、と薄い冊子を閉じた男は、立ち上がりながら問うてきた。


「え、なんでそんなこと聞くんですかー!?」

「ええからはよ言え、殺すぞ」

「ひぃ……」


 夢の内容を聞いてくるだなんて、この口の悪い男はなんだ。それでも相手が怒っている内は、精神的優位はこっちだからな。何も問題はない、はず。


「なんか、体育館みたいなとこに集められてて、殺し合え! みたいなね。もうね、アホかと」

「それ、夢ちゃうで」

「えっ」


 何言ってんだこいつ。


「お前、そのリュックの内ポケット調べてみ」

「はっ、はいっ! 了解ボス」

「誰がボスやねん、死ね」

「こわぁい」


 枕元に置いてあった黄色のリュックサック。なんて悪趣味なのでしょう。それでも言われた通りに留め具を外して、内ポケットをまさぐると、小さな紙切れが出てきた。そこには大きく四文字の漢字が書いてある。


「なになに……回想衝動……? はい、なんですかこれは」

「その下は?」

「えっとですね……」


 更に細かい文字を目を細めて読もうとする。そう言えばコンタクトレンズが外れている。視力が死んでいる。リュックの中にもなさそうだったし難儀するなこれは。



2


「つまりそれが、お前に与えられた能力っちゅうわけや」


 俺が苦労してその小さな文字を読み終えると、男はぼそりと呟いた。能力て、お前。


「へー、能力ねえ。ちょっと試させてくださいよ」

「は? 嫌じゃ」

「おおん……」


 露骨に背を向けない男。まあそりゃそうか、誰だって過去なんか知られたくないよな。てか、殺し合いが本当だとして、この能力でどうやって人殺すの? いや、殺す気なんてさらさら無いけどさ、防衛手段にもならないのでは。あー、頭痛いぞ。


「お前、これからどうするねん」

「どうするって言われても……」


 正直、何も考えていない。殺し合いをしろ! ってちょっと可愛い女の子に指示された夢を見て、かわいくもないおっさんにそれは夢ちゃうでって言われたのが現状。まあでも確かに、妙にリアルな夢だった気もする。それに、家で寝たはずなのに見知らぬ部屋で目覚めたってのもおかしな話だ、しかも畳の上、背中痛い。


「何も考えてませーん!」

「死ね」

「だから洒落になってないんですけど……ていうかまず貴方は誰ですか」

「……」

「そしてここはどこですか」

「……」

「一体何がおきて」

「これでも読んどけや」


 投げよこされる薄い冊子。その一番上に書かれた文字は、この俺、歌川静空(うたがわ・しずく)の起き抜けの頭にはちょっと厳しいものだった。


「バトル・ロワイアル案内冊子」

「せや」

「ははーん……」


 どうやらここは、まだ夢の中みたいですね……。



No.3 歌川静空(うたがわ・しずく) 16歳

【能力名】回想衝動

【能力】 ???

【タイプ】???

【系列】 ???



3


「おやおや? おかしいな~」


 歌川静空が目を覚ました少し大き目の民家は、二階建ての構造になっている。


 その一階の居間、真ん中に囲炉裏の取り付けられた部屋で歌川静空は覚醒した。その覚醒よりも少し前、この民家に入ってきた人物がいる、それが関西弁の男だ。そしてもう一人、覚醒後に隣の家のベランダ伝いに侵入してきた人物がいた。


「能力は発動してるはずなんだけどなあ、そもそもパッシブ? だし。もうっ! 焦らすんだからぁ!」


 特徴的な赤髪。その毛先を指でいじりながら、百瀬凛月華(ももせ・りつか)は様子を伺っていた。彼女の経験からいくと、もうそろそろ惨劇が起きてもおかしくない。なのにそれが起きないということは。


「既にどっちかが殺す気ってことかな? それはそれで面白いけど、それだと私も逃げ道作っとかないとよね~」


 と言いつつ、ベランダに視線をやる。陽はまだ高く、空が赤くなるにはまだまだ時間がかかりそう。


 凛月華は息を潜めて待っていた、惨劇が起こるその時を。

 ただ外の天気とは裏腹に、その表情に陰りがあることを本人はまだ知らない。



No.35 百瀬凛月華(ももせ・りつか) 18歳

【能力名】災禍のパンデミック

【能力】 戦闘の行う意志のない複数名が一定の距離にいる時、微弱な殺害、もしくは被殺害の意志・思想を発生させる能力。能力者との距離や、時間経過と共に強くなる。

【タイプ】パッシブ

【系列】 精神操作系



4



 先程冊子を投げ渡してやった少年は、まだ呆けている。とりあえずと入った民家で見つけたのは、高校生ほどのこの少年だった。無防備にも、その首元を晒して寝ていた。


 ……例えばこの首に、台所から包丁を持ってきて刺せば死ぬ。腹部に突き立てても、手首を切っても、容易に殺せる。


 そんな事を考えていたら、少年は起きてしまった。それならそれで、と、状況の確認をした。あの体育館での出来事を経験したのがもしも自分だけならば、ルール通りに動けば自分はただの人殺しの殺人犯だ。恐らく一生を刑務所で過ごすことになるだろう。だが、この少年も同じだった。つまりこの世界は。


「面倒な事に巻き込まれたもんやなあ……」


 未だ冊子を眺めて上の空の少年を横目に、矢矧晋作(やはぎ・しんさく)は今後の動きを模索する。頭が、痛い。


 勿論、誰かを殺すつもりなど毛頭ない。



No.36 矢矧晋作(やはぎ・しんさく) 24歳

【能力名】明鏡止水

【能力】 自分とその周囲を対象としたパッシブスキルを無効化する能力。

【タイプ】パッシブ

【系列】 能力操作系

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