無職になって
朝、目覚まし時計の音で飛び起きる。
目覚めは良いほうだから、数分で朝ごはんの支度を始めて、部屋の掃除と洗濯をして、今日は何から片付けようかと考えたところで、自分が無職になったことを思い出す。
「ああそういや、そうだった」
誰に言うでもなく呟いて、布団へ戻る。
そんな二度寝をする日々が数日続いた。
二度寝をしたら全部忘れてしまうのか、目覚ましのタイマーを切り忘れるのもいつも通りだった。体だけは、働いていた頃の生活を繰り返そうとしているらしい。
一週間ほど経つと、ようやく実感が湧いてくる。
小学生らが登校するのを横目に散歩をしてみたり、主婦の方々と一緒に平日の昼間から買い物に行ってみたり、真夜中のコンビニで買い食いしてみたり。
今まで仕事があるからと避けてきた時間帯を、何の気兼ねもなく歩く。
平日の昼間はこんなにも静かだったのかとか、この時間帯のスーパーは年配の人が多いんだなとか、そんな当たり前のことを新鮮に感じた。
やりたかったのかはわからないけど、やってみたくなったしょうもないことを色々やってみた。
誰もいない公園のベンチで酒を飲んでみたり、用もないのに知らない道を歩いてみたり。
どれも想像していたほど特別なものではなく、「こんなもんか」と思って終わることばかりだった。
くだらないなと一人で笑うのは、存外寂しかった。
一ヶ月も経つと、昼に起きて夜更かしするのが習慣になってくる。
忙しくて見られなかったアニメや漫画。
時間がなくてできなかったゲーム。
いくらでも時間はあるんだからと、一気に消費していく。
次は何を見ようか、何をしようか。
そんなことを考える時間だけは、いくらでもあった。
だが、それらもいつかは終わる。
気づけば新しく何かを始めることもなく、動画を眺めて一日が終わる日も増えていた。
要するに暇になった。




