ゴブリンの巣
俺はソニアと武器屋を訪れていた。
ソニア曰く、「レベルが上がったんだからそれにふさわしい武器を使うべきです」とのことでソニアのアドバイスに従い武器を新調しにやって来たのだ。
俺の武器は10歳の誕生日に親に買ってもらったものなのでそろそろ買い替え時なのは間違いない。
武器屋ではソニアも武器を買うことにした。
なにしろ持っているのは初心者向けのボウガンひとつと、これまた配達依頼で行った隣村であり合わせに買った中古のオンボロな剣だったからだ。
俺のパーティーの主戦力はソニアなので買い替えない理由はない。
俺がどの武器を買うか悩んでいると、ソニアがアドバイスしてくれた。
「アルク様は戦闘系天職ではないので軽くて扱いやすい小型な剣と小型な盾のセットがいいでしょう」
逆にソニアは両手で扱う割と大ぶりな斧を選んだ。
「ソニアはそんな大きな武器を扱えるのか?」
「今はこの程度の小さな斧しか扱えません」
このサイズで『この程度』なのかよ。
オーガっていうかソニアは凄いな。
「でも、このぐらいの斧を持っていれば今まで狩れなかった大きな獲物も狩れるようになりますね」
ソニアは軽々と斧をぶんぶん振り回しながら満面の笑みを浮かべていた。
「大きな獲物ってどれぐらいのサイズなんだろ?」
「熊ぐらいかな」
「ほへー」
熊を狩れるのかよ。
ウサギを狩っていた今までとは段違いな攻撃力だな。
「じゃあ、試し切りに行きますか」
「お、おう」
ソニアに連れられて、俺はゴブリンの巣へと向かう。
*
ゴブリンの巣に到着した俺たち。
ソニアはゴブリン狩りの作戦を説明し始める。
「わたしがボウガンでゴブリンをおびき寄せるので、アルク様はのこのこやって来たゴブリンにトドメを刺して下さい」
「俺にゴブリンなんて倒せるかなぁ?」
「ゴブリンよりも格上のホーン・ラビットを倒せてたんですから、余裕ですよ」
「そうなのかよ?」
ゴブリンよりもホーン・ラビットの方が格上だったとは驚きだ。
まあ、ホーン・ラビットを仕留めたのはソニアで、俺はソニアがトドメを刺す前に石を当てたぐらいだからいくら弱いゴブリンでも舐めたらいけない。
ソニアがボウガンを射る。
「あひゃ!」
ゴブリンは俺たちの所にやって来る間もなく爆ぜた。
なんでそうなる。
今度はボウガンよりも弱い小石を投げるがまたしてもゴブリンが爆ぜた。
「どうしてこうなるの?」
ホーン・ラビットに小石を投げて爆ぜるのだからそれよりも格下のゴブリンが爆ぜるのは当然である。
ソニアは「わたしはゴブリンのおびき寄せも出来ない役立たず」と、座り込んで地面に落書きをしてイジケていた。
俺はそんなソニアを励ます。
「凄いな、ソニア! もう、ソニアだけでゴブリンの群れを全部倒しちゃっていいんじゃないか?」
「ムンス!」
それを聞いたソニアの鼻息が荒い。
「ゴブリン狩りは武器の試し切りだけじゃなく、ご主人様のレベル上げを兼ねていますのでそういうわけにはいきません」
ソニアは俺の背中を軽くたたいて応援だ。
「さあ行ってきてください!」
でもオーガ娘のエール、その打撃は俺には強すぎる。
俺はソニアのエールで体勢を崩し、ギャングの組事務所にカチコミを掛ける鉄砲玉の如くゴブリンの巣に踊り込む形になった。
俺は奇しくも目が合ってしまったゴブリンに挨拶をする。
「や、やあ!」
「ギシャァァ!」
ゴブリンは俺の挨拶を全力で拒んだ。
俺の満面の笑みの挨拶は無視され、無数のゴブリンが突如現れた俺という獲物に襲ってくる。
ゴブリンの塊が雪崩のように俺に覆いかぶさるように襲ってきたのだ。
「し、しぬー!」
俺どうなるの?
俺は突如襲ってきたゴブリンの大群に足が竦んでしまった。




