裁判当日の朝
「で、どうするんだ?」
衛兵の詰め所の豚箱で鉄格子越しに俺がミントに聞くと、ミントが俺に耳打ちする。
「裁判で一発逆転をする方法はこうよ」
ライムは作戦の説明を始めた。
「レイカは『サビアの首輪』でサビア屋のオーナーのボールドの言いなりなのよ」
「そんなこと言ってたよな」
「それなら『サビアの首輪』自体を無効化しちゃえばいいのよ。そうしてレイカ自ら『所有権はアルクにあること』を証言させればいいわ」
「首輪の無効化をするってのは首輪を外せってことか?」
俺は話を続ける。
「サビアの首輪って犯行的なサビアを強制的に従わせる魔道具だろ? そんな物を首輪を取り付けたサビア屋の店主の協力を得ずに外そうと思っても簡単に外せないだろ」
「外すんじゃないの」
「じゃあ、どうするんだ?」
「『サビアの首輪』は魔道具だから、ボールドの使っているCランク魔道具より高いグレードのBランク以上の魔道具で従属状態を上書きしちゃえばいいのよ」
「なるほど……」
外せないなら効果を上書すればいいって考えか。
でも引っ掛かることもある。
「理論的にはそれでできると思うけど、Cランクよりグレードの高い魔道具となるとBランク以上の魔道具だろ? そんな高価な魔道具を裁判までに用意できる時間も無いし買う金も無い」
ミントがポンと自分の胸を叩く。
「それなら大丈夫。ライムから聞いたんだけど、冒険者ギルドに反抗的なサビアを従わせるAランク魔道具の『サビアのバングル』があるらしいの。それなら効果を上書出来るわ」
「あったとしても、冒険者ギルド長は俺のことを身内の恥さらし者としか見て無くて貸してくれる訳が無いだろ……」
「それなら大丈夫よ。ライムにちょっと拝借してきて貰えば」
「ライムを巻き込むのかよ」
出来ればライムには今回の事件に首を突っ込んで欲しくないんだけどな……。
ライムまで『サビアのバングル』窃盗の容疑で捕まったらシャレにならない。
「それ以外に方法ある?」
「……。ない」
「じゃあ、その作戦でいくわよ!」
ミントは衛兵の詰め所を飛び出していった。
*
ミントと入れ替わる様に、アイラが詰め所に押しかけて来た。
「アルク、大至急助けて!」
「助けるって?」
「大ケガしちゃって大至急治して欲しいの」
そう言って、ホーン・ラビットの死骸を渡された。
「このホーンラビットは既に死んじゃってるし、治しようがないだろ」
「ちがうの!」
「違うのか?」
毎度の言葉足らずでなにを訴えているのかがわからないアイラ。
全力で否定してくるアイラに、俺はなにをすればいいのかがかわからない。
その時、冒険者ギルド長にソニアとライムが肩を貸しながら運んできた。
ギルド長は酷く大けがを負っていて、足が無い。
ライムも大ケガを負っていたが、こちらはアイラの回復呪文で間に合ったようだ。
ライムは泣きそうな声で叫ぶ。
「応急処置はしたんだけどギルド長は出血が酷くて意識が無くなっちゃって……。大至急治して」
ソニアも豚箱前の床にギルド長を降ろしながらいう。
「アルク様。置換で悪い所を治して下さい」
「おうよ」
やっとやることがわかった。
俺は置換でギルド長を治した。
すると息を吹き返し、叫ぶギルド長!
「ぐああああ!」
離れていた衛兵もその声に驚いて駆けつけた。
「冒険者ギルド長じゃないか! お前ら、なにをやっている!」
ライムが衛兵に締め上げられていると復活したギルド長が止めに入る。
「アルクたちは俺を助けてくれたんだ。止めてやれ」
すぐにライムの拘束は解かれた。
ギルド長のジャックスは失った筈の足が生えているのを見て呆然と座り込んだままだ。
ギルド長が治療された自分の身体を確認しながら感慨深げにいう。
「まさか、本当にあの大ケガが治るとはな。これはアルクが治してくれたんだな」
「アルク様の能力をこれで信じて貰えました?」
「信じるもなにも、自らこの奇跡を体験したらな……」
「じゃあ、アルク様とわたしたちの言っていたことは全て本当だと信じてくれるんですね」
「もちろんだ!」
「じゃあ、無罪放免で釈放すね?」
ギルド長は考え込む。
「それなんだがな……。裁判に掛けられる理由の容疑はサビアの窃盗なのでお前らの言ってることが真実とわかったとしてもすぐに無罪放免というわけにはいかないんだ」
「そんな……」
アイラが傍から見てもハッキリと分かるほど肩を落として落ち込む。
「それなら」
俺は切り出す。
「冒険者ギルドにある『サビアのバングル』を貸してもらえませんか?」
「『サビアのバングル』は確かにギルドにあるが……。それをどうするつもりなんだ?」
「『サビアのバングル』でレイカの『サビアの首輪』の隷属状態を上書解除して、レイカに本当のことを証言させてください」
「もちろんだ! そんなことは容易いことだ!」
俺はギルド長の信頼を勝ち取り、大きな仲間を得た。




