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ゲイブとの死闘

 ジャックスに迫るゲイブの刃。


 このままでは心臓を貫かれる!


 そう直感したジャックスは腱を傷つけられ動かない足を無理やり動かし身体を跳ねのけ攻撃を避けた。


「どりゃあああ!」


 その瞬間、『ブチッ』と足の腱の切れる嫌な音がしたがとりあえずの窮地を脱した。


 そして身動きが取れなくなるという永遠なる完全な境地が襲ってくる。


 もうこれで俺の足は完全に動かないな……。


 そうジャックスは心の中で呟くがゲイブは容赦をしてくれない。


「避けられたのですか。その足で避けるとはなかなかの根性ですね。だが、これならどうですか?」


 すぐに軌道を変えた剣が襲ってくる。


 今度はターゲットを心臓から右足に変えて!


 ジャックスは逃げようとするがさすがに右足はピクリとも動かない。


 もう年貢の納め時かも知れねーな。


 ジャックスは覚悟を決めた。


 次の瞬間、ジャックスの足を無数の剣が貫いた。


 その数、6本。


「ぐおおおお!」


 叫びながら足を見ると足は身体から離れ地面に転がっている。


 今までは辛うじて身体と繋がっていた足は膝を残しふくらはぎの部分で完全に身体と分断されたのだった。


 もう足は歩行機関として役に立っていない。


 ゲイブが見下す様に言い放つ。


「さあ、奇襲をするという剣士にあるまじき下劣な行動を行ったことを悔い改め観念するのです。そして我が秘儀を受け入れ眷属となるのです」


 ゲイブはゆっくりと歩いて来ると、うつぶせに横たわるジャックスの頭に手を宛がう。


 そしてその手が紫の光で輝いた!


 ジャックスの頭の中が真っ白に染まるとなにもかもが無へと還る。


 全てが真っ白に染まると思われたその時!


「どあああ!」


 突如、ゲイブは何者かに突き飛ばされたように吹き飛んだ。


 そしてジャックスの遥か遠方には木の柱に身体を貫かれたゲイブが地面に突き刺さっり横たわっていた。


 なにが起きたのかジャックスには理解出来なかったが命が助かったことにほっと安堵すると共に、意識が遠のいていった。


 *


 ジャックスが意識を取り戻したのは、何者かに担がれていたからだ。


 ジャックスを担いでいる者は赤黒い肌の持ち主ということからソニアだとすぐにわかった。


 切断された足の傷口はロープのような物で縛られ止血されている。


 辺りは既に真っ暗で、あれからかなりの時間が経っていることを示していた。


「気が付きましたか?」


 ソニアが声を掛けてくる。


 どうやら、ソニアの背中でジャックスが動いたのに気が付いて声を掛けてきたようだ。


「あの魔物を倒したのはソニアなのか?」


「ええ、森の木を斧で切り倒し作った木の柱をトレント・ミサイルの代わりに思いっきり投げつけたら倒せました」


 あれだけの強敵だったゲイブを一撃で葬り去るとはオーガというものは凄まじい力を秘めているものだ。


 ここ最近のアルクの急激な戦績向上もこのオーガの娘が鍵を握っているのだろう。


「足もソニアが措置をしてくれたのか?」


「ええ。タウンシアに戻れる程度の処置はしておいたつもりです」


「タウンシアに戻ったとして、もう冒険者ギルド長としてはやっていけないので、あのまま野垂れ死にさせてくれても良かったんだけどな」


 そんな自虐的な発言をしてしまうほど、足の喪失はジャックスを気落ちさせた。


 気落ちするジャックスをソニアは叱咤する。


「なにを言っているんですか! 足ぐらい、アルク様が簡単に治しますよ」


「治すって、もう足が無いんだけどよ……。治しようが無いだろ」


「それを治してしまうのがアルク様の天職なのです。レイカなんてギルド長と比べたらもっと酷い死にかけの状態だったのにあっという間に治したんですからその程度のケガの治療は心配無用です」


「サキュバスを治療したって言うのはサキュバスを盗んだ方便だったんじゃないのかよ。さすがに信じられん」


「信じられないですよね。でも、その目で自分の足が治るところを体験すれば信じて貰えることでしょう」


 そしてソニアは続ける。


「なにしろ、このわたしの角もアルク様に治して貰ったんですから」


 ソニアの言葉は嘘偽りないように聞こえた。

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