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一人ぼっちのアイラ

 アイラが目を覚ましたのは日没間際だった。


 宿屋の前の通りの往来がしげくなりその喧噪で目が覚めたのだ。


 宿屋の部屋には誰も戻っておらずアイラ一人だった。


 また貴族の父親の時と同じくまた捨てられたのかな……。


 そんな考えがアイラに脳裏に浮かぶ


 *


 フォレスタリアの村での徹夜の戦闘の後、徹夜で歩いてタウンシアの町まで帰るのは元貴族のアイラには辛いことだった。


 なにしろ今までの人生で徹夜なんてしたことが無かったのだから。


 アイラを宿屋まで運んだのは取り調べを担当していたライムだった。


 取調中、かなり眠そうにしていたアイラを見かねたライムは手早く取り調べを済ませ、いつもアルクたちが泊まっていた宿まで連れて来たのだった。


 宿屋のおかみさんにアイラを見せると顔馴染みだったらしく「アイラちゃんね」と言って特に宿代も請求されることもなく引き渡しが完了したのである。


 アイラの取り調べを手早く済ませたのは、アイラ主導でパーティーを引っ張るようなことをしないことを知っていたのもあるが、午後一番にアルクのグレート・サイクロプス討伐の報酬が届くとの連絡が朝に有ってその対応をしないといけないのもあったからだ。


 こんなに早くグレート・サイクロプスの報酬が届くのならばアルクに土砂崩れ調査の依頼など出すのではなかったと後悔する思いしかない。


 あの依頼を出さなければアルクさんもトラブルに巻き込まれなかったのに……。


 わたしはとんでもないトラブルメーカーなのかもしれない。


 そんなことを思ってしまうライムだった。


 ライムがアイラを宿屋に届けて冒険者ギルドに戻ってくると、予定よりも早く現金輸送の依頼を受けた冒険者が到着していた。


「よう、久しぶり!」


 冒険者はライムに手を振る。


 その顔にライムは見覚えがあり、懐かしさを感じる。


「お久しぶりです。先生!」


 その冒険者はBランクパーティーの冒険者パーティー『アイアンサイド』のリーダー『ハリー』であり、ライムが半年間冒険者ギルドの研修の為に所属していた冒険者パーティーのリーダーであり指導教官でもあった。


 ハリーは照れ臭そうに頭を掻く。


「先生は止めろって……。せめてリーダーにしてくれ」


「ではリーダー、わざわざ王都からタウンシア迄の現金輸送の依頼を受けて下さいましてありがとうございます」


「うむ」


 ライムが恭しく接するので、ハリーも普段はしないような格式ばった態度を取るので二人は笑いが込み上げてきてしまった。


「いつも通りで行こうや」


「そうですね」


 ライムは完了確認の書類を受け取ると、確認事項を書き込む。


 書類を書き込みながらライムはハリーに話を振った。


「今回は一人で依頼を受けたんですか?」


「休息日で暇だったのでライムの様子を見に来るのを兼ねて、依頼を受けたんだ」


「それで一人だったんですね」


「依頼を受けると馬車代が経費で落ちるからな。ところで仕事の方はうまく行ってるのか?」


「そうですね、忙しいけど仕事の方はだいぶ慣れてきました」


「それは良かった。仕事が出来なくて泣いてるんじゃないかと心配したんだぜ」


「もう、泣くような歳じゃないです」


「ほーん」


 ハリーは輸送依頼の完了確認の控えを受け取り、そして書類を見て感心した。


 書類には注釈として『グレート・サイクロプスの討伐報酬の移送』と書いてあったからだ。


「この町にもグレート・サイクロプスを狩るような大物パーティーがいたのか」


「大物というか、新進気鋭の冒険者パーティーでこの町一番の有望株なのよ」


「一度、彼らに顔合わせをさせてくれないか? 俺のパーティーに勧誘できるなら勧誘したい」


「それがね……。今は無実の罪で投獄中なの」


「穏やかじゃねーな」


「そそ、いまその件でギルドの中が騒ぎになっていてギルド長も調査に出掛けていて居ないので、報酬の決済はギルド長の戻って来る夕方まで待って欲しいの」


「今夜はライムと飲み明かすつもりだったから、構わないぜ。それに……」


 ハリーは小箱を取り出す。


 それがなにを意味するのかはミントには一目でわかった。


 婚約指輪だ。


「今もギルドで働いてるってことは、幼馴染の初恋のナイトちゃんに振られたんだろ? 前にも言ったが、そろそろ俺のプロポーズを受けてくれないか?」


「それが……」


 ライムは頭を下げる。


「ごめんなさい。婚約してるのでプロポーズはお受けできません」


「そうだったのかよ……それで相手は幼馴染の初恋のナイトちゃんなのか?」


「はい、そのナイトちゃんです」


「お、おめでとう! 長年の願いが叶ったんだな」


 おれにとっちゃ、全然おめでとうじゃないけどな。


 今夜はひとりでやけ酒するしかねぇ。


 そうひとり呟くハリーであった。

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