オーク村の死闘、再び
空に飛びあがったロバートだった者は人差し指を立てると火球の魔法を放って来る。
ソニアはそれに見覚えがあった。
執事のお爺さんの使っていた魔法だ。
でも、目の前の空に浮かぶ冒険者は執事ではなく『この村の主』と名乗っていた。
となると……この冒険者には村長だった者が憑りついているんだろうか?
それとも単に村長も同じ魔法を使えたのかな?
ソニアは混乱していた。
ロバートの放った火球は騒ぎに気が付かずにグレート・オークの素材採りに熱中していた若い男の冒険者に直撃した。
「ぐはあああ!」
火球が直撃した冒険者は断末魔を放つ!
若い男の冒険者は断末魔が弱まると同時にグレート・オークの死骸と共に消し炭に変わった。
「きゃー!」
よく通る女の甲高い声。
採取に熱中している冒険者たちは、その声を聞いたことでオークの巣で異常事態が起きていることに気が付いた。
「なにが起こっいているんだ?」
「人が空に浮いているぞ!」
「ボビーが! ボビーが! 一瞬で燃えて黒焦げになった!」
フォレスタリアの調査に参加した冒険者は、ギルドで暇を持て余しているような他のパーティーからお呼びの掛からない腕の立たない冒険者たちである。
その多くはまだ固定パーティーを組めていない新人冒険者ばかりだ。
まともにロバートだった者とやり合える冒険者は両手の指で足りるほどしかいない。
ギルド長が声を張り上げる!
「戦えぬ者はすぐにこの場を立ち去れ!」
蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げる新人冒険者たち。
だが……。
どこからともなく現れた村人、いや村人だったインキュバスの眷属に次々襲われて食われていく。
「ぐあー!」
「やめろ! やめてくれ!」
冒険者の悲鳴が森に鳴り響き、まるで地獄絵図のような光景が展開された。
「これはいったいどうなっているんだ?」
ギルド長のジャックスは呆然とこの光景を眺めているしかなかった。
ロバートは呟く。
「この身体に魔力が馴染んでいないのか、火球の威力はまだまだと言ったところですね。まあ、この身体に慣れるのも時間の問題。ここの冒険者を使って鍛錬といきますか」
ロバートは空に浮かびながらひとり頷いていた。
ギルド長の意識を現実に呼び戻したのは、ソニアの呼びかけだった。
「ギルド長!」
「あ、すまん」
「あの魔物に見覚えが有ります」
「それは本当か?」
「あの冒険者はさっき村の主と言ってましたが、あれは村長ではなく執事だった者です」
「なんと!」
アルクの野郎はあんな化け物と戦っていたのか……。
ギルド長は感心するしかなかった。
「あれが執事なら倒す方法があります」
「本当か?」
「奴の注意を引きつけて下さい! 倒すのはわたしがなんとかします」
「わかった!」
ギルド長のジャックスはソニアがどうやってロバートを倒すのかわからなかったが、ソニアの案に乗ることにした。




