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俺はソニアにチカンする

 チカンスキルを使い、目の前の空間に浮かび上がったのはソニアの一糸(まと)わぬ裸体だった。


 最初は胸の大きな膨らみとか股間の陰りとか見えたんだが、すぐにそれも終わる。


 ソニアの裸体が依然として見えているのは間違いないのだが、全く(もっ)て卑猥な感じは一切ない。


 なぜならば最初こそソニア全裸だったのに、一瞬で肌が透け筋肉や内蔵や骨まで透けて見える俗にいう人体図に変わったからだ。


 むしろ、目を背けたくなる程のグロさ。


 綺麗なソニアの肌の中に、こんなにもいろいろな臓器や骨や筋肉が詰まっているなんて思いたくない。


 こんなものを見るのがチカンスキルなのか?


 こんなのを見て欲情する奴がいたらニッチ過ぎる性癖だぞ。


 全く役立たずなハズレスキルじゃないか。


 俺は目を背けようとするがひとつ気になったことがあった。


 ソニアの角だ。


 二本生えた角のうち、向かって左の角が砕け散って本来は無いはずが人体図上では存在し赤く点滅している。


 おまけに人体図には『欠損』と書いてあり、その下には注釈だろうか『チカンカノウ』とまで書いてある。


 『こんなとこをチカンしてどうするんだよ?』と思いつつ、俺は引き寄せられるように人体図の角を触ってしまった。


 すると頭の中に声が響く。


『この部位を「チカン」します。どの素材と「チカン」しますか?』


 そして素材欄に現れたのは『ホーン・ラビットの角:コモン』と書かれた文字と絵。


 これをチカンしろってどういう意味だよ?


 わけがわからん。


 わけわからんながら、頭の中に響く声に促されて俺はホーンラビットの角を選択してしまった。


 でも、何も起こらない。


「おかしいな……。チカンスキルを使ってみたんだけど何も起こらないな」


「それは……残念です。ではわたしの胸を揉んでみましょう」


 やたら胸を突き出し揉めと誘ってくるソニア。


 ここまで来たら試しに揉んでみるのもいいかも……。


 ここまでお膳立てされたらもう揉むしかねぇ。


 そう覚悟を決めた俺だがなかなか手を出せないでいたらソニアの方から動いた。


「じゃあ、行きますよ」


 俺の手をソニアの胸に誘導すべくソニアの指先が俺に触れた途端、ソニアが叫ぶ!


「うああぁぁ!」


「ど、どうした? 大丈夫か?」


「頭が……痛い!」


 ソニアは膝から崩れ落ちた。


 俺は痛みを和らげるべくソニアを抱きしめる。


「ごめん、大丈夫か? ソニア」


 ソニアの頭を見ると失ったはずの右角が光り輝いていた。


 息も絶え絶えのソニアは言葉を振り絞った。


「も、もう、大丈夫です」


 ソニアの角はもう光ってない。


 俺の手の中のホーン・ラビットの死骸は角の無い状態になり、代わりにソニアの頭の角は復元されていた。


「おい、ソニア! 角が生えているぞ」


「うそ?」


 ソニアは慌てて頭を触ると確かに失った筈の角の感触が手に伝わってくる。


 角の感触が確かなものだと確信したソニアは満面の笑みをこぼした。


「角が生えてます。アルク様、なにをしたんです?」


「『チカン』スキルを使っただけなんだが……」


 足元に転がる角無しのホーン・ラビットを見てソニアは『チカン』スキルの意味を悟った。


「もしかして『チカン』スキルとはえっちな意味の『痴漢(ちかん)』スキルではなく、物を置き換える『置換(ちかん)』スキルなのでは?」


「そうなのか?」


「間違いないです。この角は単に修復されただけではなく、間違いなくわたしの角として生えています。その証拠に今のわたしには力がみなぎっています」


 試しにソニアが近くを跳ねまわっているホーン・ラビットに小石を投げると、ボウガンよりも速い速度で飛んでいきホーン・ラビットは角だけ残して爆ぜた。


 なにこれ?


 強くなるにしても限度があるだろ……。


 俺は口あんぐりだ。


 *


 どうやら俺の『チカン』スキルは『置換』スキルで間違いないようだ。


 なんだよ、このふざけたオチは。


 この一年間、俺がどれだけ痴漢呼ばわりされて苦しんだと思ってるんだよ。


 俺が憤慨しまくってる一方、ソニアは力が戻ったみたいで大喜びだ。


「力が完全に戻ったのか?」


「まだ戻ったのは僅かな力ですが、ボウガンを使わずともホーンラビットと戦える程度には戻りました。アルク様ありがとうございます」


 あれで僅かな力なのかよ……。


 オーガっ娘恐るべし。


 そしてソニアは俺を抱きしめ、胸のなかに俺の頭をうずめさせる。


「アルク様、ありがとうございます。わたしはアルク様との出会いを運命だと思っています。アルク様、大好きです。ソニアはアルク様に一生尽くします」


 脳筋種族のオーガなのに可愛いな。


 俺はソニアに好感度全開で懐かれることとなった。


 *


 町へ戻った俺たち。


 ギルドに依頼完了の報告をしに行ったんだけど、ソニアはずっと俺の腕にソニアの身体を絡めていた。


 傍から見ると初めての夜を過ごしたばかりのラブラブカップルでしかない。


 カップルが初めて恋人同士ですることを済ませて周りが見えなくなっているおバカカップルとしか思えない。


 ソニアとの間にはなんにもないけどな。


 ライムが刺々しい感じで嫌味を言ってきた。


「ずいぶんとお二人は仲良くなってるんですね」


「おおう」


 ソニアは満面の笑みで答えた。


「あの夜はわたしの人生の中で最高のひとときでした」


 それを聞いたライムは青ざめていた。


「ア、アルクさんと……初めての夜を過ごしたのですか?」


「あの夜はアルク様と腕枕をして寝たわたしの人生の中で一番の夜でした」


 その後のソニアは笑顔で返すだけなので俺は慌てて取り繕った。


「な、なんにもしてないです。本当に!」


 田舎の宿屋で一つしか部屋が取れなかったので同じベッドで寝ただけだから。


 第一、俺は人生初の狩りで疲れ果てて一瞬で寝てしまったのに、いかがわしいことなんて出来るわけが無い。


 腕枕は俺が寝ている間にソニアが勝手に俺の腕で腕枕してただけだから。


 男の俺が言い訳してもライムが信じてくれる訳も無く、ライムはソニアを鬼の形相で睨んでいた。


 ソニア、誤解されるような反応はやめようね。

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