闇夜の魔木
「うぼあ!」
正確にはまだ火球が放たれる寸前だった。
爺さんは突如現れて高速で飛んできた巨大な何かに弾き飛ばされる間もなく連れ去られた。
そして間髪を開けずに鳴り響く轟音と地響き。
「なんなんだ? これは!」
俺は唖然とするしかない。
ソニアもアイラも口を開けて呆れるしかない。
その時聞きなれた声が聞こえた。
高さ50メートルは超える巨大な大木の巨人に乗ったレイカだ。
レイカは答える。
「トレントミサイルです」
「トレントミサイルってなんだよ?」
「トレントの実を放ったものです」
あれが木の実だったとでも言うのか?
なにを言っているのかよくわからん。
レイカは巨木のような巨大な怪物から飛び降りると頭を下げた。
「森の主のグレート・トレントに絡まれてしまい、魅了するのに手間取って戻るのが遅れてしまい申し訳ございせんでした」
「おせーよ!」
レイカはそれを聞くと悲しそうな目をした。
言い過ぎたか?
俺は冷静になり、謝るべくすぐに感謝の言葉を述べる。
「でも助かった、ありがとう」
怒鳴ってミスした後だけど、過ちを手のひら返しで無かったことにする俺。
なら最初から言うなよ!とか、そこ言わない。
レイカは俺の感謝の言葉を聞いて喜んでいた。
俺は皆の無事も確認する。
「みんなも無事か?」
「大丈夫です!」
ソニアたちの元気な声が聞こえた。
俺たちは皆でサムズアップをして称え合っているとレイカが言う。
「さあ、この騒ぎの大元を始末しに行きますよ」
「おおう!」
俺たちはフォレスタリアの村長の屋敷へと向かことにした。
屋敷の前には大穴が出来ていた。
きっとさっき起きた地響きはこの大穴が出来た音で間違いない。
証拠に、さっきトレントミサイルに連れ去られた爺さんが穴の底にくたばっている。
あの爺さん、なかなかの強敵だったんだけどな……。
一撃で倒すトレントミサイルってどうなってるんだよ。
レイカはグレート・トレントに再び飛び乗ると命令する。
「しもべよ、この悪の館を潰しなさい!」
「ハッ!」
グレート・トレントが館をぶん殴ると一発、二発で館のほとんどが瓦礫へと変わった。
驚いて中から飛び出してくる館の主の村長。
「お前ら! こんな事をしてタダで済むとは思って……うへっ?」
目の前に立っているグレート・トレントの巨体を見て村長は固まった。
そこへ放ったソニアの一撃で村長は真っ二つだ。
フォレスタリアの事件はこれにて一件落着!
館が一つ消えたけどね。
*
レイカが戻って来たことで、フォレスタリアの騒動は一瞬で解決してしまった。
俺は念のため村長と爺さんが魔物だった証拠となる魔石や部位を集めているとアイラがニコニコと微笑んでいるので聞いてみた。
「どうした?」
「ご褒美ちょうだい」
「ご褒美ってなんだよ?」
こんな瓦礫しかない所でアイラの望むものは渡せないと思っていたら全然違った。
「婚約の証になるような物、例えば婚約指輪とかが欲しい」
「そんなもんでよかったのか?」
「結婚の証となる物なんだから、そんなもんと言うのは良くない」
「わかった、来週金が入ったら買ってやるからそれまで待ってくれ」
「やった!」
アイラはガッツポーズだ。
アイラにだけ婚約指輪を買うことが決まったらソニアがへそを曲げた。
「アイラにだけですか?」
「お前も婚約指輪が欲しいのか?」
「わたしは指輪なんていらないですが、デッカイ婚約大剣が欲しいです」
「なんだよ、そりゃ」
そんなものを婚約の証に欲しがるのはバトルジャンキーのソニアだけはある。
「わかった、金が入ったらな」
「アルク様、ありがとうございます」
レイカの方を見ると、目が合ったのに気が付いたのか視線を避けてしまった。
レイカは今回の騒動を解決した立役者なんだからレイカにも何か送るべきだと思い聞いてみた。
「私は……」と遠慮がちなレイカ。
ソニアがレイカの背中を軽くたたいて後押しする。
するとレイカは遠慮がちに言う。
「わたしは村長が欲しい」
村長が欲しいって意味が解らん。
レイカは意思が伝わって無いのが気が付いたのか言い直す。
「村長と執事の素材で使えるところがあったらチカンして欲しいです」
「そんなことでいいのか?」
結局、爺さんはほとんど使えるとこが無くて羽だけ、村長は牙と右腕と右足をチカンする。
するとレイカは凄まじいパワーアップをした。
「これは物凄いです! ありがとうございます」
さっきまで操っていたグレート・トレントを魅了から解放すると一撃で倒していた。
レイカはうれし泣きしながら俺に感謝をしていた。
「アルクさんに本日この時点より一生忠誠を誓います。今後はアルクさんを主さまと呼ばせて下さい」
こうしてレイカは俺に忠誠を誓い、俺はレイカの更なる信頼を得た。




