闇夜の決断
「森に入らずここで戦うぞ!」
俺はこの場で戦う決断を下した。
理由は簡単だ。
戦闘を避けて森の中に逃げ込んだとしても、足元がおぼつかない暗い森の中だ。
明るい昼間なら戦闘に有利な場所を探し出すことも出来るだろうが、今は夜。
夜の森で迷った挙句、遅かれ早かれ暴徒に追いつかれる。
障害物の多い森の中と違い、開けた場所である巣ならレイカの鞭の能力も存分に発揮できるはずだ。
それに照明の全くない森の中は、追われる側で照明を持てない俺たちが圧倒的に不利である。
その点、巣はオークの家が絶賛大炎上中なので照明の問題はない。
あるとすれば広場なので四方八方から囲まれたら逃げ場が無くなりヤバいが、そうならないように立ち回ればいい。
俺は皆に指示を出す。
「レイカとソニアは襲ってくる敵を片っ端から倒してくれ。俺はアイラの護衛と全体を俯瞰して指示を出す。アイラは回復に徹してくれ!」
「はい!」
俺の最強の布陣にレイカが異議を唱える。
「森の中に入って操れるしもべを探してきます」
「勝手な行動するんじゃ……」
俺が指示を言い終わる前にレイカは森の中へと消えていた。
サキュバスは人間と違い身勝手で集団行動が苦手なようだ。
*
レイカが居なくなったことで俺の考えた最強の布陣が崩れた。
「まいったぜ。やるしかないか」
急遽、俺もアタッカー役で参戦することになる。
「指示はアイラに任せる」
アイラはやる気満々だ。
ソニアと俺で暴徒を倒すことになった。
圧倒的な数の暴力で襲ってくる敵だ。
元村人とかはもう関係ねぇ。
取り囲まれた時点で生きてられないのでこっちも必死だ。
「東側から5体」
アイラから指示が飛ぶのでひたすらその方向からの敵を叩き潰すだけだ。
戦ってて思った。
「なんか、異常に身体が軽いんだけど……」
「アルク、多分サビアのお陰」
「そうなのか?」
「レイカを仲間にして信頼を得たからあるじであるアルクのステータスが上がった」
「サビアを買ったからって強くなったなんて話は聞いたことが無いんだけど?」
「それはサビアを買っただけで信頼を得てないから」
なるほどなー。
サビアに信頼されると強くなれるんだ。
じゃあ、俺とサビアの関係は少なくとも間違いじゃなかったんだな。
少しホッとするが、今は戦闘中でそんなことを考えている時じゃない。
「気を引き締めていくぞ!」
「おお!」
アイラから指示が飛ぶ。
「背後の森側から7体の回り込み。20歩ほど東側に移動」
「了解!」
ソニアは移動しながらバッタバッタと敵をなぎ倒し、俺はソニアの食べ残しの掃除だ。
そんな感じで戦っていると、8割方の暴徒を片付けた。
「あと少しだ。頑張れ!」
「はい! でもアルク様、頑張ったらそれなりのご褒美を下さい!」
「ご褒美ってなんだよ?」
「そんなこと決まってるじゃないですか。こんなとこじゃ言えない事です」
「アルク、サビアと言えどただ働きさせるのは良くない」
二人が要求してきたものはなんなのか察しがついたがあえて答えないでおいといた。
ほぼほぼ暴徒を倒しきった所で不気味な声が闇夜に響く。
「役に立たない玩具たちですね」
そしてその声の主は後ろで手を組みながら空からすっと自然落下をするように降りてきた。
「執事の爺さんか!」
「執事呼ばわりとは心外な。我は我があるじ『ストリゴイ様』の第一のしもべ『リリアク』。そなたたちを我があるじの生贄とすべくやって来た。我があるじの糧となれることを感謝するがよい」
生贄にすると聞いて黙って受け入れる奴なんて狂信者しかいない。
「生贄にされて喜ぶバカが何処にいるんだよ?」
「バカじゃないの?」
「ぐぬぬ!」
バカと呼ばわりされたことがかなり堪えてるっぽい。
「ならば、この場で始末してやる!」
爺さんが襲ってきた!
「速い!」
「速すぎます!」
爺さんは一瞬で距離を詰めて爪で襲ってきた。
しかも爺さんは地面から僅かに浮いている。
俺たちはそれを武器や盾で受けて防ぐのが精一杯だ。
レイカが居ないのに俺たちはこんな強敵に勝てるのか?
冷や汗が俺の頬を這う。




